紙の本
拡がる世界。
2020/11/17 15:26
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
パリで弁護士を生業にしているソレーヌ。裁判で敗訴した顧客の死から、自身も激しく落ち込む。詩や小説を綴るのが好きな少女は、法律学者の両親の強い勧めで法律を学び、弁護士になった。付き合った恋人とは子どもを作らず、互いを尊重しようと決めたが、今はほかの女性との間に家庭を築き、父親になっている。
ソレーヌには何も残らない。
療養をするソレーヌに医者はボランティア活動をしてみないかと言う。
ソレーヌは一歩踏み出し、それまで知らなかった苦しい生活を送る女性たちと触れ合う。好んでその境遇に落ちたのではない、それぞれの深い事情。
過去、社会からはじき出された人たちを救う施設を建設しようと立ち上がった人たちがいた。
過去へ現代へ、織りなす世界。
投稿元:
レビューを見る
稀に出会う、信念とか感情とかにモロに響く作品。
生き方はなかなか変えれんくても、考え方はいつでも変えれるしな。
投稿元:
レビューを見る
フランスの女性会館の創始者ブランシュと、現代に生きるソレーヌが、女性会館という場で、時代を超えて、女性への共感と支援を培っていく。
いつでも汗を流して今の自分たちを作ってくれた先駆者がいるものだけれど、その時代と現代を交互に語ることで、両者が有機的に繋がり、ヒューマニズムの希望のようなものを読者に見せてくれる。
その希望は読者にも伝播して、
私たちもやれるかも?やってやろうじゃない!
という気持ちにさせる。フェミニズム小説はこうでなくっちゃ。
投稿元:
レビューを見る
前作の三つ編みといい、レティシアさんはわたしに知らない世界を教えてくれる。そして想像と思索の機会を与えてくれる。
ソレーヌにもブランシュにもわたしとは共通点はなくて(生まれてきた性別が同じことくらい)それでも、彼女たちの思いや行動を想像してそれがどういうのとなのか考えることはできる。
これはパリのお話だけれど、決して日本と遠いお話ではなくきっと同じことが日本でだって起きてる。
居場所のなくなった女性たちのための場所を作った人がいて、彼女たちに寄り添って救われる人もいる。
これは苦難の物語ではなく、希望の物語。
現存するこの宮殿に、いまどんな女性がいるのだろう。
願わくば、暖かい場所で眠れていますように。
投稿元:
レビューを見る
デビュー作『三つ編み』で心を深く揺さぶられた作者の長編第2作。女性保護施設でボランティアをする女性弁護士と、その施設を創設した実在の救世軍夫妻の姿を交互に描く。現代編の想像を超えた悲惨さに絶句するが、1920年代にこの施設を作ったペイロン組にも驚かされる。彼らを動かす“他者のために”という強い気持ちはすごいなと思う。自分には何ができるだろうかと考えさせられた。
投稿元:
レビューを見る
前作同様に一気に読めた。ただ、現在と過去のパリが抱える問題の理解が自分に足りず消化不足の感は残った。
投稿元:
レビューを見る
まさに一気読み。この読む事を止める事ができない内容と読みやすさは著者のレティシア・コロンバニさんの筆力の賜物であり翻訳者の齋藤可津子さんの素晴らしさのおかげだと思う
本作の中でも取り上げられていた風習についての本(積んである)を次に読もうと決めた
投稿元:
レビューを見る
ソレーヌが初めて人前で大泣きする場面、シンシアが絶望して自死するところ、私の人生とは違うけど、登場する女性1人1人の苦悩に自分を重ねて読んだ。
145ページのハチドリの話ー事態の打開には程遠くても、せめて自分にできることはするーが好き
投稿元:
レビューを見る
前作「三つ編み」とテーマは同じ。
こちらは2つの時代に生きた2人の女性の物語。
100年前、自分の全てを出し切って貧困や差別にあえぐ女性たちのために生きた高潔なブランシュ・ペイロンの存在には驚かされました。
直向きに、ただ直向きに「助けたい」という信念を貫き通した人生には頭が下がります。
そして100年継がれた思いを確と受けとめたソレーヌ。
彼女は心に大きな傷を負っていましたが、女性保護施設で出会った個性豊かな女性達とのふれあいの中で、徐々に前を向き、立ち上がり、進んでいく気持ちを取り戻していく様が心を打ちました。
投稿元:
レビューを見る
翻弄される女性を救う場所、それを作った女性とそこで再生する女性のリンクが見事すぎて、読み終わってもしばらく本から手が離せませんでした。ソレーヌ、よかったね、と肩を叩きたくなりました。上の立場にいたと思っていた彼女が、会館で生きる女性たちに近づいていく様には、旨がしめつけられます。これが、共感の姿です。そして、素晴らしいエンジンを積んで目標に向けてひたすら突っ走ったプランシュの生き様には、拍手せずにはいられません。アルバンも、本当に素敵です
投稿元:
レビューを見る
「三つ編み」や今作、「82年生まれ、キム・ジヨン」などの所謂フェミニズム文学に弱い。共感と、連帯感。
私自身女性として生きてきて、女性ならではの生きにくさを感じることがあるけれど、特にレティシア・コロンバニの作品に描かれる女性たちの人生というのはとても過酷で、同じ世界・同じ時代に生きているとは信じられないほど。
偶々生まれた環境が違うだけ・偶々ボタンを掛け違えただけでここまで違ってしまう人生に、罪悪感のようなものを感じてしまう。なにか自分に出来ることがあればしたいけれど、無力な自分に何ができるのか、そこまでの責任が負えるのかと思うと、躊躇してしまうー 今作の主人公の一人、ソレーヌの気持ちがとてもよくわかる。
救世軍というとミュージカル「ガイズ&ドールズ」しか思い浮かばなかった。こんなに尊い活動をしている団体なのだと初めて知った。ただただ、圧倒されるような気持ち。
今作の中で紹介されていたフランスの思想家ピエール・ラビ氏のハチドリ運動の話がとても胸に刺さった。
大きな山火事に、小さな嘴に運べるだけの水をかけ続けたハチドリのように、自分は自分にできることをするのだと、私は動けるだろうか。
投稿元:
レビューを見る
パリ、女性会館という場所で現代と100年前が行き交う。女性が安心して眠れる場所に生涯を捧げた女性と、100年後のその場所で人生に再び意味を取り戻す女性。
書くこと、報われること、この場所から始まっていくこと。読みやすい文章の中に情熱の灯り、時を越えた女性たちへのエール。
物語の中にパリの貧困の現状、女性を取り巻く窮状が頑とした意志で書かれていたのがよかった。同じ女性であっても境遇が違えば見えないものはこんなにあって、いつ立場がひっくり返るかもわからない。
女性が女性に「気づく」物語でもあり、境遇の差を越えた連帯と友情、人生賛歌でもある。
とても好き。
投稿元:
レビューを見る
サルベーションアーミー、前世紀の前半の時代に女性が動ける組織があったことが驚き。平等な使命に生きる結婚があったことが驚き。
みつあみの期待を持たずに読みたかった。
投稿元:
レビューを見る
レティシア・コロンバニの小説二作目
今回の舞台はパリ。女性の保護施設で100年前と現代とが交差していく。過酷な状況に置かれた女性が懸命に生きていく姿が印象に残る。彼女の小説を読んでいると、女性としての生きづらさと言う現実を思い知らされると同時に、力強く前へ進んでいく生き様に勇気と希望を与えられる。
読了後がなんとも清々しい気持ちになるのです。
この施設はパリに実在し、創設者も実在の人物だそうです。
パリの新しい一面を知ることができました
投稿元:
レビューを見る
『三つ編み』のレティシア・コロンバニによる新刊。大きな挫折のあと、保護施設『女性会館』で代書人のボランティアをはじめた弁護士のソレーヌの現代パリターンと、100年前の救世軍のブランシュの過去パリターンが交互に進む物語。さまざまな地域に根付く「女性」に関する問題を提起した作品、救世軍に関してはあまり詳しくなかったのだが、本作を読んでいるうちに興味が出たので、あとで詳しく調べてみようと思った。