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紙の本

学術と妄想が融合するとき〈狂乱の科学〉の暴力がはじまる

2020/12/31 21:29

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る

ヒトラー、ナチズムなど第三帝国にかんする書籍は毎年多く出版されているが、最終的には「研究機関」の枠を超え、アーリア人種・ゲルマン民族優越政策や強制収容所におけるユダヤ人への医学実験を主導した、この「アーネンエルベ」という組織を中心に扱った書物はこれまでにはなかった。「アーネンエルベ」Ahnenerbeとは、1935年、ナチス親衛隊SS全国指導者ハインリヒ・ヒムラーの主導により、ドイツ先史時代の精神史研究を目的として設立された研究機関である。
例えば、ナチス統治体制の淵源を、ルネサンスからニーチェまで、ヨーロッパ近代の歴史に探った大著「ナチズムは夢か」(南利明 勁草書房2016)やイアン・カーショーによる浩瀚なヒトラー伝記「ヒトラー上1889−1936傲慢、下1936−1945天罰」(白水社2015)の索引・事項検索にはアーネンエルベはない。ヒムラー以外のキーパーソン、ヴォルフラム・ジーファース(1905-1948)とヴァルター・ヴュスト(19014-1993)の名前も登録されていない。本書によれば、「アーネンエルベアにとって最大の悲劇は、自分たちの組織がヒトラーから評価されていないという事実だった。アーネンエルベにはヒトラーの興味を惹起した活動はほとんどなかったからである。ヒムラーはアーネンエルベにヒトラーの興味をひきつけようと苦労したのだが、それはつねに逆効果に終わった」のである。
本文・脚注・索引を合計して総頁数800頁の大著は、アーネンエルベの唯一無二の研究書として1974年の刊行以来、現在でも版を重ねつづけるロングセラーである。読破するもの大変であったし、何をどのように評価すればいいのか難しいのだが、最大の特徴は「研究書」ということだろう。ナチズム・第三帝国関連本、また、ムック本などで、アーネンエルベは例えば、オカルティックな研究機関であるとか、優秀なアーリア人種をつくりだす「命の泉」(レーベンスボルン)をポルノまがいに扱うといった、疑似・似非科学、トンデモ科学の研究機関としてキッチュ的に扱われることが多いが、本書ではいずれも本当の姿を淡々と記述している。
本書によると、アーネンエルベは当初はゲルマン民族の歴史・民俗を主に研究したが、インドゲルマン先史学・ルーン文字・紋章学・北欧神話・チベット探検・宇宙氷説・人種論・遺伝学・ダウジングロッド(針金を使った水源探索)・秘密兵器開発・高空・低温医学実験…というように次第にオカルティックな研究を含め、ユダヤ人を使った人体実験や気象学、化学、軍事研究などの分野にも拡大していく。これらの活動は「ナチ・イデオロギー」と「ゲルマン神話」が学問・科学の客観性を凌駕し、巨大な暴力を生み出したのである。ドイツ支配地域に多数の支部を有する巨大機関に発展し、ナチス・ドイツ崩壊に至るまで、親衛隊(というより本書によれば、ヒムラーの個人的関心)のアーリア=大ゲルマン帝国構想の推進においてきわめて重要な役割を果たした三人のキーパーソンにより描かれる。
また、ナチス支配層における権力の混沌は、第三帝国文化・学術分野においても、ナチ思想の責任者であるローゼンベルク、農民指導者ダレ(「血と土」思想)、また、教育機関を管理する文部省(ルスト)、大学などの研究者たちのあいだで繰り広げられ、思惑・かけ引き・せめぎ合いが錯綜する様はアーネンエルベでも同様であったことが示される。この権力闘争では、「大学」は最後までヒムラーの意のままにはならなかったという点が興味深い。戦後彼らの「業績」は忘却されたかに思えるが、例えば高空・低温医学実験のように、現在も有用な成果はあることを忘れてはならないだろう。

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