紙の本
日本には「世間」はあるが「社会」はない
2020/12/30 11:50
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は作家鴻上尚史と学者佐藤直樹が、新型コロナ禍での自粛警察等の問題を踏まえて対談したものである。同調圧力という言葉は、ドキュメンタリー作家森達也がよく使っている。私は、森達也の作品でよく読んでいたので、馴染みのある言葉だ。この本でのキーワードはもう一つ、世間というのがある。日本には「世間」はあるが「社会」はないというのは、よく分かる。森達也をよく読んでいる者にとってはあまり目新しいことはなかったが、納得いくものではあった。
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鴻上尚史氏と佐藤直樹氏の対談が、COVID-19のパンデミック最中に日本で感じている不自由さについて考えるきっかけになった。感染者バッシングや自粛警察をする連中について、日本には「社会」がなくて「世間」に縛られるので「世間」を壊すことは許されないのだと語っている。欧米は一神教に支えられているから「個人」が強い、というところは単純化しすぎではないかと思ったが。
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島国日本特有の「世間」というシステムによる同調圧力を生むメカニズムが、息苦しい世の中を作っている。法のルールよりも強力な「世間のルール」は、犯罪率の低さ、略奪・暴動がないという功の側面を生む一方で、コロナ禍でそのマイナスの側面の本質を浮き彫りにした。
一神教の下個人が確立している欧米と違い、多神教がベースの日本人は、弱い個人が世間に縛られてきた。幸せの方向は「世間」という強力な敵をよく知った上で「社会」とつながる言葉を獲得する、弱い「世間」を複数見つけ、そのいろんな「世間」の間を生きる、という生き方を提示している。
今を生きるために必要な心構え、スキルだと思う。
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頭のいい人たちの会話って疲れる
間に荻上チキさんが入ってくれたらなぁ、なんて思いながら、なんとか読み終えた。
「同調圧力」「世間」
こどもの頃から苦しめられていた。
この苦しみから解放されるにはどうしたらいいのか、その答えを求めて読んでいたわけだが、あっさり過ぎて(そこに辿り着くまでが、長かった分)、もやもや感が残る。
いや、答えは散りばめられていたのだけれど…
ただ、いま生きている中で正体不明の息苦しさ、生きづらさの原因のひとつである、「世間」についての対話と見れば、そういうことかぁ、となる部分もあり、読む価値はあったと思う。
まずは敵を知れってね。
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日本で顕著な同調圧力がコロナ渦でより顕在かしてきたという主張は完全に同意。これをどう打破すればいいか、この本はそこまでは教えてくれないが、今の状況が問題でその原因が同調圧力にあることがわかっただけでも意義深い。敵の正体が分かったので少しは対策に近づけるかもしれない。
自分の中にも内なる同調圧力があるのは事実なので、まずそこから始めたい。
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読み終わって思ったのは、この本はタイトルと目次だけ読んで、「同調圧力」という言葉を胸に刻めばそれで充分、だという事。
鋭敏な感覚と経験で語る作家と知見で応じる学者、といった構図なら読みごたえもあったのだろうが、鴻上氏は自家薬籠中の物に出来てないし、佐藤氏に至ってはさほど鋭敏さを感じない感覚と経験で話してしまっている様に感じた。
それこそ世間話に毛が生えた程度の対談で終わってしまっている。
まえがきの最後に「対談の一回目は、「緊急事態宣言」がつづく五月におこなわれました。」とあるが、続編があるという事?この水準なら買う事はない。
蔦屋書店枚方T-siteにて購入。
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これはよい問題提起の本。実際、この本にあるような”同調圧力”はあるし、よいものではまったくないと思う。それを直視して変えていくことがとても重要だと思う。安易な解決を、それも人に求めるのではなくて、ここで語られているようなことを安直に否定したりせずに、きちんと見据えて変えていくことが重要だと思う。このテーマを扱った本の中で、とっかかりとしてとてもいいと思います。ぜひ読んでみて!
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コロナ禍において同調圧力を科学する本です。
同調圧力を科学して理解することで、自分への圧力を少し軽減できるし、周りで圧力に屈している人達を助けることにもなると思います。本書の肝は、強い世間ばかりに目を向けず、弱い世間や社会を意識することに限ります。そして同調圧力は、自己肯定感と同じように個人差があると思います。私のような圧力に鈍感な人は、一部の圧力には屈してないので、周りの屈している人に勇気と行動変異を与えている可能性があります。
例えば、真夏のソーシャルディスタンスが取れた屋外で、殆どの人がマスクをしている現状、私は異常な光景に映ります。同調圧力の最たるものです。ちゃんと考えて行動できれば、ここでは必要ないと判断できるはずですが、やはり同調圧力の強さです。お互いがお互いを締め付けている。自分達がつくった世間やシステムが、自分達の意思とは関係なく一人歩きして暴走している、そんな現状だと感じます。
逆にマスクをして歩きスマホが、今はなぜか市民権を得ている気もします。同調圧力は法的ルールより重いんでしょうね。本来なら、マスクが必要ない所ではマスクを取る態度こそ、大人のマナーになるべきですが、まだまだ人間はそこまで進化できてないのかもしれません。そんな著者2人の対談に混ざりたくなるような一冊です。
蛇足ですが、さっき見たばかりのニュース、河野行革相「無駄な規制、通報して」「縦割り110番」は、どこか暴走している世間を、遠い位置から補正してくれる期待を感じます。実際の成果はわかりませんが、このような同調圧力の外側で、物事を冷静に判断して暴走を止めるシステムは、必要なものだと思います。
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p31 世間 現在および将来、自分に関係ある人たちだけで形成される世界
社会 現在および将来、全く自分と関係ない人たちで形成される社会
p34 世間というのは日本人が集団となった時の力学
社会 世間
契約関係 贈与互酬の関係
個人の平等 長幼の序
個々の時間意識を持つ 共通の時間意識を持つ
個人の集合体 個人の不在
変革が可能 変革が不可能
個人主義的 集団主義的
合理的な関係 非合理的、呪術的な関係
聖俗の分離 聖俗の融合
実質性の重視 儀式性の重視
平等性 排他性
非権力性 権力性
世間のルール 4つ
お返しのルール,身分制のルール、人生平等主義のルール、呪術性のルール、
相手を身分でしか見ていない 海軍海兵学校一番から成績順に番号がつく ハンモックナンバー
年齢を基準とすれば順番で済むので、ジャッジする能力がなくてもいい 卒業時の成績だけに頼る
キリスト教 お返しの関係を否定して、神様との関係に変えた
香典半返し 1970年代にできた比較的新しい習慣
呪術性や贈与互酬の関係を利用したビジネス
p50 世間の特徴
贈り物は大切、年上がえらい、同じ時間を生きることが大切、神秘性、仲間外れを作れ
外国 非常時に警察が機能しなくなるので暴動が起こる
日本は世間のルールが働く 暴動が起こらない
外国 トイレットペーパー買い占めは起こるが、冷静に諭す人が出てくる(個人がいるから)
ネットで誹謗中傷を繰り返す人 internet troll p67
日本人は、身分制のルールがあるため、他人を信用できるか否かは、世間の中でどういう地位や身分を占めるかで判断してきた(名刺や肩書きで判断)
人を見極める能力がないことが、根拠のない情報に踊らされ、パニックを起こしやすい
p86 山本七平 同調圧力には、水を差すことが有効
じゃんけんが日本人を議論下手にした
イギリスの演劇学校で、みんなが嫌がる課題の順番を決めようとして、じゃんけんを提案したら、イギリス人から、こんな重要な課題を決めるのに、偶然に任せてい平気なのかと言われた
世間話 お互いが同じ共同体にいることを確認しあう作業
「お出かけですか」「ちょっとそこまで」
番組 cool japan
恋人とどこであうか? 日本 会社や友達の紹介など世間 外国は社会であう
忖度 英訳できない
自己責任という村八分
複数の弱い世間に属する
p171 階層に限定された言語である日本語を使う限り、世間に絡め取られる
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会社での息苦しさ、居心地の悪さは同調圧力のせいだったのか。
特に上司や役員との会議で必ず感じる後味の悪さ。
空気を読めという風潮。世間と社会の違い。
忖度という世間のルール。不寛容の空気。
そういう中にいると具合が悪くなる。
会社とは何だろうか。世間とは。社会とは。
個人主義を貫く。世間とはゆるくつながる。
人との濃厚で窮屈な付き合いは避ける。
会社という世間とはもうほどほどにして、別の自分の生きがい、生き心地の良い別の世界を見つけなければ。
残り少ない自分の人生なんだから。
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鴻上さんのAERAの連載など共感するところがあり、日本社会の同調圧力の正体とは?の理解を深めるため購入しましたが正直がっかりでした。
「なぜ息苦しいのか?」というよりは「息苦しいよね、ほんと〜」という感じ。ひたすらお二人が日本社会の同調圧力はこんな場面に出ていて苦しいを冗長に話しているだけと感じました。そこに出てくるエピソードも「えっ!」という新しい発見はなく、そんなことみんな気づいてますよ、というものばかり。欧米社会は〇〇で〜や、〇〇なのは日本人だけだ、という論調があまりにも多く本当にそうなの?と言われたときに根拠がないであろう話が多い。
散々日本人社会が息苦しい話をした後に「じゃあどうすればいいか?」がなくご本人たちはこのような話を多くの人に届けたいというが、「部活や会社では先輩が絶対」「下着や靴下の色さえ指定される学校」のような同調圧力エピソードをみんなに広めて、それを知った側が「あぁ日本は同調圧力の国だから仕方ないんだ」と諦めにかかってしまうのではないかなと。そんな社会にこんなツイートしたら炎上しちゃったよ、が多すぎて、もはや炎上したがってるとしか思えないほど‥炎上することで自分は日本社会とは一線を画しているんだ、みたいな。
日本の同調圧力によるメリットだけを手放しに称賛するつもりもないですし、書いてあるエピソードにも共感はしますが、生産性がなさすぎて全くオススメできないです。本当にがっかりでした。
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良書。
日本は特殊なのに、日本人は自覚していない。
日本には、個人が無い、世間という特殊な世界があるため。
だけど世間は無くせない。なので、浅く複数の世間に所属してうまく付きあう。
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いま読むのに最適な本。
社会と世間の捉え方がおもしろい。
会社というのは一つの強い世間。
サークルや地域の共同体に参加することで
会社や家庭という一つの強力で
狭い世間で支えない。
ホントにそう思う。
会社という世間だけで自分の存在基盤を
支えている人がどれだけ多いか。
人を信用する基準は、
どこに属しているかで判断している。
つまりその世間から外れてしまったら
ただの人になってしまう。
また、自分の属してる世間だけが
自分の唯一の世界だと勘違いしてしまう。
ここで何かあったら生きていけない、
くらいの気持ちになる。
万が一コロナにかかってしまったら
何が怖いかって、死ぬことや周りにうつすこと
それ以上に、会社からなんと言われるか
自分のせいで仕事を止めてしまう、
そうなったら周りからどれだけ
バッシングされるんだろう、と。
そう思わざるを得ない空気。
この本にもあるようにコロナで謝罪会見。
なんでも最初はすみません。
どうしてこんなに謝ってばかりいるのか。
風邪ひいたり、病気になってしまっても
出社したらすみません、
旅行に行くのにもすみません、、
同調圧力に慣れすぎてしまって
自分がその圧力になってることすら
気がつかないのかも。
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忖度、承認欲求‥「みんな仲良しこよし」の文化で息苦しい。
ずっと感じてきたことを、見事に言葉に表してくれた、という印象。
ただし、ではどうすればいいのかという内容は薄い‥
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もう、十数年ほど前になるでしょうか
「同調圧力」という言葉を
筑紫哲也さんの本の中で
「なぁるほど そういうとらえ方が あるのか」
と もの凄く腑に落ちた記憶がある
それ以来
この「同調圧力」を
「言葉」もさることながら
身の回りの「さまざまな事柄」に
ずっと感じ続けている
その感じる度合いが
昨年末来の「コロナ禍」の中では
より強く感じるようになり
ますます顕在化してきている
と思っている
そう感じている中で
手にした本書
きっと 私だけに関わらず
相当数の人たちが
「そうだ そうだ」と
本書を読み進めていることでしょう
何人かの方がブックレビューにも
書かれておられたように
知らず知らずのうちに
自分自身が同調圧力の側に
知らず知らずのうちにたってしまっていることに
触れておられたけれども
ほんとうに その通りですね