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入院中のおじいちゃんは亡くなったおばあちゃんと暮らした島の家に一度戻りたいと、その望みを叶えるため、ぼくはウソつきになる。
おじいちゃんとぼくのカンペキな計画。はちゃめちゃでユーモアがあり楽しい。けれどその先に待っているものがわかるだけに切なさが滲む。
おばあちゃんが作ったコケモモのジャムを一匙づつ大切に食べるおじいちゃんは「おばあちゃんは自分の時間をジャムに捧げた。おばあちゃん自身の思いも。だから、おばあちゃんの人生の一部がこの中にある」という。こんな風に思われたら手仕事冥利に尽きる。
「なにか、きれいな言葉を言いたかった。どんなにおばあちゃんのことを好きだったか…とか」きたない言葉ばかり使うおじいちゃんは、天国で再会するおばあちゃんのためにきれいな言葉を練習する。言葉にできなかった想いを後悔と共に抱えていたおじいちゃんの最後は、キティ・クローザーの描く挿絵が物語っている。
きれいな言葉を使うことで、お父さんとも歩み寄れた。
スウェーデンの児童文学作家ウルフ・スタルク最後の作品は、大好きだったおじいちゃんへの想いが詰まった素敵な話だった。
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ウルフのおじいちゃんは病院に足を骨折して入院している。ウルフは毎週お見舞いに行きたいけれど、お父さんは汚い言葉を使うおじいちゃんと仲が悪く、理由をつけて見舞いに行きたがらない。ウルフはサッカーの練習に行くふりをして、一人でお見舞いに行く。そして、おじいちゃんの病院脱走計画に協力することになる。おじいちゃんは、無くなったおばあちゃんと二人で暮らしていた島の家に行きたかったのだ。
おじいちゃんの家やおばあちゃんに対する気持ちが心にしみます。仲が良くない父親とおじいちゃんとの間にも、別な形ではあっても家族の思いがあふれている。
スタルクの遺作となった作品だが、小学生にも家族愛を静かに考えさせてくれる作品になっている。
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ともすればセンチメンタルになりすぎなテーマを軽やかでユーモラスに描く著者ならではの作品。挿絵のおじいちゃんがまた作品にぴったりですばらしい。
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昨年末に読みました。
ワイルドなおじいちゃんと、現実的なパパ、
そしておじいちゃんが大好きなぼく。
おばあちゃんが死んでしまってから、足の骨を折って、愛する家を離れ入院しているおじいちゃん。
ぼくは、おじいちゃんを元気づけようと、病院を抜け出して、離島の家に帰る計画を勧めます。
ふたりの計画に力を貸してくれる素敵な大人として、
近所のパン屋のアダムがいます。アダムは古くなったシナモンロールを子どもたちにくれたりする。
「犬にでもやれ。」と言って。でも誰一人として犬なんて飼ってないんだけど。
ぼくの完璧な嘘の行方がなんとも切なく描かれています。
そして、スウェーデンといえば、ミートボールにコケモモジャム!おじいちゃんとおばあちゃんの大切な想い出が詰まったコケモモジャムが、物語の語り手になってくれているようです。
ジャムはお話しが進むとともに少しずつ、減っていく…
愛とユーモアに溢れた素敵なお話でした。
あ、アダムのカルダモンロールもとっても気になる。。
ウルフ・スタルク 最後の作品。。
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手に取る機会があって、図書館で借りた。
おばあちゃんが亡くなってから、おじいちゃんは入院している。
おじいちゃんは、きたない言葉をつかって怒りっぽく、パパは、お見舞いに行きたがらない。
でも、ぼくは、おじいちゃんが大好き。
ぼくとおじいちゃんは、病院を抜け出して、おじいちゃんがおばあちゃんと暮らしていた島の家に行く計画を立てて……。
おもしろかった。
「7 〈岩山の家〉へ」、「8 コケモモのジャム」と終盤が良かった。
それから「12 カンペキなうそ」も。
私はいい大人だけれど、最近は、何もなしえないと落ち込むことが多い。
社会では人の代わりなんていくらでもいるのが事実だけれど、私の何かがきっとそこここにあるんだ、と慰められました。
また、ぼくとおじいちゃんのやり取りでは、ぼくがぐっと受けとる場面も結構あって、人がわかり合うには、言葉は大事だけれどそれだけじゃないよな、とも感じました。
アダムみたいな大人が近くにいるっていいな。
絵のちょっとした陰影が、北欧(スウェーデン)っぽくてすてき。
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義父にもこんな旅を孫とさせてあげたかったな、と、
涙が溢れました。
表紙と裏表紙の絵がまた意味深く。。
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結末は悲しいのに爽やかな気持ちになれた一冊でした。
汚い言葉を使うおじいちゃんと彼をちょっと疎ましく思うお父さん、そしてそんなおじいちゃんを慕うウルフの関係が児童書にしてはなんとも大人っぽい。
物語が進むにつれてなぜおじいちゃんが汚い言葉を使うのか分かってきます。
それは愛するおばあちゃんとの哀しい別れがあったから。
人はどうにもならない悲しさや辛さを、怒りという形で表現することがあります。
このおじいちゃんもそうなのではないでしょうか。
インパクトのある挿絵に最初ちょっと嫌悪感ありましたが、読み終わった後はこの挿絵で良かったと思っている自分がいました。
スタルク最後の作品なのだとか。それを知って読むと著者のメッセージがさらに胸に響いてきます。
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いつからか、父や祖父の視点から本を読むようになった。みんなそれぞれの想いがあり、しかし表れる考えや行動は異なる。それはそれで大切なこと。
正しいと思っていても、あとから考えると正しくなかったんじゃないかと思うこともある。子供がそう思って悩んだときに、「大丈夫、相手もそれをもっとも望んでいたんだよ」というように声をかけてあげられるようになりたい。
おじいちゃんとパン屋のアダムとの間で行われる当意即妙の会話は、こちらにドキドキをもたらして素敵。
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おじいちゃんと孫っていいよね。親子ではうまくいかないこともこの関係だとお互い優しくなれる。口が悪くても気持ちが伝わるね。大事な人、大事なもの、大事な思い出…。それがあれば生きていける。
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入院したお年寄が乱暴になったりして周りの人を困らせる話は実際よく耳にする。
「獣みたいに、こんなところに、とじこめやがって!」ウルフのおじいちゃんの言うこともわからないでもない。
そんなおじいちゃんを息子であるウルフの父親は見舞おうとしないけれど、ウルフは「なにがあっても、ぼくは行くよ。ぼくは、おじいちゃんが好きだし、ひとりぼっちでいてほしくないから」
そして、死ぬ前に、おばあちゃんとふたりで暮らしていた家に取りに行くものがあるというおじいちゃんのために、カンペキな計画を立てたウルフ。
「うそをつくのは悪いことじゃなきゃいよね?」
「ああ、ときには、うそは真実に勝るぞ」
「うそをつくと、きりがなくなる。なにかバカなことを思いついてうそをつくと、最初のうそがばれないように、またすぐにうそをつかないといけなくなる。そして、そんなことをつづけていると、うそだらけの世界ができあがってしまう。」
ウルフはこのままうそをつきつづけるのだと思ったら…
「パパは、ぼくの思いついたうそを真実だと信じこみ、ぼくが話す真実を、うそだという。」
予想以上にユーモアと感動とが混じり合ったいい作品だと思いました。
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スラング=汚い言葉、というのが、日本の子には若干伝わりにくいかなと感じるものの、内容としてはとても心に響く物語。
丁度、おじいちゃんおばあちゃんが患ったり、入院していたり、という経験が重なる高学年の頃に、是非、読んでいて欲しい一冊。梨木さんの「西の良き魔女」と同じく、『死』というものへの心構えが変わる本。
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最高だった。
すみからすみまでスタルク節で、口の悪い、むずかしい人であるおじいちゃんの人間性が生き生きと立ちあがってくるし、にやりとしてしまうユーモアに満ちている。
そして主人公のウルフも、巻きこまれて手を貸してくれるパン屋のアダムも、父親であるおじいちゃんとうまく行っていないウルフのパパも、みんなそれぞれにひとりの人間として描かれている。
ストーリーを動かすためにへんな行動をとる人がいないし、逆境をつくりだすために不幸をおわされる登場人物もいない。完ぺきな文学作品で、完ぺきな児童書ではないでしょうか。
死におもむく人に対して、あれもいけないこれもいけないということは、たぶんその本人のためではないんだろう。それでも家族や病院のスタッフはそうしがちなんだよね。わたしも母が大腿骨骨折で手術したあと、退院したらすぐに家に帰りたいというのをおしとどめて、数か月間ホームで暮らしてもらったっけな。あれは本人のためというより、その方が安心で世話がしやすいという、こちらの都合だったように思う。そんなことも思い出したりした。
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子どもを子ども扱いしない、というか、きちんと向き合ってその思いを大事にする大人の存在が素敵だった。
その反対の大人も出てくるのだけれどね。
大事なことは何か?
そんなことが私の価値観と似ていて、「そうだ!そうだ!」って思いながら読んだ。
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頑固で言葉遣いが悪いおじいちゃんと、おじいちゃんが大好きな孫の少年との心温まる話。
少年のお父さんとは仲が良くないおじいちゃん、お父さんからは、おじいちゃんの汚い言葉を真似してはいけない、病院へも行ってはいけないと言われている。
でも入院している大好きなおじいちゃんに会いたい。
少年は知恵を絞りおじいちゃんに会いにいく。協力してくれる友達もいる。
そしておじいちゃんと最後となる旅が始まる。
少年のおじいちゃんとの楽しかった思い出、大切な思い出は、おじいちゃんに何かをしてあげたいという気持ちでいっぱい。
弱っていく人に何かをしてあげたい、自分にできることは何かを一生懸命考えている少年の姿が優しい絵と共に伝わってくる。
希望をもってほしい思いで天国の絵の記事をおじいちゃんに見せにいくシーンは涙がでます。
切なく、温かい気持ちになる一冊です。
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スウェーデンの児童文学作家、ウルフ・スタルクの最後の作品。この本のために書いてもらっていた挿絵を見るのを楽しみにしていたが、叶うことなく亡くなったそうです。
題名を見ただけでおおよそのストーリーがわかるけれど、それでも、読んでいて一文一文が愛おしく、大切に読みたくなる本でした。
☆おじいちゃんは僕と同じものを見てるわけじゃない、と僕にはわかった。おじいちゃんが見ているのは、以前にあったもの。おばあちゃんが生きていた頃、この海路を何千回と行き来した時に目にしたものだ。顔を見ればわかる。くたびれたしわだらけの顔だけど、そのしわのうしろに、若いときのおじいちゃんがいるんだ。…
子供は、父母だけでなく、祖父母からも影響を受け、年配の方と沢山接することで得るものが大きいと思う。最近は祖父母もまだまだお若い方が多いけれど、自分の違う世代の人が、どんな風に生きて来たのか、何を大切にしているのかなどを知ることは子供にとってこれからの人生を生きていくに当たり、宝物になると思うと改めて思いました。
とても素敵な本でした。他の作品も読んでみたいです。