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漱石の作品には『坊ちゃん』から入り、再読も含めて2016年の夏までに『明暗』下巻までを読み終えた。その上での本書である。良くも悪くも引用が多い。読んで記憶が甦るところと、まったく記憶に残っていない部分があった。古今東西の様々な物語に精通する著者の目線は、当然のことながら自分の何倍も深く漱石を見ていて参考になる。著者の独断と偏見の六角評価図(レーダーチャート)も面白いが、私の好きな『吾輩は猫である』が低評価なのが悲しい……
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漱石は、高校以来主な代表作は読んでいるが、ただ読んだというだけで、作家の意図をどれほど理解していたかは疑問の残るところである。
そんな半可通の読者にとっては、貴重な本書といえるか。
これから漱石を読もうとしている読者にとっても、格好の入門書といえるだろう。
阿刀田氏は、漱石の代表的な13作品を、平易に解説してくれる。
それぞれの作品について、A)ストーリーのよしあし B)思想の深さ C)知識の豊かさ D)文章のよしあし E)現実性の有無 F)読む人の好み という共通の六角評価図で、感想をしるしている。
評価の高いのはやはり、『こころ』と『それから』で30点満点の28点をつけている。
これを機会に、再読をしてみるか。
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引用が多いがその間に簡潔に書かれている作品の分析や指摘がさすがに興味深い。夏目漱石の本はほとんど読んだが、忘れてしまった部分も多い。阿刀田氏も「こころ」の章で述べているように、読んだ時の年齢などによって読み取れることは変わるはずだ。この本で評価の高かった「こころ」と「それから」は読み直してみようと思う。特に、「こころ」については女性蔑視の小説かどうかということと、阿刀田氏のいう「人間の究極のエゴイズムと実存のニヒリズム」という視点で読んでみたい。