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「テーマは精神疾患だけではなく、現代日本を概観する対談本」
うつを患った過去のある歴史学者と精神科医による、全九回分の対談。
まえがきは與那覇氏、あとがきは斎藤氏が担当。巻末には二氏による各十冊の読書案内が付属し、斎藤氏が「対話を考えるうえで大切に考えている本」、與那覇氏が「うつ病のあとで新しい人生を始めるのに役立った本」をテーマにした選書となっている。
タイトルと、元うつ病の患者と医師の対談という企画だけを見ると、精神疾患に焦点を当てた内容を想像する。しかし実際にはそれだけではなく、現在の日本社会において特徴的な数多くのトピックを俎上にあげて分析する時事的な要素を持ち、広く人文系の話題をも扱う対話となっている。また、平成の三十年を経た現在における共通点と差異についても、たびたび触れられている。
本書が最も強く訴えようとしているのは、「"同意"(調和)ではなく、ただ傍にいる"共感"が重要」=「承認は本来、無条件で与えられるもの」であり、ここに関連して、副題にある処方箋の答えは(会話ではなく)対話であるということが挙げられる。(回答に触れていますが、與那覇氏による前書きの時点で早々に開示されているため、問題ないと判断しています。)そして、単純化することへの危機意識と、条件付きの人間主義への再評価が本書に通底している。
以下は本書で頻出する、または個人的に印象に残った、人物名や話題の羅列。
堀江貴文/安倍政権/ヤンキー/SNS/オンラインサロン/アップル/ジブリアニメ/脳科学/中野信子・黒川伊保子/AI/小保方晴子/東浩紀/浅田彰/人間主義と反人間主義/ハラスメント/ベーシックインカム/新自由主義/東畑開人/中井久夫
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内容は精神科医と双極性障害を持つ2人の著者による対話形式で現代社会の心の病について各章ごとに内容が分けられている。
心の病が広がっている原因やそうなるに至ってしまった経緯等がじっくりと語られているため自分たちが今置かれている現状について考えさせられた。
人は悩むと自分の中で考えを固定して思い込みがちになったりもする。
今までの自分の中の価値観にとらわれず、解決はできなくとも人と話して自分も相手も思いを伝えながら落ち着いて対話し、共に心をほぐしていくことが生きてい
く上で大切なんだと本書を読み終えて感じた。
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「うつ病社会の処方箋」とあるように、病気との関わり方というよりは、現代日本における、精神疾患、障害などの位置づけについて考えさせられる一冊。大変良い本です。
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心の病に関して、社会的な観点から分析。
処方箋的な内容ではないし、自分が苦しんでいるときにはたぶん読めない内容だけど、余裕があるときに読むと、あー、自分が社会に感じていた違和感がこんな感じだったんだ、とか、色々納得できることが多そう。
アドラーはマッチョイズム
スクールカーストの上位は共感能力が低い
等、面白い分析だった。
しかし、偏った考えもあるので、そこも中立的に見れると、一つの考えとして面白いと思う
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うつ病の治療、発達障害、ヤンキー文化、コミュ力第一社会、オンラインサロン、文学教育の意義、AI、多様な人間性、現代社会を生きる上で避けて通れないキーワードを、真っ直ぐ、変な肩入れなく話していく。様々な社会の見方を知ることができた。
"ハーモニーではなくポリフォニーを"というフレーズが印象的であった。多様な考えが共存していい。調和する必要はない。共感を大切にするが、違っていい。生きやすい世の中にしていきたいし、自分で自分を苦しめないように生きていきたい。
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分かりやすい本ではあるけれど、一度ではなかなか理解しずらく所々戻って読み返しました。1日経ってから読むと理解出来たり。たくさんの事が詰まっているので、サラッと読むのは勿体ないです。
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自分が適応障害なのでタイトルに惹かれて読んでみました、、が処方箋的な内容ではなかったです。
むしろ色んなシーンで起こる心の問題が、なんで起こってしまうのか社会構造や歴史、人間の特性など色んな角度から語られて説明されている、解説書という感じでした。
1年かけた対談をまとめたものらしいのですが、お二人の知識の幅がすごくて圧倒されました。引用が多いのですが、用語解説が丁寧なので理解しながら読むことができました。巻末の参考文献をお二人がそれぞれあげて解説されている部分も良かったです。さらに知見を深められそうです。
この本で印象に残ったのは、
日本は無宗教と言われているけれど実は、日本教とでも言うべき不文律が強くある。空気を読む、他人に迷惑かけない、など「ちゃんと機能する人間」だと証明し続けることが強いられている。
というところです。一冊前に読んだ「健康で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて」で書かれていたことだなぁと思い出しました。
処方箋的な結論としては、同意ではなく共感・対話、が大事ということかなと理解しました。
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対談であるからこその、面白さと受け入れやすさがあったのかな、と思う。大学、大学院なんて承認ビジネスと同じようなものでもはや意味はないという與那覇氏に対して、「いや、そこまで自虐的にならなくても」と斎藤氏が苦笑して応じるような、ね。與那覇氏の発言はなるほどとうなずきながら進んでいると、いつのまにかちょっと引いてしまうくらい攻撃的になっていることがあり、ちょっと怖いんだよね。斎藤氏がそこをうまく、方向転換したり、和らげてくれていたんじゃないかと思う。「え?それはどういうことですか?」と疑問を提示して、それを受けて與那覇氏がもう少しわかりやすく説明したり、話を展開してくれるのも良かったと思う。
印象に残っているのは、お金がたくさんあればみんな働きたくないんじゃないか?という疑問に対しての斎藤氏の答え。ひきこもっている人に、突然遺産とか相続して働かなくてよい身分になったらどうする?と問うと、安心して働けると答えるのだとか。失敗して、首になっても生活に困らないから、と。なんか、考えさせられたなぁ。
いろいろと問題提起があり、ちょっとふだん考えないような視点で話を展開してくれる。面白かったし、また読み返してよく咀嚼したいところだと思う。
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うつ病社会の処方箋、とあるが現代日本の問題点について精神科医とうつを経験した学者の視点から論理的な対談。マイルドヤンキーへの違和感、日本人の同調圧力など、日常感じる違和感を言葉で表現されていて、そう、そう、そういうことなんです!と共感する箇所が多かった。ぜひオススメです。
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タイトルにある通り「うつ病患者の処方箋」ではなく「うつ病社会の処方箋」。人間価値を語る上でキーワードは「統合性」と語られる本書と、人間は個々が微妙に異なる出来上がりをしていても所詮部分の集合でしか見られていない上に、ほぼ全ての部分とその統合の仕方も外部的な要因(遺伝・環境・進化心理学)だけで決まっているという残酷な現実があるので、どこの部分分解を理解しているとこの残酷な現実を「ハック」出来るのか考えようという橘玲氏のヒット作シリーズとはかなり対照的な内容に感じた(どちらの思考も必要だとは思う)。書籍全体を通してあまりにも広い範囲に話題が及んでいるので特に興味深かった2点だけを引用。
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"斎藤:発達障害の人は「コミュ力が低い」と言われがちですが、この概念もきちんと考え直すべきだと思います。いま、子どもたちの世界でコミュ力と言うと「空気を読んで、人をいじって、笑いを取れる」ことを意味しています。つまり、お笑い芸人がロールモデルになっている。注意しなくてはいけないのは、コミュ力が高いことは、必ずしも共感力が高いことを意味しないんです。スクールカーストを研究している鈴木翔さん(社会学者)は「カースト上位者は共感力が低い」と論文に書いていますね。
與那覇:本当ですか?米国のスクールカースト映画の最高峰である『ミーン・ガールズ』(二〇〇四年)は、たしかにそういう話でしたが……。
斎藤:質問票からデータを取って解析しているので信頼性は高いと思いますし、私はすんなり腑に落ちました。なぜなら共感力が高い人は弱者にも共感するので、「いじって笑い者にする」ことはできなくなるんです。そういう躊躇がない人が、徹底的に他人をいじり続けて笑いをとり、カースト最上位に君臨するのはわかりやすい。つまり彼らはコミュ力は高いけど、共感力は低い。"
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"與那覇:実はデイケアでSST(模擬形式の社会技能訓練)をやっていたときに、忘れられないエピソードがあるんです。患者さんが「働いているときに苦しかった状況」をロールプレイで再現するのですが、どう考えても「病気」なのは患者を追いつめた人の方でしょ、という話がいっぱい出てくる。パワハラ上司とか、モンスタークレーマーとかですね。彼らに攻撃されてうつになるのは「普通の人」であって、ほんとうに治療が必要なのは相手の側なわけです(苦笑)。これって変じゃないですかと尋ねたところ、臨床心理士の答えが振るっていて、「たしかに上司やクレーマーがクリニックに来たら、病気と診断される可能性が高い。ただ彼らはたまたま、いまのところ地位や立場に守られていて〈本人が困難を感じていない〉から、来院せず、病気だと言われていないだけですよ」と。つまり誰が心の病気と呼ばれるのかは、しばしば当人の気質や症状以上に、社会で置かれている環境で決まるわけですね。"
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マルクスの読み方とか、すごくすとんと落ちた。波長があってしまったというか。ちょっと危ないので間をおいて読んでから感想書きます。
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精神科医エッセイみたいな軽いものかなと思って読み始めたら、今の時代が抱える問題をしっかり考える対談でした。
與那覇さんは、病気をされて、歴史性よりも今を生きるということを身を持って感じられたようです。
人をみるとき、今を大切にしつつ、今までのことも大切にしたいと思う今日この頃です。
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躁鬱病の当事者の與那覇潤先生(元県立大准教授)と精神科医の対談
■第8章 辞めたら人生終わりなの? p215
斎藤
・SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)による改善率は80%と高いが、寛解率は40%しかない
・成人の患者にとってのSSRIは、良くも悪くも一貫して「軽い薬」症状を緩和してはくれるが、それだけで治し切れるものではない。
・英米型のうつ病治療は、患者の人間性にはさほど注目せず、純粋に症状だけで分類して病名を特定する。DSMは極めて操作主義的(手順を重視)【人格に注目しメランコリ親和型など分類した、従来のドイツ型と異なるアプローチ
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「発達障害バブル」の今、この本を読んで、頭の中を整理できてよかったです。他者と違うのは当たり前。違うことを認め合い、共存するために、対話を。同意はできなくても、共感はできる。全ての人が、同じ地平で、同じく尊重される社会になるように、まずは私の心を耕せました。文学の力も信じます。
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かなり難しい対談本に思えた。読み通してみると、あちらこちらに考え方のヒントがあるのはわかるのだが、全体として、何かの理論的な物を習得できたかと言うと、そんなことにはならなかった。うつ病から回復した研究者と精神科医の対談は、かなり、興味深いことは確かだ。