投稿元:
レビューを見る
初シュトルム。幼い頃に読んだ海外小説の高揚感を思い出した。自国の文化ではない見知らぬ世界の風景、人々の営み、人生の有り様。
松永さんの訳も良かったのだと感じた。
投稿元:
レビューを見る
みずうみ
エリーザベトとラインハルトの物語。
ラインハルトの鳥が、カナリアに変わったことが悲しかった。在学中、彼は思いを持ちながら、自分の世界に入ってしまった。時は巻き戻せなかった。
3色スミレ
希望がたくさんで、読み終えてホッとした。若い新妻は前妻と一緒で肖像画になるのかとやきもきした。新妻の成長に感謝。同じ名前はつけないとした夫に尊敬を。
人形使いのポーレ
婦人のお父様は残念だった。だが夫人は幸せで、これからも幸せを紡いでいくのだと考えると、お父様の無念も晴れると思った。ドイツ中部の工房を離れるときの決心は見事だった。工房のおかみさんにも賛辞を。
繊細な描写が多く、勢いで読む本ではないなと初めから感じていた。数行読んで目を閉じゆっくり風景をめぐらす。
贅沢な読書時間を過ごせた。
投稿元:
レビューを見る
今年、様々な書評で見かけた一冊。
クリスマスキャロルに匹敵するような、心が暖かくなる物語。
まず、表題の「みずうみ」。これは、自分の初恋回顧のお話。言ってしまえばそれだけなのだけれど何故かみずみずしさと切なさと、それからちょっぴりの後悔とが心を惹き付けます。色鮮やかな情景が目の前に広がるような繊細で素敵な文章です。
「人形使いのポーレ」
人形使い。なかなか身近な職人ではないが何故かまるで身近でお話を見ているような臨場感がある。時代の流れは残酷ではあるが身近な人を大切に思う心は美しく、そんな心を持ち続けたいと思わされる。
過去に読んだ古典文学の中でも、かなり心捕まれた一冊。
投稿元:
レビューを見る
短編集.
3編共過去を思い出すというより,過去と寄り添っているような味わい深い物語.訳もいいのだろうが簡潔な文章で物語の風景世界が目の前に広がっている.森の中のいちご摘み,枯れたバラ園,人形劇など目に見えるようだった.
投稿元:
レビューを見る
3つの短編ドイツの自然ってこんなにも美しいんだって。鳥がそれぞれの物語に出てくるところもすてき。
みずうみ
自然の描写が美しい。
結ばれなかったふたりだから美しい物語になるのかなぁ。それにしても、彼女の夫は鈍感なの。優しいの。人生についてパンになぞらえる部分など鋭い教訓だなぁ。なんで?なんで?って思ってしまいました。
エリザーベトのもとにラインハルトがいなくなってから、ラインハルトの幼馴染のエーリヒさんが通ってきてたけど、ラインハルトはその人のこと、自分の着ている茶色のオーバーにそっくりだって言ってて。悪口にきこえるけど、エリサーベトは、それをそんなふうに思ってないみたいで、手紙に描いたりして。素直なんだか。ラインハルトがお話を送ってくれなかったことに『あなたは約束を守らなかったわね』って。直接的だなぁ。こんな表現になるのは子供だからかドイツ人だからか?
ムネアカヒワが死にカナリアがきて、エリサーベトの母親は、ラインハルトを遠ざける。大人が子供によかれと思ってすることはよくでもないなぁと思った。して、エリサーベトの気持ちはどうだったのかな。3度目のプロポーズで受けた。親のいいなりになるって諦めてた?して、2年も手紙のやりとりを何故ふたりはしなかった?
単純な造作のエーリヒの顔 。
ぼくが静かに計画をねる男だと知っているだろう?って。こわい。
そして、ふたりで出かけさせたりして、何の意図もないとしたらますますこわい。
幼馴染ならふたりの仲の良さは知っていると思うのに、何故だろう?
三色すみれ
まま母と女の葛藤。荒れ果てた庭園。
人形使いのポーレ
ただひとつハッピーエンド。すれ違いは悲しい
投稿元:
レビューを見る
「三色すみれ」後妻、継子、アホ旦那。継子は多分5歳位。母親がいなくなって、寄りかかっていたものがなくなり、後妻は懸命に支えようとする。しかし喪失感はそのまま、新しい人間が増えただけであり、アホ旦那は二人の焦燥感を理解できないという。水、油、金粉をビーカーで懸命に回しても、全然混ざりません。奇跡の乳化剤的な物カモーン。
しかし、現実をきっちり見据える二人と理想だけを押し付けて終わりな男。女がロマンチックって、誰よりも現実的だから、逃げどころが欲しいんじゃ!世の中の男性、わかっておろうな?
投稿元:
レビューを見る
スミレには、継母とその子供と継子の椅子を表す、と言うのを「野生の思考」で読んだような(冒頭だけ読んで終わってしまったけど、たぶんいつかまた)。
有名らしい「みずうみ」知らなかった。シュルトムすら聞いたことがなく「人形使いのポーレ」も初めて読んだ。が、「三色すみれ」って知ってるなあ。何処でいつ読んだのだろう。
投稿元:
レビューを見る
19世紀ドイツの作家シュトルムが、青春や家族の心理を詩情豊かに描いた3篇を収録。切なさと愛しさと心強さと。
みずうみ、この作品は新海誠の『秒速5センチメートル』を彷彿とさせる。なぜ、連絡をとらなくなったのか、なぜ、こうなってしまったのか。長い時間における心理の描写がすっぽり抜けていて、こちらが想像するしかない部分が多く、唐突な結果にあぜんとする。それだけに切なさが強烈で、読後に独特の余韻を残す。この感じも、まだ尖っていた頃の新海誠作品に似ていて、自分はこちらの方が好みなんだよねぇ。
三色すみれ、この作品は継母を迎えた父娘の葛藤を描いた、現代でもドラマとかでよくみるパターン。衝突を繰り返しながらも、とある決定的な出来事で新しい家族の絆が紡がれていく。あふれる愛しさが半端なくて、自分も家族を大事にしたくなる。いないけど。
人形使いのポーレ、この作品は、とある旅芸人一座との出会いと別れが描かれる。ノスタルジーと青春と家族愛と、すべてがある集大成的な感じで、中篇程度の長さであるにもかかわらず、情緒ある光景と、繊細な心理描写も相まって、どっぷりと読み応えがあった。また、ところどころで意外な事件が起こるので飽きさせない。ラストは愛する人の心強さに感動する。本書で一番のお気に入り。
この作家の作品をもっともっと読みたいのだけど、そんなに数は残していないようなので、いずれ他訳にも挑戦してみたい。名作保証☆