紙の本
過去パートの主人公アグネスをもっと読みたかった
2020/12/13 16:37
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
物語は2003年と、1939年~1945年を行ったり来たりしながら、バーグマン刑事は真実に辿り着く。
<「ガラスの鍵」賞>・<リヴァートン賞>・<マウリッツ・ハンセン新人賞>三冠受賞作にふさわしい大作。
登場人物はとにかく多いし、特に過去パートはキャラ把握した途端に殺されたりと気持ちの萎える出来事続出。
とはいえそこまで入り組んでなく、「この人はあの人と同一人物ってことでいいんだね?(名前が変えられているから)」などが裏切られることはなかった。
現代パート(とはいっても2003年なので・・・時差を感じないこともない。第二次大戦のことを覚えている人の年齢を考えたらこのあたりがギリギリなんだろう)の主人公たるバーグマン刑事は北欧警察小説にありがちなダメ男だけど、元妻に暴力をふるってしまった過去に罪悪感を抱き続ける人で、ちょっと新しいか。
刑事としての能力もものすごく秀いているわけでもなく、でもあきらめない気持ちはヴァランダー警部なみ(タイプは全然違うけど)。
「ノルウェーの歴史の闇」というけれど、あの時代、ナチスに攻められていたヨーロッパ諸国ならどこにでも大なり小なりある話・・・という気がします。勿論、それをノルウェー国内で発表することに意味があるんだと思うけど。
過去パートの主人公はアグネス・ガーナー。<ピルグリム:巡礼者>を名乗るものはアグネスを助け、同時にアグネスを苦しめる者。
下巻途中までは一気読みだったんだけど・・・<犯人捜し>を最後の最後まで伏せたために省略された部分が、特にアグネスには多かった気がして、「あれ?」って思っちゃったかな・・・。
でもこれが作者のデビュー作だそうで、この先は楽しみかも。
バーグマン刑事を主人公にシリーズ化しているようだから、日本語訳が出ることを期待したいです。
紙の本
堂々完結
2020/11/02 08:35
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻に続きブレる事なく圧倒的なエンパシーを孕むサスペンス。徐々に見えてきた一人の女スパイの心の奥には切なさしか感じなかった。話としては落ち着かせるところに上手く落ち着かせた感じですが、もっと恋愛編を見たかったなという欲も沸いた。
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スリリングな過去の展開に比べてイマの事件を追うバーグマンにイマイチ惹かれなかった。約40年前の事件との結びつきも関係者が死亡していたり名前を変えていたりで、ミステリーとしてもしっくりこなかった。
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過去と現実の交差の速度がアップするラスト、読み手も手に汗を握り、真相への接近に息をのむ。
ホルト・ヴァルトホルストの名前が最後まで混乱しごっちゃになってしまった。
あとがきで知るのだが登場人物のコアにいる人らにモデルがいたという事でさらなる衝撃。
一人は主人公としての映画化までされたとか・・見てみたい。
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過去と現在の事件がつながり、事件の様相は最後の最後まで変転する。
どこまでもスパイ小説と警察小説のハイブリッドだった。
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ノルウェイのミステリーといえばジョー・ネスポとサムエル・ビョルクくらいしか読んでいない気がするが、本書は「ガラスの鍵賞」他、北欧ミステリーで三冠を挙げた警察小説であるらしい。それも本邦初訳となる作家。それにしてもぐいぐい読める本とは、こういう作品のことを言うのだろう。
2003年の猟奇的殺人事件を捜査するオスロ警察のトミー・バークマン刑事。1945年戦後に起こるミステリアスな殺人。1939年に始まるイギリス籍ノルウェー人女性アグネス・ガーナーによるスパイ活動の物語。これらが、場面と時代を変えて語られてゆく。最初はわかりにくいジグソーパズルの断片に見えるものが、次第に一枚の絵を完成させてゆく、そのストーリーテリングが何と言っても素晴らしい。
特に、バークマンとガーナーという二人の異なる時代の男女主人公が、それぞれの物語を紡いでゆく話法にはがつんとやられます。この辺りから、物語の加速感が半端ではなくなる。
最後には二つの世界がやがて一つになり、現在の殺人事件の真相に繋がってゆくという構成である。ある意味で北欧圏に戦後を生きた人々にとっては、このような戦後処理とそのどさくさにまぎれた犯罪とは、王道とも言える主題の一つなのではないだろうか。
これが作者デビュー作というが、相当な手練れとしか思えない小説作法ぶりである。ナチのヨーロッパ侵攻。これに対抗する英国との狭間にあって、屈した国、屈する間際だった国。それぞれがそれぞれの形で第二次大戦の洗礼を浴びたのだ。その光と影の中で生きた人間たちが、寿命を迎えようとするそんな現代。埋没した時代の証言者たちにとっては最終機会と言えそうな、そんな現代に。
ナチ党員だった者、そうでなかった者の、隠れた闘争が引き金となり、その渦中にあって恐ろしいばかりのスパイ活動に身を投じたガーナーの苦しみ。その周囲で政治的、あるいは経済的理由で起こったいくつかの殺人とその犠牲者たち。現在に起こった冒頭の猟奇殺人の画面の裏で、フラッシュバックさせながら読者は様々な時代の断片を見せられる。
徐々に明かされる真実のめくるめく多重構造には驚かされる。それ程、ミステリとその背後の迷宮地図が精巧に構築されているということである。それでいて人間的な強さも弱さも曝け出された、現在のヒーローと過去に生きたヒロインとは、感情を引き毟られるほどにスリリングで危うい。二人の物語が交錯する最終インパクトへのスリリングな疾走感は早朝にエネルギッシュである。つまり、ぐいぐい読めるのだ。
ツイストにツイストを連ねるサスペンス。歴史の厚みと闇の暗さをすべて重ねつつ、迎える大団円。予想外の真実。秀作である。
刑事バークマンのシリーズは既に四作までが刊行されているそうである。続編翻訳が大いに期待される作家が、また一人。
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事件と同時にトミー刑事の私生活が描かれる。この刑事のシリーズで続編があるらしい。この物語では相当クズ野郎だけれども、続刊でどうなるのか楽しみではある。犯人が被害者と顔がそっくりだったのなら、犯人を紹介した教授は気づいていたんじゃないだろうか?あと、登場人物のアルコール依存症罹患率が高くて北欧の社会問題を垣間見た気分だった。被害者のグローグの内面の描写は過去も現在もなかったので、カイや白骨死体の事件により興味が沸いたのかもしれない。一体彼は何を考えてそのような行動をしたのか。語られないまま死体となってしまった…。
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これが著者のデビュー作と聞いて驚いた。
北欧ミステリーではナチスの話がよく出てくるが、これは特に面白く読めた。
現代と過去の話を交互に描きながら話が進んでいくのだが、途中混乱することもなく話に入り込めた。
バークマン刑事の過去や今後が気になるところ。続編が楽しみ。
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やっと読了。田口俊樹翻訳だから期待度高かったのだが、やっぱり長すぎる。
北欧モノは名前覚えるのが難しくて、途中で覚えるのを放棄してストーリーだけ追うことになり、肝心の犯人が分かった時にも驚きがないのがつまらん。自分のせいなのですが…。
3.2
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第二次大戦、ドイツに占領されたデンマークとノルウェー、微妙な中立を保ったスェーデン、たったひとりで侵入者であるソ連に抗戦したフィンランド
北欧諸国はヨーロッパ強国の趨勢に左右される。
凄惨な殺人事件と、埋められていた三体の白骨死体から始まり、並行して語られる第2次世界大戦前後の物語が、次第に交差していく。
二つの時代の出来事が1ページごとに繰り広げられる描写は、圧巻。
オスロ警察本部所属刑事の主人公トミー・ハーグマンは、北欧ミステリーの主人公刑事として定石どおり私生活ではダメ人間、でも捜査には妥協がない。
警察小説ではあるも、第二次大戦下のスカンディナヴィア半島での双方の諜報活動の様子は、ミステリーであることを忘れてのめりこんでしまった。
あっという間の上下巻でした。
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過去編は組織の思惑に翻弄されるアグネスと彼女を巡る男達の命運、現代編はバーグマンとヴァルトホルストの対峙など見所も多く、捜査の過程を丹念に描く警察小説の面白さ、そして蓋を開けたら意外とオーソドックスな筋書きも相まって、十分読ませる作品ではあったが、如何せん人間ドラマの書き込みが浅く、真相が明かされる終盤がいまいち盛り上がらず、上巻で積み上げた重厚感が薄れてしまった。犯人が敢えてヒントを差し出す動機にも説得力のある理由付けが欲しいところ。ピルグリムの心変わりをしっかり描いていたら印象はまた違ったのだけれど。
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この小説、ノルウェー、北欧で、有名な賞を3つも取った、とあったので読んでみた。警察物で、ミステリーの要素がありながらのサスペンス小説。上巻を読み終わった後、ちょっと時間を置いて下巻を読み始めた。時間を置いたのは、私だけかもしれないが、読み辛くて疲れると思ったから。こういったカタカナが頻繁に出てくる外国の小説は、人名も地名も馴染みが無い上、その国の人なら知っている、或いは知らなくても何となく分かるであろう地理的な事や歴史、文化、そして習慣などが、私にはよく分からない事の方が多い。そう言った読み辛さはあるものの、小説自体は結構面白く読ませてもらった。話は、2003年の主人公であるバーグマンの行動と1943年のヒロインであるアグネスの行動とが交互に書かれていく。最初は2003年のノルウェー、オスロで起こった残虐な殺人事件の現場発見から始まる。2003年の主人公バーグマン刑事は優秀とは言えないまでも、仕事に逃げている感はあるが(過去に犯した過ちが、妻にしてしまったDV。その事実から)事件を、あらゆる角度から徹底的に調査、推理し真相に迫っていく。一方1943年のヒロイン、アグネスは愛する男のため、自分の信条信念のため、レジスタンスに身を置き、スパイとしてナチス、ゲシュタポの要人たちの中に入り、ナチスに協力的な富豪の愛人となる。このストーリーの流れ、展開、登場人物の心情と行動は適度の緊張感があり、また焦燥感にも駆られ、取っ付きにくい処はあるが面白く読める。バーグマンは、別の角度から見れば魅力的な男に、アグネスは誰でもが愛人にしたくなるような美人に描かれている。カタカナが苦手でない人なら、もっと面白く読めるのではないだろうかと思う。
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第二次世界大戦中の殺人事件が現代になって暴かれてゆく。大きな設定の物語ではあるが、あまりどきどきはらはらとした展開でも感動の展開でもなくて、大作ではあるのだろうが冗長な感じ。
外国人の名前になじめないとか、第二次世界大戦中の北欧の情勢に疎いこととかが理由なのかもしれないが、私はあまりこの物語を楽しめなかった。