紙の本
中国のレアメタルの占有が世界秩序を変える
2020/06/03 20:22
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投稿者:Takeshita - この投稿者のレビュー一覧を見る
大変ためになる本である。レアメタルは大量の岩石中に僅かしかなく、これを抽出精錬するには土壌や水を汚染するので嘗て採鉱した米国やフランスも閉山した。中国は元々の埋蔵量がある上に環境汚染規制は緩く、安い労働力と欧米日の企業誘致で技術を移転した。江西省の包頭は今やレアメタル関連の最先端技術で「中国のシリコンバレー」と呼ばれてる。レアメタルは半導体、太陽光発電、風力発電、電気自動車等のエネルギー源である電磁石、蓄電池に必須の素材であり、長距離弾道ミサイルやF35等もこれなしには作れない。先進国が目指しているグリーンエネルギーやデジタル社会はレアメタルなしには築けないものであり、今やその喉元は中国が握っている。著者は軍事までの世界覇権を中国が握る可能性があることの危険に警鐘を鳴らすと共に、グリーンエネルギー社会を標榜する先進国が汚い仕事を途上国に押し付けてきた偽善性と中国の巧妙な国家戦略が、結局はこの国の超大国化を招いたことを指摘している。
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レアメタルの地政学
2022/04/11 08:25
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投稿者:J.J. - この投稿者のレビュー一覧を見る
化石燃料の枯渇、地球温暖化の危機、持続可能な社会の構築のための新たな技術革新に必要不可欠なレアメタルをめぐる新たなナショナリズムの台頭に警鐘を鳴らす。
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中国のレアメタル開発と環境負荷の途上国への押し付けと廃棄物には対応しても資源には注目しないライフサイクルアセスメントの不備と。
さて、日本がどうするのがいいのかはかなりややこしい。実は結構日本はこの辺それなりに出るのではなかろうか。でも鉱山業の環境負荷は明治の御代以前から散々な目にあっている。
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グリーン/デジタルテクノロジーの進展が、レアメタル需要を高め、中国の地政学的地位の向上、環境破壊を進める。
ジェレミー・リフキン「グローバル・グリーン・ニューディール」が指摘しない負の一面に対する指摘。
事実関係の確認が必要。
・レアメタル・レアアースの効用:磁石(動力)、電池、触媒、半導体、エネルギー効率向上等
環境負荷
・電気自動車製造時のCO2排出量はガソリン自動車よりも大きい?
・電子機器製品はライフサイクル全体で生じる廃棄物の2%?(2gのICチップを作るのに、約2kgの廃棄物が生じる)
・リサイクルはコスト面で採掘に勝てない(合金化されており分離・回収が困難(東京大学岡部徹)、増加する需要を賄えない?
・風力発電等、従来発電よりもベースメタルを大量に使用?
・トヨタ生産方式によるゼロ・ストックから産業界のメタルリスクに対する責任回避を助長
・欧米での鉱山再開(ただし十数年かかる)
→環境配慮への圧力
・宇宙にある天然資源の所有権(レアメタルを多量に含む隕石等)
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EVはハイブリッド車はガソリン車の2倍≒10kgのレアメタルが使われている。
レアメタルの採掘は「汚い」。
1980~90年代レアアースはアメリカやフランスがトップ生産国だった。汚染とともに。環境保護法案で規制しつつ、廃棄物を輸出し、レアメタル採掘を外注。
USGS調査 生産量
中国 インジウム44% オアナジウム55% 蛍石65% グラフィト65%
アンチモン77% ゲルマニウム71% チタン50%
レアアース95%(OPEC石油の41%)
コンゴ コバルトの64%
南アフリカ プラチナ、イリジウム、ルテニウム83%
ブラジル ニオブ90%
アメリカ ベリリウム90%
中国 「現地化改革」
世界の工業用金属の45%を消費
低価格戦略で他国の鉱山を破滅させ、周辺企業も呼ぶ、技術を買収、産業を支配。
想像する自由を抑制する国が創意工夫を促せるか?
世界のエネルギーの7~8%をレアメタル生産に消費する。
海底鉱物競争
フランス 南太平洋
1967年 宇宙条約 オゾン層の外側は共有財産
2015年アメリカ宇宙法 宇宙の資源の所有する権利
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めちゃくちゃおもしろかったです。過去人類は様々な資源を活用してきました。土、石、青銅、鉄、石炭、石油。そしてこれからのデジタル化とクリーンエネルギーの中心になるのはレアアースであり、それを握っているのは中国を筆頭とした新興国であると。
過去に先進国が鉱山開発による汚染に対して近隣住民の反発があって、コストダウンも手伝って新興国に鉱山汚染を輸出してきた。さらにその輸出により資源の確保で先進国は弱い立場にある。
これから新興国でも生活レベルが上がれば地元住民からの反発も予想されるため、鉱山開発も自前主義になっていくのか。枯渇の問題に対して海底資源や宇宙資源開発競争がどう進むのか。今後数十年に渡って目が話せないテーマだと思います。
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自分が鉱物業界に携わる立場であるため、読み終えた時の衝撃が大きかった。
立場を抜きにしても、データをもとに俯瞰的に語られているため、歴史的、地政学的に得るものが多い。
昨今、脱炭素化がブームのように叫ばれているが、このようなバックデータを理解して推進している人がどれほどいるのか。
より多くの人に読んでもらいたいと思う一冊。
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DXやGXに興味があり、最近流行りの地政学ということで読んでみた。
はじめに、レアメタルが私たちの生活を支えていることがわかる。
次に、レアメタルの採掘は非常に環境負荷が高いことがわかる。
そして、中国や新興国がレアメタルを多く生産していることがわかる。
我々は環境汚染は他の国に任せて、レアメタルを安く手に入れてきた。
そのツケが今回ってきている。
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脱炭素、再生可能エネルギーについても環境負荷がかかることについて考えなければならない。
本当に持続可能な地球にするためにむやみに安くすればいいとは言えないかも知れない。
歴史から資源も持つ者が覇権を握ってきたのは明らかである。これからの中国の行方に注目したい。
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中国にレアメタル資源を依存している状況が多くの国にとって経済的・軍事的安全保障上の脅威となっている。また環境保護団体などは脱炭素社会の実現を目指す一方で、そのために必要なレアメタルの鉱山開発に対しては環境破壊だと言って反対する。このままでは脱炭素社会の実現は難しく、また中国のように環境負荷の大きい方法で鉱山開発・金属製錬ができる国の国力ばかりが増強される。レアメタルをめぐる世界大戦が勃発しないように、人類が真剣に考えなくてはならないテーマが多数あることを実感。