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乳房のくにで みんなのレビュー

  • 深沢潮 (著)
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  • 出版社:双葉社
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みんなのレビュー29件

みんなの評価3.9

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紙の本

「母性」とはなにか。搾取するのは誰か。

2021/12/07 21:04

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る

母になってもならなくても、女性にはさまざまなレッテルが貼られ、生きづらい。
母になったらなったで、母乳が出るか出ないか、誰かが決めた「母親らしさ」が守れるかどうかで、ジャッジされ、追い詰められていく。経験した人は、この物語の主人公2人に、それぞれ共感できる部分が多々あるのではないか。

未婚で出産し、困窮する福美は、母乳があふれるほど出る。ひょんなことから政治家一家に乳母として雇われ、母乳の出ない政治家の嫁に優越感を抱きながら、生活の基盤を築いていく。一方の政治家の嫁の奈江は、広告代理店で働くバリキャリ。不妊治療を経て出産するが、早産で帝王切開となり、母乳が出ないことを姑に責められ続けている。
2人は実は私立小学校の時の同級生。福美は家庭の事情で小学校を途中で転校した苦労人だが、母乳によって認められる。
一方、何でも努力でなし遂げてきた奈江は、母乳が出ないことで、存在を否定され、追い詰められていく。
対照的なようで、実は二人をがんじがらめにしているのは、母性神話や母乳信奉など科学的根拠のない、世間(男中心社会)がつくりだしたものだ。

まったく交わることのないはずの二人が連帯するラスト。政治的な動きに、警戒する向きもあるかもしれないが、「個人的なことは政治的なこと」。
それで解決ではないが、どこかすがすがしい気持ちにさせてくれる。
なかなかの良作だ。

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2020/11/03 17:27

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