紙の本
お互いを認め合うことの大切さ
2022/09/14 19:47
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
やっぱり上橋さんの描く物語は、小説の世界の素晴らしさを改めて感じさせます。何といっても世界観がいい。全く架空のファンタジーの世界ですが、見ているように情景が思い浮かびます。医学の宗派を巡る対立と政治的な陰謀とが絡まったストーリー。政治的な部分は、少しややこしく感じましたが、それをおいても十分楽しめました。互いを認め合ってお互いの技術を高めるとか、自分のいる世界から思い切って飛び出してみることって素晴らしいなぁと思ったストーリーでした。
紙の本
医療ものです
2020/08/10 11:00
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投稿者:papakuro - この投稿者のレビュー一覧を見る
コロナが流行しているからというのでも無いのでしょうが、医療ものです。
本屋大賞受賞作「鹿の王」からのスピンアウトですが、鹿の王は出てきません。(元々の作品でもなかなか鹿の王は出てきませんが)
サブタイトルの「水底の橋」も橋梁技師であるヒロインの父親が思い出として語るところがありますが、全体のタイトルにするほど重要なエピソードか?(古流の医術と結びつけているのかもしれませんが)
西洋医学と漢方医学の軋轢、医の倫理みたいなことをベースに、権力闘争を絡めています。
と言うことでこいつもかこいつもかというくらい権謀術数飛び交っているのですが、主人公が熱血馬鹿なのでどろどろ感は薄まってます。
宗教も絡めていますが、現実社会では西洋医学の方が聖なんちゃら病院みたいにキリスト教との関連が強いので、設定が逆ですね。
この作者は勉強家だと思うのですが、医学で学んだことは全部ぶち込んだという感じで、かなり詳細な記述がなされています。
血友病とボツリヌス食中毒がメインですが、食中毒菌毒で毒殺って、ちょっとあり得ないとは思います。漢方医学で毒素を抽出したり、病原菌を培養したりとは考えにくいので。まあ、抗毒素のネタを入れたかったんでしょうが。
「鹿の王」とはなっていますが、主要登場人物と社会背景を流用しているだけで、話は全く関連しないので、元の作品は読んでなくても全く影響はありません。
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オタワル人のホッサルとミラルの物語。
未来のない恋愛関係、医術と政治、陰謀と真心、神と現実、そういったいろいろなことが複雑に絡み合う。なにか一つが柱というのではなく、小部屋がたくさんある屋敷でいくつもの物語が進む。
オタワル医術と清心教医術の違い、対立は「鹿の王」から描かれていたが、今作ではそこに、清心教医術の源流"花部流医術"が現れて構図が複雑になる。各々の信じるところに"間違い"はなく、人々はそれぞれに助けられているが、考え方に違いがあるのは明白で、お互いになかなか分かり合えない。
「諦める、というのとは、違うのです。あなたにはどうしてそれがわからないのだろう?」
「神さまがこういう存在に生んだから、なんて言われたら、そこですべてはどん詰まりだ。医術師に、そんな口実を与えてどうするんです?」
「人はなぜ病むのだ」
そうやって対話を重ね、またいくつかの出来事を経て、多少なりとも相手を理解しようというふうになっていく流れがとても良かった。正直、現実のあれこれもこのように対話で進歩があれば、と思わずにはいられない。はかりごとを重ねた末に、その結果ではなく真心が事態を動かすというのも印象深い結末だった。
ミラルは今作でも主役とは言いがたいのに、けして欠くことのできない存在だ。ホッサルが少し置いてきぼりみたいになるのが面白かった。
読み終えた後に「水底の橋」について語られたところを読み直すと、その意味深さにしんとした心持ちになる。
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医療ものファンタジーの続編。外伝的な立ち位置?
今回はオタワル医師ホッサルや助手ミラルたち視点で物語が進みます。
医療界の覇権や次期皇帝の座をめぐる争いに巻き込まれていくのですが、
前作と比べて冒険色はなくなり政治、医療のミステリー色が強かったらようです。
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まさに権謀術数の世界だった。あちこちの利害が絡み合って難しかったかな。ホッサルはミラルのことちゃんとして!!!と強く思うくらいミラルはいい娘さんですわ。
ただ全体的に『鹿の王』の続編と思って読むとヴァンもユナも出てこないので肩透かしです。スピンオフですね。
文庫版のあとがきは今の時代、心に沁みました。どんな時代だって先祖たちは乗り越えてきた。私たちもやってやろうじゃないですか。
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異なる流派の医術の対立、後継争い、身分違いの恋愛など、様々な要素を織り交ぜて描かれており面白く読んだ。上橋菜穂子は独自に作り上げた世界観に説得力を持たせる力が卓越していると思う。希望を感じさせるラストで良かった。
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西洋医療と東洋医療を模したオタワル医術と清心教医術。
病原を見るのか、患者に現れる症状を見るのか。
病気に対峙するのか、患者に寄り添うのか。
しかし、視点が違うだけで、病気を治し、患者を助けるという点で、医師の思いは同じ。
それが、政治と絡むとそこから離れてしまいがち。
新型コロナのこの状況と重なり、考えさせられる。
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異なる医術でも導き出される答が一致するところ、源流を辿れば同じところがある。異なる流派でも病の苦しみを癒したい考えは同じである医師たちが、お互いの術を学びあいたい、と盛んに交歓していくことを期待させる終わりで良かった。
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続編というよりは長めのエピローグ。宗教と科学、伝統と進歩、政治的立場などの対立軸と主人公二人の恋愛が複雑に絡みつつ、気持ちのいい結末に収束してくれた。
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医学の存在意義とは何か.これを通底させた物語を紡ぐことが如何に困難か.作家とは嘘を付く人種であるが,人として自らの生に真摯でなければ,本作は決して描くことはできまい.上橋先生だからこそ描けた,唯一無二の世界なのだと,読了後に強く噛み締める.あとがきに書かれた,物語の有り様に深く首肯し,真の読書とは,作者との対話なのだと思わずにはいられない.
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2020.9 速読の私が丁寧に丁寧に、一語一語を噛み締めながら読みました。とてつもなく複雑に絡み合った思惑と謎解きも楽しめました。
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『鹿の王』本編では大活躍はするものの、どことなくいけ好かない印象だったホッサルが主人公という、続編というか外伝的な作品。
それにしても感動した。ファンタジーやミステリーとしてはもちろん、ポリティカルな要素もあって読み応えがあった。歴史的な潮流と思われていたものが、意外にも近年勃興してきたものだったりとか、現実社会のメタファー的な要素も読み取れて興味深かった。
もちろん、ホッサルとミラルの関係もライトなモチーフとして絶妙なさじ加減で織り込まれていて読みやすさにつながっていたように思う。
なんにせよ本編も含めてコロナ禍の今、ぜひとも読むべき作品だなと思った。
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鹿の王は読んだんだけど… 大分忘れている…
一人生き残った少年を連れて旅する話だったか…?あまりきちんと覚えてないので読みなおそうっと。
とりあえずホッサルさん?がキライなタイプの男性でどうにもこうにも。医者としての信念があるのもわかるし、良い人なんだろうけど独りよがりだよなぁ。ま、いい所のオボッチャマだし仕方ないのかもしれないけど(ちょっと違うかもだけど)。
男女関係において、優しい人ってのが一番始末に負えないな、と個人的には思いました。ま、本当に優しい人ならばどう考えても結ばれない(と双方知っている)ミラルさんと恋人関係にならないようにするだろうから、優しくないのかもしれませんが。その時に自分が快適に過ごしていれば後先は考えない(ようにしている)感じが見ていてイライラするというか、彼女の立場が変わった途端気後れしている感じがさらにイライラ度が増すというか。でもこういう人居るよな~、うん。で、そういう理想を追う男性に弱い女性も多いよな。私には理解できませんが。
医療と終末期医療というのは考えさせられる重いテーマだな、と思います。ホッサルさんよりも難しい名前の…候の方が好きかなぁ。イヤダイヤダと言っていても時間は過ぎていくのだから、守れるものを守るための努力をする姿に好感を持ちました。策士策に溺れたところはありましたけれども。
あとがきのコロナの話も重たいですねぇ… 今現在、欧米諸国のような医療機器は日本では起きておりませんが今後はわからないし。私たちはどうやってどのように病気と医療と対峙していくのか。重たいなぁ…と思いながら読み終えました。
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ホッサルとミラルは、同じものを目指しているのだと思っていた。2人の目指しているものが違っていても、それぞれの場所で頑張っているところが良かった。
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「水底(みなそこ)の橋」はミラルの父ラハルが長年橋職人として見てきた橋のなかで忘れられない橋について、娘ミラルに語る時に出てくる。沈んだ古い橋は、泥をかぶって藻に覆われているけれど..川底を横切って対岸まで繋がっている..橋だった頃の姿を残して水底で繋がっていると言う。父が娘に伝えたい色々なことが想像できる。
最後にこの本をお持ちのかたは、文庫版あとがき部分まで是非とも読んで頂きたい。新型コロナ感染のなかで、いかに生き延びるか上橋氏の熱いメッセージが記されている。