紙の本
「母性」とはなにか。搾取するのは誰か。
2021/12/07 21:04
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
母になってもならなくても、女性にはさまざまなレッテルが貼られ、生きづらい。
母になったらなったで、母乳が出るか出ないか、誰かが決めた「母親らしさ」が守れるかどうかで、ジャッジされ、追い詰められていく。経験した人は、この物語の主人公2人に、それぞれ共感できる部分が多々あるのではないか。
未婚で出産し、困窮する福美は、母乳があふれるほど出る。ひょんなことから政治家一家に乳母として雇われ、母乳の出ない政治家の嫁に優越感を抱きながら、生活の基盤を築いていく。一方の政治家の嫁の奈江は、広告代理店で働くバリキャリ。不妊治療を経て出産するが、早産で帝王切開となり、母乳が出ないことを姑に責められ続けている。
2人は実は私立小学校の時の同級生。福美は家庭の事情で小学校を途中で転校した苦労人だが、母乳によって認められる。
一方、何でも努力でなし遂げてきた奈江は、母乳が出ないことで、存在を否定され、追い詰められていく。
対照的なようで、実は二人をがんじがらめにしているのは、母性神話や母乳信奉など科学的根拠のない、世間(男中心社会)がつくりだしたものだ。
まったく交わることのないはずの二人が連帯するラスト。政治的な動きに、警戒する向きもあるかもしれないが、「個人的なことは政治的なこと」。
それで解決ではないが、どこかすがすがしい気持ちにさせてくれる。
なかなかの良作だ。
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ひぇー。ほんとにありそうな世界でゾッとしながら読んだ。こういう政治家一家いそうだし、姑も、旦那も、なんかもう全員気持ち悪い。光ちゃま、よくもまぁまともに育ったなぁ……
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とてもよかった。
冒頭からずっと先の気になる展開で、どんどん読めてしまった。
深いテーマだけど、面白く、腹が立ったり、涙したり、、、
たくさんの人に読んでほしいです。
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序盤に「母乳=高尚・万能」と偏った考えを持つ登場人物がいて、ハラハラした。でも、参考文献のラインナップからよく調べて書いていることが分かり、安心して読めた。
作者インタビューがきっかけで興味を持った。あらすじの内容的にも、自分の生活と重なる分野がテーマだと言う点でも、読むのはしんどいかも知れないと思った。しかし、沢山の問題提起がありながらもエンタメとして楽しめる展開で、あっという間に読んでしまった。
(読んで考えたこと)
1、母性ってなんだろう
血の繋がりがあれば勝手に芽生える訳ではない。育てていく中で、沸いてくるものだと思った。福美→光の母性は、血の繋がりはなくても母乳をあげ続けることで生まれた愛情。
対して、奈江→光は、血の繋がりがあるからこそ離れていても大切だし20年振りでも親子であることを実感できる。
2、母乳の悪用ダメゼッタイ
「母乳=単に栄養を与えるもの」ではない。それ以上の意味がある。親子の愛着の問題も絡むので、母乳を与えることを仕事として扱うのは、リスクがある。
千代が福美や紗羅の人権を無視した行為を金と権力に任せて行ったように、立場の弱い物への搾取へつながるのではないか。たぶん、こういったことは代理母ですでに問題となっていると思う。
3、広まれ正しい知識
作中で奈江が語っているが、努力したから必ず報われるわけではないのが妊娠、出産、育児。私はここにものすごく共感した。
個人のがんばりでは決まらないのに、社会が母乳や出産を神聖視すると苦しむ人が出る。出産方法や、母乳の出で優劣をつける考え方はなくなって欲しい。当事者にしか分からないので(しかも個人差が激しい)、小説をきっかけに多くの人に知って欲しい。
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読みやすい文章だった
希望を感じさせる結末でよかった
互いにわだかまりを持ちながらも最後歩み寄り、未来を切り開こうと行動を起こす展開が良かった
比例で復活のラストに皮肉を感じた
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生後三ヶ月の娘を抱えるシングルマザーの福美。
秘密組織、乳母ネットワーク代表に声を掛けられ
ナニィとして住み込みで働くことになる。
仕事は、母乳の出ない母親に代わり
搾乳するというもの。
自分をいじめていた同級生宅の姑の固執した思い
男性陣のダメさ加減など
読むのにエネルギーを必要とした。
それでも、本作から届けられるメッセージに
励まされる人は多いと思う。
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読むのがきつくなる本
母乳育児に少しでも悩んだことのある人はダメージ受けること請け合い
前半と後半で登場人物が変わっていくところが好きだ
子離れ乳離れは成長には不可欠だし、飲み込まれては不幸になる
しかし渦中だとそこに気がつけないんだよね
千代は未だに渦の中にいるんだろうなあ
光も沙羅も福美も奈江も、みんなそこから出たんだろう
あ、光と奈江はこれから親子をやり直すのかもしれないし、成人として良い距離感を持って接することができるかもしれないけど
母乳育児の話のようでいて、執着とか、自己実現とか、そういうところだった
べったりとした母親であることは意外と期間限定ってことを理解しなくちゃいけないんだよね
そのタイミングで社会と完全に交流を断ってしまうと期間が終わることが怖くなるのかも
でも、おっぱいあげるのやっぱ面白いし可愛いからのめり込みやすい
奈江の離婚後の話はサラッと書かれてるけど、かなり努力してすごーい
嫉妬するよほんとに
でも嫉妬の先にある新しい社会が見てみたい
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母親が子供を産んで育てることのストレスが,母性神話が,母乳至上主義が母親を追い詰める.子供が母親を慕う姿が痛々しく,また母親が子供を愛する姿も切実でそこがこの母親という問題を難しくしているのだろう.そういったことも含めて,男の醜さの象徴とも言える政治家の家での不当な扱いが彼女逹を成長させ.また選挙へと前進させる力になった.女性のあり方に一石投じる物語だった.
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2021/1/15
乳母としてスカウトされた福美。
本屋で立ち読みして、「読みたい!」となりました。
序盤は乳幼児育ててきた人は、一度は言われたことがあるような言葉が並んでいて辛くもなった。
最終的には前向きになれてよし。
母としてしか生きられない女もいるし、
外で働きたい女もいる。
性別だけで括るなんて変だよ。
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この話、なんとも辛い。
政治家に嫁いだ、一般的に玉の輿と思われる結婚で挫折するかつてのクラスメイト奈美。
奈美は子どもを出産したものの、おっぱいが出ない。私もそうでした。
政治家の妻である義母はなんと、乳母を雇う、しかも直接乳房から飲ませる。
それはかつて自分がいじめたクラスメイトで、今はナニィとして働いている福美。
福美自身もシングルマザーで、生活に困窮していたところを闇団体のナニィクラブ?みたいなところ
で雇ってもらう。
意地悪な義母、いやらしい義父、浮気を繰り返す元クラスメイトのオット。
離婚の時、世話になったクラスメイトが弁護士になっていて、彼女に頼み離婚したことがきっかけで弁護士になる。
そしてかつての嫁ぎ先に置いてきた息子、光の20歳の誕生日に会い、彼に選挙に立候補してくれと頼まれる。
乳母を付けられるのは、稀だとしても、このような状況の女性は多いと思う。みんながみんな、勉強して弁護士になれる訳でもなし。
成功したらこうなるけど、なれない人は、やっぱりどうすればいいのか。
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母乳神話から始まり、さまざまな社会問題を盛り込んだ小説。
貧困、シングルマザー、母乳神話、男尊女卑、保育園への偏見、少子化、女性の世話役としての立場…
母親が家を出て行き、自営業の父親に育てられた福美。家を出て学校に通っていたが、望まない妊娠をしてしまう。中絶するお金もなく、目を背けている間に月日は経ち、娘を出産。だが、お金もなく、働きにも行けず、追い込まれていたところ、母乳が出ない人を助ける仕事に出会う。保守的な考えの徳田家の息子に母乳を与え、娘のことはぞんざいに。昔いじめられていた息子(光)の母親(奈江)はこの母乳のこと、夫の不倫が原因で離婚。福美は徳田家に脅されながら勤める…
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面白そうなタイトルに装丁。
期待満々で読んだのだが
なんだか政治的な匂いがしてきて
がっかり。
おもてたのと違った。
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シングルマザーの貧困と仕事と子育ての話かと思いきや、予想外の方向に話が進み、一気読みでした。
いつまでもおっぱいにしがみつかなくて良い国を目指す、いまの日本にも当てはまると思います。あと光ちゃまがまともな青年に育っていて安心しました。
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タイトルとあらすじに惹かれて。
独身やシングルマザー、母乳信仰など現代日本の問題みたいなものが詰まっていてちょっと考えさせられました。
とても読みやすかったのこの作者の他の本も読んでみたい。
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とにかく暗い!
人間の悪いところ全て見せられるような感覚。
お願いだから人の部分をみせてくれー!!!!ってなってくる。
それぞれにひどく切羽詰まっていて、追い詰められて、それにより他者を傷つけながら生きている人たち。。
最後ちょっと好転するものの、本当に悲しくなったー。
ただ、「あぁもう、性格悪すぎ!悲しすぎ!!!」ってなるにもかかわらず、読むのを止められないという不思議!!!