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大河原遁『王様の仕立て屋 下町テーラー 6』(集英社、2020年)主人公を邪道と毛嫌いする人物が登場する。『王様の仕立て屋』はオーダーメイドの良さを教えてくれる作品であるが、現実のオーダーメイドと異なる点がある。主人公が超特急で仕立てる点である。これは現実にはあり得ない。
いくらオーダーメイドが素晴らしいと言っても、現実にはレディメイドが普及している。これはオーダーメイドが時間をかかるからである。オーダーメイドがオーダーメイドである以上、必然的な制約である。
ところが、超特急で仕立てる主人公はオーダーメイドの欠点をなくしてしまった。オーダーメイドとレディメイドの良い点を兼ね備えていると言える。オーダーメイドの良さを一方的に押し付けている訳ではない。
この意味で伝統的な立場から主人公を邪道と毛嫌いするキャラクターの登場も適切になる。そのような伝統的な立場がIT業界など新しい需要に応えられないことも、これまた適切である。
古い立場のキャラクターも憎めない存在である。それは彼が個人で戦っているからである。現実の日本の業界は集団で新しい取り組みをする個人を潰しにかかるだろう。昭和の村社会は陰湿で卑怯である。