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ジャーナリズムが権力側からの圧力に屈せずに事実を伝える事に感動。ってかこれって普通の事じゃない?
それなのになぜ事実を事実として伝える事にこんなに心が震えるのだろうか?
Netflixのリミテッドシリーズ『ジェフリー・エプスタイン 権力と背徳の億万』でもエプスタインは女性にマッサージを要求(←ワインスタインもいつもこのパターン)していた。そして売春/接待も行っていた。そしてその現アメリカ大統領トランプもその接待を受けたと言われている
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2020/08/29〜2020/09/20
TBSラジオ『アフター6ジャンクション』に訳者の古屋美登里さんが出演し、紹介されていた本。
ハーヴェイ・ワインスタイン、そしてドナルド・トランプの女性蔑視の姿勢に男性の自分でも大層嫌気がさした。
女性はこんなにも社会の中で不均衡を課せられながら暮らしているのかと衝撃を受けた。
男性こそ読まなければならない一冊。
僕らの次の世代にこの不均衡を持ち越さないために、今、この瞬間から不正に目を向け、戦わなければならないと思う。
「ミーガンは、十年以上、性犯罪と性的違法行為を暴く記事を書いてきた。シカゴでは、その地区の警官と検察官がレイプ・キット〔レイプ被害者の体に付着した犯人の体液や毛髪など、逮捕の手がかりとなる残留物を採取保存する器具、それによって採取した証拠物件〕を握りつぶしたり、公正な裁判を受ける被害者の権利を奪ったりしていることや、性的暴行をおこなった医師がいまだ診察を続けていることなどを暴いた。(P44)
「ミーガンは被害者たちに、「過去にあなたに起きたことを変えることはわたしにはできない。でもね、わたしたちが力を合わせれば、あなたの体験をほかの人を守るために使うことができるかもしれない」と語ったのだ。」(P60)
(マリサ・トメイは)「男女間の救いようがないほどの報酬格差と闘い、男性俳優の役を中心に回っている場面で、自分の役がただのアクセサリーに過ぎないことを何度も経験してきた。「演技というのが、男たちがやっていることに反応するだけっていうこともしょっちゅうですよ」と彼女は言った。(P65〜66)
「トメイはある仮説を教えてくれた。女優と世間は双方の誤解による循環から逃れられない。とても幼い頃から女の子たちは、映画に登場する魅力的な女性を素晴らしいと思い、そういう女性になりたいと思うように仕向けられている。そうやって大勢の女の子が女優になりたいと思う。運よく女優になった娘は、嫌がらせや厳しい体型維持のことなどを口に出すことができない。話せば自滅が待っている。それでその悪循環は続き、次の世代の女の子たちもハリウッドの夢を見ながら成長し、映画界が娘たちをひどい目に遭わせていることはだれにも知られずに来たのだ。」(P66)
(アシュレイ・ジャッド)「日本でモデルの仕事をしていたとき、ボスに性的暴行を受け、知り合いにレイプされた。」(P73)
「ハリウッドの気風というのは、不満を呑み込んで、性的嫌がらせをに耐えることだった、とパルトローは述べている。」(P81)
「示談は弁護士にとっても、とりわけ経済的な意味で好都合だ。弁護士の仕事は一般的に、「依頼人が金を得たときにのみ報酬を得られる」という偶然性に頼っている。(略)裁判で負ければ報酬はゼロになる。したがって性的嫌がらせの示談合意は弁護士にとっては結構な商売になる。」(P100)
「この27年間、玄関扉を叩く人が現れるのをずっと待っていました」と女性は言った。「わたしがいま言えるのは、ミラマックスと労働紛争があり、その争いは和やかにかいけつしたので、それについては今後一切議論をしない、と���う合意に達したということです」(P105)
「私達はどうして声を上げないの?」(P111)
「彼と出張から戻ってくると、うまく切り抜けたという安堵感と、罪を犯して堕落したような奇妙な感情を味わった」(P112)
(フェミニストの弁護士、オールレッド。「トランプへ訴えを起こした女性達の代理人」(P131)の意外な行動)「オールレッドの法律事務所はワインスタインに対する別の告発の記録を、政府や世間から注目されないように、非公開にしていたのである。
オールレッドは被害女性に声を上げさせるということで評判が高かったが、その一方で、被害女性を黙らせ、性的嫌がらせや虐待の訴えを退けるためにひそかに示談に持ち込むこともしていて、それが彼女の収入源になっていた。」(P132)
「オールレッドは共同経営者のジョン・ウェストにマッソーの件を任せた。ウェストは訴訟に頼らず、ひそかに示談にするほうがいいと言った。ワインスタインとその権力に公の場で楯突くことを恐れたマッソーは、すぐに十二万五千ドルを受け取り、その代わりに二度と告発をしないという法的拘束力のある約束をした。(略)「彼はわたしに、金をもらって前に進んで心を癒やせばいいと言ったのよ」。オールレッドの法律事務所は、この示談の成立で、示談金の40パーセントを報酬として得た。」(P134)
オールレッドの横暴、P135ラスト
「驚くことに、ボイーズの法律事務所は、ある訴訟事件で「タイムズ」の代理人を務めていたにもかかわらず、その裏ではワインスタインに手を貸し、「タイムズ」の調査を妨害するという契約を履行していた」(P161)
「(略)私がアメリカにいて思うのは、アジア人は模範的なマイノリティであれ、という文化的な了解がある。大騒ぎをしない、声を上げない、頭を低くして、ひたすら必至に働き、波風を立たせない、と言うような不文律があるの」(P386)
「ワインスタインの不適切な行為が公になってから、ワインスタインのさが彼女を、つまり彼女の名声、アカデミー賞受賞歴、成功を、ほかのか弱い女性たちを騙す手段として利用していたことがわかったという。(略)女性たちは、ワインスタインが自分たちに最適暴行を加えているあいだ、パルトローのことや、人が羨むほどの成功をおさめた彼女の仕事のことを決まって引き合いに出し
それはパルトローがワインスタインに身を委ねたからだとほのめかした、と打ち明けたという。「あいつはわたしのキャリアのことで、こう言ったそうよ。『彼女みたいになりたくないのか』って」
(略)
「この出来事のなかでもっとも辛かったのは、レイプを強要するための道具ときて私が使われてたと知ったことね」パルトローは涙を流しながら言った。「たとえ筋違いな考え方だとしても、ある意味ではこれは私のせいだと思った」」(P388,389)
「(トランプを告発したレイチェル・クルークスは民主党から立候補した)選挙キャンペーンで明らかになったことは、人々は“トランプの話”を通してしか彼女の存在を認識していない、ということだった。それでいまもそのレッテルと戦っていた。テレビに彼女が登場すると、その画面下に「トランプの告発者」とだけ記されることがあった。(略)「それがあなたのアイデンティ��ィになったんだ」と男性の友人が最近彼女に言った。
「扉が開いて新しい道が用意されたけど、わたしはあの嫌な奴との関係を断ち切れないでいる」と彼女は語った。」(P392)
「しかし、この部屋にいるひとりひとりが、そしてもっと大勢の人々が、分かっているのだ。「話を公表しなければなにも変わりはしない」ということを。(略)
私たちの報道の世界では、記事を書けばそこで仕事は終わる。それが結果であり、最終的な成果だ。しかひより広い世界では、新しい情報を発表することは、始まりだ。議論の始まり、行動の始まり、変化の始まりなのだ。」(P396〜397)
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#MeToo 運動を爆発的なものとしたニューヨーク・タイムズのハーヴェイ・ワインスタインに関する報道の全容を明かしたノンフィクション。この報道は2018年のピュリッツァー賞を受賞した。さらに後半(第8章以降)には、連邦最高裁判事ブレット・カバノーを告発したクリスティーン・ブラゼイ・フォードとその弁護団の闘いが書かれる。
はじめに、私は調査報道を舐めていた。こんなにも過酷でかつ繊細だとは想像もしなかった。しかし、もし誤った報道をしてしまえば、その報道で誰かの人生が破滅するのだ。報道は対象の人生を揺るがす。
ジョディ・カンターとミーガン・トゥーイー、ふたりの記者は、まず証言者を探し、その証言の裏を取る。地道であり、果てしない作業だ。
ハーヴェイ・ワインスタインは「神」である。ミラマックスとワインスタイン・カンパニーが手掛けた作品は映画好きなら皆知っている。アカデミー賞の為のキャンペーンに莫大な金をかけたり、買い付けた作品を散々再編集させたりという(性犯罪以外の)悪評もあったけれど、やはり彼は凄腕プロデューサーであり「神」であり、そして経営者である。
声を上げられない女性の葛藤は非常に生々しい。そして彼女たちは秘密保持条項を含む示談に縛られている。「女性の味方」を標榜する女性弁護士がこの示談に関与しているくだりは、正直なところぞっとする。
縛られる女性たち。探偵やイスラエルの諜報会社まで使って報道を阻止せんとするワインスタイン側。告発者を守りながらオンレコで語ってもらうには。
調査報道の困難さが実感できる。2名の記者の粘り強さと礼儀正しさ。彼女たちを支え、助言するタイムズのメンバー。
タイムズ側に対するワインスタイン側の対応は、贔屓目に見ても妥当に見えない。本当に地道な調査の積み重ねと、記者たちの真摯な姿勢が、理不尽な社会を斬った。
...だが、斬っても、社会の根本が変わっていないと思わされるのが第8章以降である。
日本でもそうだが、世の中の一部は女性の感情を本当に見ていないと感じることがある。自分勝手な欲望を相手に与えてもそれを罪と思わない。いや、たとえ思ったとしてもそれを重大なこととは思わない。女性が長い間、その傷を抱えてついに告発しても「なぜその時言わなかったのか」と言う。立場の高い者は「女性が誘惑してきた」とも言う。恐ろしい程重い蓋だ。
重い蓋を課せられながら、公聴会で告発したクリスティーン・ブラゼイ・フォード。結局、結果は変えられなかったが、この頑迷な世界に楔を打ち込むことはできたのだろうか?できたと信じたい。
終章で、この本に登場した告発者の女性たちは集まり、語り合う。語り、先を見る。「語り合うこと」には強烈な意味があると感じた。孤独ではないということ。立場が異なっても闘う土壌は変わらないこと。声を上げ続けることの意味。
最後に。この調査報道で様々なことが浮き彫りになったが、やはり女性を口止めする手段としての「示談」は卑劣だと感じてしまう。そしてそれがまかり通っていること。本当はそんなことが起こらない社会が最良なのだが、私たちは問題に直面したとき、誰を信じれば良いのか...。
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MeToo運動以後、様々なメディアで描かれてきた現代社会における女性の生きづらさ。その本家本元・真打ちと言うべき一冊。特に第4〜7章はイスラエルのスパイ組織まで登場する緊迫の情報戦。内容が内容だけにエンタメとして楽しんではいけないのだが、TBS日曜劇場ドラマのような息もつかせぬ展開で一気に読んでしまった。
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調査報道の緻密さ、加害者側からの干渉がいかに調査の妨げになるかについては、「スポットライト」などの映画や過去いろんな本で見てきたものの、#me too は被害者とその支援者たちとの距離の難しさや、心の動き、社会的な力学までもが報道の行方にかかわることを実感した。オンレコで発言をしてくれる一人ひとりとの関係性の作り方をみると、記者という仕事はただ「書く」のではなく、書くための関係値のパズルをする仕事なのではと思った。ムーブメントのあとの彼女たちの集まりについての章も興味深い。
「報道が議論の始まり、変化の始まり」であると自負するメディアはどれくらいいるだろう。ムーブメントも落ち着いたあとも、告発した当事者たちがその後を下を向くことなく次へ歩み続けられるように必要なサポートが、報道機関ないし、周辺の非営利団体などにより継続してなされることを期待したい。
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ジャーナリズムの真髄と嘘みたいな本当のストーリー。
#metooとワインスタインの裏側にはこんなことがあったのかあ。
ワインスタインのことをよく知らなかったけど、見てみたら自分が過去見ていた映画とかも手掛けててびっくり。#metooも日本ではこんなに大きく広がることはなくて、日本でも女性が団結して強くなるっていう流れができるといいなと思う。日本は被害者叩きすぎ。。
かなり読み応えありました。
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『その名を暴け』を読みました。
ハーヴェイ・ワインスタインという実力のある映画プロデューサーがいて、そりゃぁもうとてつもない影響力と権力をハリウッドに持っていて、残念ながら変態性欲者で自制の効かない人間のクズだったもので、その優越的地位を利用して女性に性犯罪を繰り返していた。
それを暴いたニューヨーク・タイムズ女性記者二人の調査報道ドキュメンタリー。
教会の児童性虐待を暴いたボストン・グローブ紙の実話ベース映画『スポットライト 世紀のスクープ』が凄く好きなのでかなり興味深く読めました。
残念ながら日本ではあまり「調査報道」が盛んではありません。欧米では権威のある賞は「特ダネ」ではなく「調査報道」に与えられます。そんな背景もあって、日本人が調査報道というジャーナリズムを詳しく知る機会はなかなかなく、その点でもとても貴重な翻訳モノでしょう。報道を目指す学生さんなんかは絶対読むべき。
私にとっては以下の3点が描かれていてでたまらなく面白い本でした。不謹慎ながらエンターテイメントとして読んでいました。
①ジャーナリストというプロフェッショナルの仕事風景
②告発報道対秘密保持契約・恫喝・金満弁護士の諜報戦
③個々の勇気の連帯、団結、社会現象化へのうねり
それと、ハーヴェイ・ワインスタンに加えてドナルド・トランプによる性被害についても書かれていて、ピューリッツァー賞獲った調査報道でなかなかの人間のクズっぷりを書かれている人が大統領なんだな、この国・・・と感慨深いものがありました。
◆実刑判決を喰らっているワインスタインのプロデュース作品で僕が好きな映画がこんなにあったという残念なリスト。
『トゥルー・ロマンス』『ブルー・イン・ザ・フェイス』『クロッシング・ガード』『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』『恋におちたシェイクスピア』『ロード・オブ・ザ・リング1・2・3』『リベリオン』『シン・シティ』『イングロリアス・バスターズ』『キャピタリズム〜マネーは踊る〜』『英国王のスピーチ』『ジャンゴ 繋がれざる者』『はじまりのうた』
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宮川マサルさんのラジオでオススメされて読んだ。
やっぱり翻訳なので、なかなかテンポが合わず、中盤は長くてダラけてしまったが、、、訴訟、示談社会のアメリカで、凄腕の弁護士を抱える富豪を追い込むのがどれだけ大変か、よく分かった。
示談するとその件についての発言は一切出来ないとか、ホントに、お金で何でも買える国、アメリカ、、、そんなのアリか??
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根拠が不明な文章や映像が普通に「ニュース」として流通している。他方では、都合が悪かったり気に入らない報道に接すると「フェイクニュース」として切り捨てる。信頼に足るメディアはあるのかみんな疑心暗鬼で、とくに大統領選の報道が溢れたここ数週間は暗澹たる気分でいたが、この本を読んで救われる思いがした。ニューヨーク・タイムズの記者・スタッフがいかにしてワインスタイン事件を報道したかという詳細な記録。大手メディアはそれ自体が権力として批判も受けるが、この報道はニューヨーク・タイムズでなくてはなし得なかっただろう。
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国立女性教育会館 女性教育情報センターOPACへ→
https://winet.nwec.jp/bunken/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=BB11475627&opkey=B160888360749366&start=1&totalnum=1&listnum=0&place=&list_disp=100&list_sort=0&cmode=0&chk_st=0&check=0
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ひどい、ひどすぎるねワインスタイン。
つい最近までこの犯罪行為がまかり通っていたとは。
最初に告発したローズ・マッゴーワンは勇者だね。
被害者の数と肉体的、精神的に受けた代償に対して禁錮23年じゃ少なすぎるでしょ。
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ニューヨークタイムズの記者を始めたくさんの人たちが過去の虐待恫喝を明らかにすることで未来の女性たちを守るということに繋がる.ワインスタインを裁くのはもちろんだが,彼のような男至上主義の社会制度そのものに切り込んでいくことが素晴らしかった.これを記事にする苦労,ここまで気を使うのかと驚くとともに敵の妨害の攻防など映画を見ているようだった.自分たちにされたことを葬らずに世界に向かって語ることで,現在苦しんでいる女性たちこれから苦しむだろう女性たちを守るため,勇気を出した彼女たちに乾杯!
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図書館で借りた。どっかの俳優さんのお陰で予約が入ったから途中で投げて返したけど、ハーヴェイ・ワインスタインはクズだとわかった
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「わたしがアメリカにいて思うのは、アジア人は模範的なマイノリティであれ、という文化的な了承がある。大騒ぎをしない、声を上げない、頭を低くして、ひたすら必死に働き、波風を立たせない、というような不文律があるの」というワインスタインの被害者の1人、チウの言葉は重い。
ワインスタインは有名人だったけど、これはどこにでもある話で女は話し疲れてる。もっと聞いてほしいよ。
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2017年10月、「ニューヨーク・タイムズ」紙が「ハリウッドの大物プロデューサーによる性的暴行」を報道した。これをきっかけに、性暴力の告発運動である「#MeToo」が巻き起こり、アメリカに留まらず世界的ムーブメントへと発展した。女性たちはソーシャル・メディアに#MeTooタグを付け、次々と過去に受けた性被害を告白していった。「#MeToo」運動は「自分が発言することが(誰かの)行動に繋がる」という、価値観の転換を促した。
ハリウッドの敏腕プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン。「人を出世させる力」を持つワインスタインは、グウィネス・パルトロー、マット・デイモンなど数々の若手俳優をスターダムに押し上げ、『セックスと嘘とビデオテープ』『クライング・ゲーム』ほか多くの独立系映画を大ヒットさせてきた。アカデミー賞をはじめ数えきれないほどの賞も獲得している。ハリウッドにおいて、「ハーヴェイ」の名は権力と同義語であった。
しかし、その裏でワインスタインは「女性への扱いがひどい」と囁かれていた。2016年、女優のローズ・マッゴーワンは匿名のプロデューサーにレイプされたと訴えていたが、噂ではワインスタインのことだと言われていた。彼女は「ハリウッドやマスコミの間では公然の秘密」と、#WhyWomenDontReport(どうして女性たちは声を上げないのか)というハッシュタグを追加してツイッターに投稿した。同年5月、「ニューヨーク・タイムズ」紙(以下、「タイムズ」)の記者ジョディ・カーターは、ワインスタインの調査をするためマッゴーワンに連絡を取った。マッゴーワンはオフレコ(非公開前提)を条件に、彼女が受けた恐ろしい体験を打ち明けた。
1997年、マッゴーワンは注目すべき新人女優の1人としてサンダンス映画祭に参加していた。独立系映画の一大発信地だったこの映画祭で、ワインスタインは「統治者」として君臨していた。ワインスタインは「話し合いをしよう」と言って彼女を自分の宿泊するホテルへ誘った。彼の部屋でひとしきり映画の話をして帰ろうとした瞬間、マッゴーワンは浴槽のある部屋に引きずり込まれた。ワインスタインは彼女を裸にし、股のあいだに自分の顔を強引に押しつけた。数日後、彼女の自宅の電話に、「ほかの大女優たちはぼくの“特別な友だち”で、その仲間にきみも入れるよ」という、身の毛がよだつ内容の伝言が入った。彼女はマネージャーに事情を打ち明け弁護士を雇い、ワインスタインから10万ドルの示談金をもらって一件落着となった。示談金の授受は「ワインスタインの悪行を公言しない」ことが条件であった。マッゴーワンはジョディに、「ワインスタイン単独の問題ではなく、ハリウッドは女性への虐待を組織的に行なっている」と訴えた。
ジョディは、先輩編集者の勧めで同僚のミーガン・トゥーイー記者に連絡を取った。ミーガンは「タイムズ」に比較的最近入社した記者だが、これまで10年以上、性犯罪や性的違法行為を暴く記事を書いてきたスペシャリストだった。当時大統領候補であったトランプの女性への犯罪行為も取材していた。
ジョディは、ワインスタインがかかわった映画に出演した女優たちから直接話を聞くために、彼女たちの個人的な連絡先を調べ、少しずつ連絡を取っていった。多くの女優たちが「ハリウッドは性暴力の蔓延に悩まされている」と言った。しかし、それが明るみに出ることまでは望んでいなかった。何かを恐れ、どうやって助けを求めたらいいかわからない。彼女たちは世界的なスターであったが、この問題については「変化をもたらすことはできない」と考えていた。
女優のアシュレイ・ジャッドはかつて、勇気を持って声を上げたことがあった。彼女が20代後半の頃、ワインスタインから複数回ホテルのスイートルームに呼ばれ、あからさまに性的な要求をしつこくされていた。ほかの女優からも同様の経験談を聞いていた。女性が団結して攻撃的な男性を追い払うためには「勇気ある一歩を踏み出すこと」が必要だと考えた彼女は、2015年、エンタメ雑誌にワインスタインの名前を伏せて告白した。それによってほかの女優たちも告発することを期待したが、結果的に何も起こらなかった。声を上げたことで大きな代償も払った彼女は、慎重になっていた。
2017年6月、ジョディは女優のグウィネス・パルトローが話したがっていると人づてに聞いた。彼女はワインスタインの寵児であり、ふたりは「にこやかな父娘」といった構図で何度も写真に収まっている。しかしその彼女こそ、ど真ん中の情報提供者だったのだ。二人の関係について、誰も知らない話を打ち明けてくれた。22歳の駆け出し女優だったパルトローにワインスタインは自信を与え、2本の映画への出演を依頼した。ある日ワインスタインは彼女をホテルの部屋に誘い、仕事の話のあとに“お馴染みの要求”をした。親戚のおじさんのように思っていたワインスタインが自分に性的な関心を抱いていたことに対し、吐き気をもよおした。パルトローは、オンレコ(報道を前提)では話せないとしつつ、ワインスタインの被害者のリストをつくるのに協力してくれた。
ジョディとミーガンは、ほかの取材対象を追う記者と情報交換しながら取材を進めるなかで、ワインスタインは人に知られていない女性たちにも性的虐待をしていたのではないかと疑い始めた。
ジョディは、ゼルダ・パーキンズという女性に会った。彼女は若い頃、ワインスタインが設立した映画会社「ミラマックス」のロンドン支社でアシスタントをしていた。1995年に働き始めた初日から、虐待を受けていたという。毎朝、裸同然のワインスタインを起こすことが彼女たちアシスタントの仕事だった。そのままベッドに引き込もうとしたこともあったという。意志の強い彼女はワインスタインに屈することはなかったが、自分より年若いアシスタントから、ワインスタインに性的暴行を受けたことで助けを求められた。パーキンズはワインスタインを糾弾し、後輩を守るため一緒に会社を辞めた。
彼女たちは弁護士を雇い刑事裁判を起こそうとしたが、弁護士は物的証拠がないことなどを理由に、こうした事件の典型的な解決法として示談を勧めてきた。パーキンズたちは憤慨したが、逆にワインスタインの弁護士から訴え返され、巨額の示談金とともに尋常ではない制約を受け入れることとなった。メディアに話すことを禁じられただけでなく、「真実が公表された場合でもその真実を隠蔽する」ことなど、常識に唾する内容であった。
事件から20年近く経った��、ワインスタインとの秘密保持契約書を無視してパーキンズは声を上げようとしていた。女性たちが自身の権利を放棄するために、理不尽な示談書にサインさせられる事態を変えたかったのだ。
2017年7月、「タイムズ」の編集長ディーン・バケットは、この件に関わる記者や編集者を呼び集め、「用心しろ」と伝えた。調査を止めさせるため、すでにワインスタインと顧問弁護士は、「タイムズ」にオフレコの話し合いを求めて電話をよこしていた。ワインスタインは自分の評判を守るため、長い間私立探偵、つまりプロのスパイ集団を雇ってきた。彼らを使って記者を見張り、ときにはゴミ箱をあさって証拠を探し出させた。ワインスタインの顧問弁護士たちは彼らとタッグを組み、組織的にワインスタインを守ってきた。彼らは「タイムズ」記者たちの動向を監視し、SNSのアクセス状況を調べ、身上調書をまとめていた。そこには、ツイッターでフォローした相手の名前も入念にリストアップされ、中には重要情報の提供者もいた。ワインスタインは強力なチームを後ろ盾に、戦争を仕掛けようとしていた。ジョディたちは調査を重ねていったが、記事にできるものはわずかしかなかった。
ワインスタインの行動をつぶさに見てきた人物に、弟のボブ・ワインスタインがいる。ワインスタイン兄弟はミラマックス社を二人三脚で事業運営してきた。しかし次第に自身の名声に執着し始めた兄を、不安に思うようになっていった。それに、ボブ自身も兄が女性に脅迫する現場を目にしていた。ゼルダ・パーキンズの件で、彼女たちに小切手を切ったのはボブであった。2015年頃、ワインスタインはイタリア人モデルから性的暴行で訴えられた。ボブは兄の問題はセックス依存にあると考え、責任を持って専門家の治療を受けるよう求める手紙を送った。
ほかの重役にも、このままでは経営に悪影響を与えると感じる者はいた。会社の副社長、アーウィン・ライターもその一人である。ジョディはライターに会いに行った。ライターは、尊敬されていた下級管理職であったローレン・オコナーが書いたメモを撮影した写真を持っていた。そこには、ワインスタインが女性従業員たちに行なってきた性的虐待の様子が、冷静かつ詳細に記されていた。ライターはそのメモが添付されたメールを開いた状態で、携帯電話をジョディに渡してトイレへ立った。ジョディはそれを、コピーしろというメッセージだと受け取った。オコナーのメモは、それまでの取材でつなぎ合わせてきたワインスタインの犯罪パターンを裏打ちする、貴重な証拠だった。
2017年9月29日、バケット編集長は記者たちに「書け!」と指示を出した。記事には、名前、日付、法的かつ金銭的やりとりの情報、オンレコの証言、証拠文書が必要だった。ジョディとミーガンは、原稿を書きながらさらに裏付け調査を進めていった。女優のマッゴーワンは、示談書のコピーを入手していた。報復を恐れて沈黙していた元従業員の発言も、少ないながら加わった。アシュレイ・ジャッドはオンレコで情報提供をすることを承諾した。ワインスタインは「タイムズ」に電話や直接の訪問で脅しをかけてきたが、10月5日午後2時5分、ついに記事公開のボタンが押された。
記事公開の翌日、ジョディとミーガンのもとには、ワインスタインの話がしたいという大勢の女性から連絡が届いた。アンジェリーナ・ジョリーなど有名女優たちも名乗り出た。グウィネス・パルトローは、続報記事の原稿に約束通り登場した。
「タイムズ」の記事は、性被害に蔓延する秘密主義を打ち砕き、同じような辛い経験をした世界中の女性たちに、声を上げるよう背中を押した。「性的嫌がらせや虐待について声を上げることは、恥ずべきことではなく、賞賛に値すること」であり、「ワインスタインの行為は明らかに犯罪である」という、新しい合意へとつながった。記事公開から数週間のうちに、国内外から大量の情報が「タイムズ」だけでなく他の報道媒体にもなだれ込んできた。これらの性的被害に関する調査は、ジャーナリズム界全体を巻き込む一大プロジェクトに発展した。
ソーシャル・メディアではあらゆる年齢層の女性たちが、「#MeToo」というハッシュタグを付けて自分の経験を投稿するようになった。「自分の経験を話すことが行動に繋がる」という自信を得られたのだ。ビジネス界から政界に至るまで、あらゆる場で性的暴力、ハラスメントについての実態調査が行なわれ、揺るぎない権力者と思われていた男性たちが次々と地位を剥奪された。
記事公開から7カ月後、ワインスタインはマンハッタンの法廷にいた。彼は強姦、犯罪的性行為、性的虐待の罪で訴追されていた。その日を最後に、ワインスタインはGPS監視も義務づけられることとなった。
ハリウッドで、ハーヴェイ・ワインスタインが女優や秘書などに仕事の昇進や役柄のオファーと引き換えにセクハラをしてる噂はあったが、なかなか告発されなかった。
何故なら、ワインスタイン兄弟はクエンティン・タランティーノ監督などのインディーズ映画を買い付けヒットさせてきたので、ハリウッドで新進気鋭の映画プロデューサーとして力をつけていたから。
仕事を奪われたくない干されたくないため、ハーヴェイ・ワインスタインの言いなりにならざるを得ず、示談書には秘密保持義務の要項があり被害者が告発出来ないようになっていた。
ハーヴェイの弟ボブは、兄ハーヴェイが女優などにセクハラしていたことを知り、ハーヴェイのセクハラがミラマックスに悪影響を与えることを恐れて、ハーヴェイにセクハラを止めるように忠告したが、ハーヴェイは聞き入れなかった。
ハーヴェイ・ワインスタインのような社会的地位の高い人からのセクハラを告発するためには、証言だけでは「やった、やっていない」の水掛け論になるため、示談した時の会話を録画したテープや示談書の原本かコピーや具体的な事柄の流れを詳細に書いた証言記録などが必要。
ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラの告発には、アシュレイ・ジャッドなど被害者の女優の名前を出しての証言やローズ・マッゴーワンが手に入れた示談書のコピー、ハーヴェイ・ワインスタインの補佐役をしていたアーウィン・ライターがハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ疑惑を追跡調査していたジュディ・カーターに渡したハーヴェイのセクハラ被害者が書いた具体的な被害の詳細が書かれたメモが効果的だった。
ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ告発により、欧米の企業では被害者の言い分をちゃんと聞くなど被害者を保護しセクハラを決して許さないコン��ライアンスが出来つつある。
ソーシャルメディアでは、#MeTooのハッシュタグで過去の性被害を告発するムーブメントが起こった。
だが日本では、セクハラや性犯罪の被害者に対する風当たりが強く、被害者に対する誹謗中傷が激しい。
ただ性犯罪の刑法の改正のための法務省の会議が開催中で、ソーシャルメディアでの誹謗中傷に対する対策が進む今だからこそ、#MeToo運動のきっかけになったハーヴェイ・ワインスタインセクハラ告発を改めて知るきっかけになって欲しいノンフィクション。