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2020.7
発酵についての本を大きく超えて、人や社会の形を問う本。発酵や微生物や菌との関係から人間や社会を考えるとこんなにおもしろいことになるのか。この世にいる生き物のひとつとしての自分のこれからの生き方のスタンスが何となく見えた。上に前に成長して進化して…じゃないな、もう。足元や全体や見えないものを感じて環の中の個としていってみようかなと。
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おもしろかった。かつて学んだ文化人類学がこんなふうに立ち上がってくるのはとても楽しい。特にPART2の風土と菌のブリコラージュは、著者の考え方が伝わってきて興味深く読めた。
ただ、読みにくい。本書がおもしろくてわかりやすいこととは別である。ブログを元にしているということだからか、体系的ではなく(そこは著者も冒頭で述べている)、見出しがないのも難点だろう。大文字が見出しかと思いきや違ったり、所々に1行空きが挿入されるのもブログの名残りか。図と文章の連携も甘く、これは著者のせいというよりは編集者のせいとも言える。
日本各地の醸造文化の紹介にはワクワクさせられる。続刊に期待!
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面白そうだな~と思ったのですが、なんか思っていた感じとはちょっと違いました。何がどう違うとは言葉にしにくいのですが。別に専門書を読もうと思ったわけでもないのですけどね。
文化人類学と発酵がどうこう言われてもなぁ~という感じ。人間だけではなく、生き物の糧食にかける労力の使い方は目を見張るものがありますしねぇ。お腹に酵素を仕込んで植物を分解する動物とか、蟻がキノコを栽培したり、葉を発酵させたりとかありましたよね、確か。
なので生きる=食物を確保する、という地道で根気のいる作業は生き物アルアルなんじゃないのかな~
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ずっと気になってたんだけど、やっと読めた。基本的に発酵全般というよりはぬか漬けにしか興味なかったんだけど、身近な食品、調味料に発酵食品が多い、というのがわかったのが一番の発見かも。
「クラ」とか、登場した各地の風習やなんかも面白かったので、章末の参考文献もひと通り読んでみたくなった。
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発酵が人類の生活を向上させている。しかし発酵と腐敗は表裏一体。人間がコントロールするためには未解明なこともたくさん。醸造家は微生物とのコミュニケーションしている。それを頂きながら醸造家とコミュニケーションする。生きる意味に踏み込めるテーマ。面白かった。
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発酵文化人類学
発酵の仕組みと文化人類学を初めて学ぶには、非常に良書。個人的には文化人類学に関しては既知情報が多かったが、発酵の仕組みを学ぶことができたのは面白かった。発酵とは、腐敗と紙一重の奇跡であり、人間の役に立つかで正否が決められている唯心論的なものであるという冒頭の一文は唸らせる。
発酵とブリコロールのところでは、日本の農村の大豆の使い方の多様性に改めて驚かされる。農村では、米、大豆が主な収穫物であるが、大豆をもとにした醤油、味噌、豆腐、納豆、米をもとにした米麹や日本酒など、非常時にバラエティに富んでいる。豆腐の味噌汁なんでものは塩と大豆に工夫を凝らしたものにすぎないが、その工夫というのがまさに発酵なのである。発酵は保存の手段でもあるが、それを利用することで、バラエティの少ない食物から、彩り豊かな食卓を作る触媒でもある。発酵おそるべしである。
なお、発酵とは、微生物を媒介とする人間と植物の輪の循環というのもいい得て妙だ。ここではマルセルモースの贈与論などが引かれているが、コミュニケーションとは常に過不足があり、永久機関のように回り続ける。贈答品のやり取りそのものに意味はなく、そのやり取りによって立ち上がる交流の輪にこそ意味がある。ここに、西洋哲学の基本概念である自由意思を持った個人の解体を見ることができるが、発酵とは、微生物を介した人間と植物、ひいては自然界のループの一つのブリッジにすぎない。そして、発酵を学ぶことで、我々もまた、大きな視野でみれば、チェーンの一つであるとも感じられる非常に大きな示唆があるのであった。
後半は、日本酒、醤油、ワイン、味噌づくりなど多くの発酵食品を手掛ける若手の起業家に注目されていたが、現在、高級ブランド化している日本酒や醤油などは、ハイリスクハイリターンの製法で臨んでいるからこそ価値があるということがわかった。発酵は一歩間違えると腐敗となる。そのため、資本主義は加工や無菌室などをうまく使って腐敗が起きる可能性を減らしてきた。しかし、今のブランド化している日本酒や醤油などは、加工によって失われた薫りや味わいなどを求めて、一切加工しないものを志向している。これもまた面白い取り組みである。
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語り口がやや軽薄で、しかも滑っていることに目を瞑れば、読みやすいし、内容もなかなか興味深い。
発酵の中でも、日本酒、ワイン、味噌、醤油に絞った感じで、それ自体はよいのだけど、幅広く世界の発酵文化を概説した章が、最初にあったら良かったと思う。
日本酒好きな人なら、読んでるうちにきっと飲みたくなると思う。
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親しみやすいユーモラスな文章。お酒に関する章、最終章が好みだった。最後まで読んだときに、タイトルが『発酵文化人類学』たる意味が深く理解できた。
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これに感化されてもやしもんが気になっている。表紙が可愛くて手に取っただけだったが、単なる発酵の仕組みを学ぶような本ではなく、人間と自然の関わり等まさに人類学的な部分もあり、著者の一見バラバラに見える興味関心(デザイン・発酵・)が線でつながった様子は、まさにconnecting the dotsなのかな、と。
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【カビとともに生きるロマン】
柑橘類には緑のカビ
いちごには毛(?)の長い白黒のふさふさしたカビ
メロンは黒斑のカビ
うんうん、カビって生えるものとの相性があるよね。
おもしろいよねー。
昔、酵母汚染!という主張に関わることがあって
そのとき初めて酵母や乳酸菌のこと調べて
実際問題、酵母や乳酸は味方にするととても心強く
そして逆に敵とみると超やべえやつ
という知識があった。
だって当たり前に存在するものですよ。
それを人間の生きる環境下から除去するって、
…how?
発酵と腐敗は同じもので、
要は人間がその状態をよしとするかどうかであって。
ちなみに確か乳酸菌数の上限値縛りがあるのは
浅漬だけだったかな、そんなんもあるみたい。
発酵すてき!
やっぱロマンがある。
手前味噌文化にふれたい!
…味噌スープ、うちの娘大好きなのよ。
みそから一緒につくったら絶対楽しいよねとか。
自然界からもらい受け、利用し、共生し、…
というか生かされてるよね。
というのを改めて本書で感じました。
ありがたや。
そして発酵文化を生業とするの、うらやましい。
厳しいだろうけどロマンがある!
パイナップルを切りました。
2日後に食べたらシュワシュワするよー
さて発酵か腐敗かどっちかな?
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作家さんにはよく「この本を書くために物書きになったんだな」と思うようなズバ抜けて突き刺さる一冊があるけど、この本がヒラクさんのそれではないかと思う。
世界が広がる、何度読んでもためになる、大好きな本です。
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専門書ではないので、軽い口語調で書かれた入門的な内容。オタクが書いたSNSは面白いってのに近いかも。
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「日本発酵紀行(小倉ヒラク著)」からの流れ読み、図書館で借りた。
発酵を「科学」と「文化人類学」の両面から捉え、それぞれの蘊蓄を上手に編集してわかりやすく伝えてくれている。さすがデザイナー、またよく研究されている、お見事。なかなか面白い一冊だった。
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発酵×文化人類学!?
最初びっくりしたが、読んで納得。
それぞれの地方で獲れる食材と、その場所で生きている菌類を、人間があれこれ工夫して活動させて生まれたのが発酵食品なのだから、文化的な営みでもあるというわけだ。
ブリコラージュ(レヴィストロース)とか、贈与とかはまあ、お嫌いな方は読み飛ばしてもよろし。
独特な文体(「~であるのだよ」)で、軽々と、ジャンルの垣根を飛び越して、面白さを伝えていく。
「正直詳しくないんだけど…」と思いながら読み始めたが、こういうビギナー読者にもやさしい本だ。
発酵はたしかに、今やちょっとした社会現象だ。
身の回りをふりかえると、塩麴、甘酒のブームが来ているから、その実感はある。
レトロ志向なのかと思っていたが、ムーヴメントとしてはずいぶん幅広いようだ。
そのことを教えてもらえたのは第6章末の「発行ムーブメントの見取り図」。
菌類の遺伝子を編集する、バイオイノベーションが盛んになっているというのだ。
一瞬、頭の中のイメージがくるっと回ってめまいがした。
冷静に考えてみれば、人間に有用な発酵菌なのだから、そういう方向に進めようと思う人がいて当然だ。
が、何か抵抗感があるのはなぜだろう…。
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文化に根付いてきた発酵が分かりやすく書かれていた。技術を時系列(というほど難解ではないが)で追っていくのは、ただ知識を垂れ流されるよりも頭に入る。
さらにそれを踏まえた上で現在発酵を用いてどのような取り組みがされているのかについて触れられているので、内容がするすると入ってくる。
また、著者のデザイナーという経歴もあってか、美術や音楽を食品やそれに携わる人々の比喩として用いることもあり、知識が多い人は物事を説明する時、類似する事柄をいくつも思い浮かべられるんだろうなと思った。