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「小さな駅の近くの小さな家の前で、学校をさぼった中学生が三人、駅のほうを眺めていて、十年が経った」とか、「商店街のメニュー図解を並べた古びた喫茶店は、店主が学生時代に通ったジャズ喫茶を理想として開店し、三十年近く営業して閉店した」といった長~いタイトルがつけられた33の短~い物語。
とても不思議な構成に読み始めてからしばらくは戸惑う。
国も、地域も、時代も、年代も様々なそれらの物語は、たった3ページで100年が経っていたりする。時間は、場所にも人にも物にも平等に、容赦なく流れるが、そこにあるのはどれもがありふれた日常。一つ一つの話を読み終わっても、「それがどうした?」と言いたくなるような話ばかりだけど、読み進めるにつれて全体として描き出されてくるのは「人間の営み」そのもの。
学校をさぼった中学生、路地に座り続けた老人、バブルに負けず営業を続けた「未来軒」の店主、30年営業したジャズ喫茶を閉店した店主・・・み~んな愛しく感じてしまう不思議な作品でした。
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純文学版のショートショート集。192ページの本に、33本の作品が収録されている。本文は拍子抜けするほど短いのに、その梗概がタイトルになっている(他に「娘の話(1〜3)」、「ファミリーツリー(1〜3)」というタイトルもある)という潔さ。つまり、タイトルを読めば一応読んだことになる……のかな?(笑) 『百年と一日』という題名からすると時間がテーマなのかとも思うが、どれも短すぎて結末もない作品も多く「なんじゃこりゃあ……」と思ってしまった。ぼくの苦手なタイプの本だった。
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これは急いで読む本じゃないな。
一話ずつ、ゆっくりゆっくり読むもだ、と思い、わたしにしてはめずらしく一週間かけて読み切りました。
目次を読んでるだけでも満足してしまう一冊。
お気に入りのお茶を入れて、ゆっくり過ごしたい時のお供にぴったりです。
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私にはこの本の良さが分からなかった。
小説を書く前のデッサン?
ひとつひとつの話も独立してて、あっけなく終わったり、大したオチもなかったり、謎が解明されず終わったり。主人公に名前さえ無くて、読者がどの立ち位置で読めば良いか全く不明だった。
図書館で借りたけど、読破成らず。
全部読んだら何か見えてくるようにも思えなかった。
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どの作品も無愛想なくらい淡々と書かれているのに、どうしてこんなに熱を持って迫ってくるのだろう。近ごろよくある「長いタイトルで中身を説明する」手法を採りながら、それを読んだだけでは得られない確かな読みごたえがあるところはさすが。やはりじっくり丁寧に考えて作られた作品は違う。
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小説の面白さは何を基準に語ろうか。文章自体の素晴らしさ、題材の複雑さ、構成のよさ?
これらの基準は柴崎友香さんの小説には当てはまらないと感じる。百年と一日に限らず、何を読んでもわたしはそう感じる。
ジャンルに関してもそうだ。当てはまるジャンルが見当たらない。ファンタジーちっくにも思えるし、純文学の香りもする。これだと当てはまるジャンルを見つけられないが、かといって新しいジャンルとも言いがたい。
それで考えてみたのだが、心の中という感じがするのだ。誰かの心象風景を解像度の高い状態で“見ている”という感じが。文章を読んでいても、映像で観ている感覚がある。でもそれらを観終わったあと、心に残るのは、文章じゃないと得られなかったような情緒。
わたしはこの読後感が好きでたまらなくて、柴崎友香さんの書く本を読んでいる。
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たまたま降りた駅で引っ越し先を決めた男の話と、31番目の話が何故だか大好きだった。
何故なのかはわからない所が、この本の良さだとも思いました
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読了
時間軸や空間だったり、わずかにずれが生じているような不思議な物語集。読んでいて次の話がなんか気になる…そんな不思議な感覚でした。
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再読。
街の風景をモノクロ写真で切り取ったような、淡々とした短編が続く。当初はさほど感じなかったけど、読み進めていくうちにだんだん「この世界は今日もどこかで人と人が繋がっている」という安心感みたいなものがじわじわと胸に沸いてくる。
自分の本棚でこの本をみかけるとなんだかほっとする、という不思議な存在感をもつ1冊になった。お気に入りの本。
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長いタイトルがついた短編集。
思わずタイトルを読み上げてしまいたくなる衝動。
実際読み上げてしまった(笑)
各タイトルで話の大筋はわかるのだが、短い話の中に長い年月があり、まさに本のタイトル「千年と一日」の対照的な組み合わせ。
今の暑い夏でなく、秋の夜長に、寒い冬にゆっくりとたまには声を出して読むのがベスト。
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人生に必要なのは余白だと思った。
タイトルで話の内容は説明されているけど、それはあくまで説明だけ。本文の中に含まれた些細なこと、逆に含まれていないことからふくらむ物語の味わいが心地良かった。
薄くてすぐに読めそうなのに、読み始めたらものすごく時間がかかり、ゆっくりと、一日数ページづつ読み進めた。稀有な読書体験。
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なんでなのか説明は出来ないけれど、一日一話ずつとか、そんなふうに読みたい短編集だった。
なんかこう…電車とか乗ってて、窓の外の家とか街とか見てると、ここにもみんなにそれぞれの毎日があるんだなぁこの家の数だけ生活があるんだなぁとか思う、あの感じに似ている。
あとタイトルがすごく良い。百年と一日。
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淡々した文体。一気に読んだけれど、良さがイマイチ分からない。でも、イヤな感じはしない。いつか読み直したら、本書への感想も変わってくるのかも。
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母親は腕に抱いた赤ん坊を揺らして笑みを向け続けていたが、傍らで荷物を掲げた父親は落ち着きなく周囲を見回していた。空港には、信じられないほどの人がいた。隣のゲートにも、その向こうに延々と続くどのゲートにも、大勢が待っていた。免税店や土産物屋で買い物する客がおり、警備員や掃除係も歩き回っていた。こんなにもたくさんの、数え切れない人たちが、ここではなにかしら目的を持っていることに気づいて、父親は驚いた。どこかに行こうとしている人か、自分の仕事をしている人しかいない。なにもせずただそこにいるだけの人が存在しないとは、なんということだろうか。父親はその事実にぼんやりとしてしまって、列が進んでいるのに動かなかったので、うしろの客に声をかけられた。母親は赤ん坊をあやしながら先に進んでいた。(pp.143-144)
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母が図書館から借りてきていたのを、久々に実家に帰ってきたときに見つけて読んでみたら、とってもとっても良かった。
言葉少なにシンプルに描かれた数々のストーリーにはとても奥行きがあって、私が夜景を見る時に感じる気持ちを思い出した。それぞれの定点(それは日本語の本であったり、ある日の不思議も記憶に残る思い出だったり、カフェだったりする)から窓の外を眺めるようにさまざまな人生が語られる。その人生という時間の奥行きを、私は夜景を見ながらいつも想う。そしてその奥行きに対する想像力が、すごく大切だと思う。暴力的な決めつけや先入観や常識に囚われてることに気づき、思いやりを持てるようになる源泉。そんなことを考えながら一話一話楽しく読みました。