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バランスをもつこと。
冷静に伝わるよう、表現すること。
そうしたことに長けた人だと感じた。
「女性であること、自由であること」が興味深かった。
「だから#MeTooの人民裁判は終わらない」の
「どれほど罵倒され軽んじられ、べっとりとした性的な加害の欲望につつんで支配欲をおしつけられても、わずかでも反応することで相手と交信することの方が耐えられない。
それでもうちへ帰ると悔しくて、自分が汚れてしまったような気がする。記憶を払い落としたくてビールを呷っても、頭を掻きむしっても、脳裏にべっとりとくっついて離れない。そんな経験をしたことのない人たちが、人口の約半数を占めている。」(p109)
職場で起こること、上下関係、他部署、あるいは取引先との関係。そうした場では、「性的な加害の欲望」こそ、男性である自分に向けられたことを意識したことはないが、「自らの欲望・意思を通すことのため、理不尽を押し付けられる」ことは日常茶飯事だと感じる。
こうしたことに起因する悔しさに特に男女差はないのではないか。そうしたことから類推して、少なくとも、この文章が男性である自分の胸に届いたと思う。
基本的には、女性ゆえの生きづらさを強く主張されると、男性ゆえのそれはないのか、あるいは容姿、健康、年齢、貧富、才能その他もろもろの属性をどう考えるのか、どれに対するどこまでの態度表明が正当、不当であるのかなど、が気になり、ご都合主義に感じてしまう場合が多い。
しかし、三浦さんの文章にはあまりそれを感じない。
なぜなのか、もう少し考えてみたい。
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平和を考える学問は戦争の研究をしないと成り立たない。歴史学やジャーナリズムの助けを借りながら細かな史実を掘り起こして分析を加えるkとおで、はじめて教訓を結晶化できる。ありとあらゆる戦争は悪という結論から始めるのではなくて、何がどのように悪であったのか、どうしてそこに陥ったのかをつぶさに分析することが平和への道。
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数年前、初めて彼女をテレビの討論番組で見た時、正直好感が持てませんでした。
それから時を経て、私が変わったのか、彼女が変わったのか、はたまたその両方かは分からないけれど、彼女の言葉はすんなりと耳に入るようになり、時に心を打つようになりました。
同世代として、彼女がどのように世の中を見つめ、何を考えているのかより興味を持ち、本書を手にしました。
戦争と差別、今私が1番興味を持っているテーマについて考えることのできる一冊でした。
もちろんそれ以外についても書かれているのですが、彼女の思考の根底にそれがあるのか、私がそれだけを汲み取ってしまうのか、とにかくこの2つに関することが特に印象に残りました。
多様性を理解し、「ものにしたい」と思いつつも日常のふとした場面で自身の偏った考えに自己嫌悪する私から見た著者は、それを既に自然と身に付け、世の中にアウトプットできるレベルにあるように感じました。
この点においては素直に憧れます。
この点に関して印象に残ったのは
「多様性を裡に持つ家庭は色々なところがフラットだ。」
「人間にとって、周りに承認されたい、受け入れられたい、という思いはすこぶる強いものだ。それが否定されるの誰にとっても辛いこと。加えて、不器用だったり、根が自由人で集団行動や環境への適応が苦手が子もいる。」
「その子たちにはその子たちの良さや個性があるのだから、困難だって一つ一つ違う。ただその過程で気を付けたいことが一つだけある。困難を抱えている子たちを美化しすぎるあまり、何か特別な才能と引き換えに困難が与えられているのだと考えてしまいがちなこと。(中略)受け入れているようでいて、どこか優れていることを要求する安易な態度だと思う。」
という文章です。
多様性と関連して、差別についても本書では書かれていますが、中でも感謝したいくらい的を得た意見を示してくれたのが女性差別について。
女性差別やセクハラに関する報道や意見などを見聞きする度にモヤモヤとしたものを感じていたのですが、ようやくそのモヤモヤの一因がハッキリしました(厳密に言えばエマ・ワトソンの言葉ですが)。
また、セクハラを受けた時に声をあげ(られ)ずに早く忘れてしまいたいと思う一方で何度も思い出してしまいグッと奥歯を強く噛みしめる思いも彼女はうまく言葉に示してくれていました。
本書にある彼女の考え全てに賛同するわけではないけれど、同世代で育児をしながら仕事をして、このように世の中を見つめ、自分なりの考えを持っている人がいるのだという事実は大きな刺激になります。
たどり着く考えは同じでなくても、彼女の世の中の見つめ方はお手本にしたいところ。
そして子どもとの向き合い方も参考にしたいところです。
読み終わった本は基本的にすぐ手放す主義ですが、とりあえず数年間は手元に残し、折に触れて読み返したいと思います。
2020年53冊目。