紙の本
やっぱ生存は大変。
2021/01/05 17:02
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
子ども向けのいきもの図鑑ふうの表紙だけど、内容は辛辣。捕食者から逃げ回るだけではいけないらしい。繁殖にも、寄生にも抜きつ抜かれつのシビアな戦いがある。
投稿元:
レビューを見る
子供と動物の番組は視聴率が稼げるものらしい。
心温まる、とか、厳しさの中でも健気に…とか、そういうウケそうなフィルターをかけているからだと思うのだが、実のところ、そうでもしないとあまりにイメージを損なうからでは、と思う。
本書では、社会の掟、性行動、生存競争、寄生の四章でそれぞれ動物を紹介する。
気に食わない他人の豪邸を壊す、というのは、人間でもみられること。
卵を投げつける、とか落書きする、とか…でもそれは、対等と思っているかららしい。
確実なランクがあれば、そういうことはしないそうだ。
うーん、人間もたしかに同じことやってる…
コバナフルーツコウモリの行動も、ヒメヤマセミも、人間界でもよく聞く話で…。
ブチハイエナは、メスがオス化しているという謎多き動物。
男性生殖器を模した場所から出産するという(しかも死産率、母親の死亡率も高い!)。
優位に立つためだけに命をかけるか?
しかも、出生率も低くなるのに。悪、というより謎だ。
寄生の話はホラーとしか言えない…脳に到達した寄生虫が、宿主をゾンビ化させ…は、全米が恐怖に震えてしまいそうだ。
生き物の多様性は、時に人間を恐れ慄かせるが、それは本当に恐怖なのか?
もはやそれすらわからない。
投稿元:
レビューを見る
おもしろかった。
第1章「実はキビしい!社会の掟」
第2章「おかしな性行動」
第3章「悪魔の卵・生存競争」
第4章「恐怖の操りと寄生」
各章ごとに8~21の話題を各々数ページで紹介していて、気軽に読めて楽しいです。豊富なイラストはもじゃクッキーが描いています。
著者の著作は全部読んでるし、リチャードドーキンスの初期の主著も「祖先の物語」まで読んで、たいがいの話題は「知ってるはず」と思っていましたが、最新研究成果も盛り込んだ本書で、僕にとって「初耳」もありました。
例えば、ハダカデバネズミの長寿命(第1章の「恭順のポーズ」と糞尿で部下を従わせる)小さい動物ほど鼓動が早く、鼓動に比例して寿命がだいたい決まる。というのが定説だと認識していましたが、そうではなかった。
三つの婚姻形態が循環しながら永続性を維持している社会があるカエル(第2章の「ジャンケン戦略でメスを奪い合う」)
シマウマのシマシマが何の役に立っているのかが判った(第4章の「恐怖の吸血バエをさけるシマを持つ)
など。
豊富な話題で、生物の競争社会が理解できる内容になっていると思います。
世知辛い人の世も、野生生物の社会も、どちらもキビしいのだな、と思いました。
逆に人の世に生きていると、時々人を丁寧に対等な関係として扱ってる大人や、全体最適を考えて交渉の場でも共通の利益を模索する議論をする人と一緒に仕事をすることがあり、タイヘン気持ちが良いのが人の社会に生きているメリットだ、と思い直しました。
ちなみに、リチャード・ドーキンスの場合は「だから、教育が大切なのだ。」と人間に限らず厳しい競争社会が観察される野生動物の生態を紹介してコメントしていたのが記憶にあります。
また、残酷な寄生生物の生態については「残酷なのではなく、無関心なのだろう。」と、なるべく死なない部位から食べていく幼虫などの生態を考察していたのもなるほど、と思いました。
教訓を読み取る、と言うよりは、固定観念や、自分の倫理観に囚われずに、観察し、その目的(何が、どう適応的なのか)を考える訓練になったように思います。
投稿元:
レビューを見る
武内さんの語り口が淡々としていて余計な感情を挟まず様々な生き物の生存戦略を学ぶことができました。
動物はピュアで、純粋で、子供をいじめたりしない。なんてのは幻想だってことを学びました。
しかし、ブチハイエナって何者なんだ?(笑)
これを読んで気になった生物を調べる。そんなきっかけとしても良いかもと思いました。
あと、副作用として自分の行動はいったい今どういったことを目的にして動いているのだろうということをやたら気にするようになりました(笑)