紙の本
安楽死・尊厳死・延命拒否の境目
2021/01/26 15:22
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投稿者:チップ - この投稿者のレビュー一覧を見る
実際にあった事件をベースにして書かれたフィクション
後半の裁判に向かう展開はハラハラしながら一気に読んでしまった。
主人公の女医も無防備というか、お人よしなところがあるが、それにしても人間の欲望は恐ろしい。
第一審は負けたが、控訴審に期待を感じる終わり方になっている。
安楽死と尊厳死と延命拒否の境目は何なんだろうと考えてしまう。
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【彼女は善意の名医か、患者を殺した悪魔か――】延命治療の中断を決意した女医、白石ルネを襲った悲劇。現役医師が圧倒的なリアリティで描いた、スリリングな医療小説。
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久々に久坂部先生。 今回のテーマは、延命治療と尊厳死の問題。 それにしても、ルネの周囲の自分の欲と保身のために事実をねじ曲げて生きていこうとする胸くそ悪さに辟易してしまいました。
川崎協同病院で実際に起きた症例、事件を元に、医師によって描かれた小説です。
医療現場ではそれに近いことが起こっているということなのでしょうか。また、 裁判の場面の進行には唖然とさせられました。
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とても面白かった。身内を延命治療なしで看取ったばかりだったので、余計に感じるところもあった。
立ち位置で主張は簡単に入れ替わる。検事が主張する様なケースも皆無じゃないかもしれない。
患者視点で言うと自分の死に方をしっかり考え、残しておくことが大切なのだと思った。
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久坂部作品は発売都度拝読してますが、本作は久々の快心作。実話をベースに善医の善意がまわりの嫉妬や欲望、曲解により翻弄される姿を真摯に描写しており、メディカル小説の傑作だと思います。今作のような問題提起を含んだ優れた人物描写の医学関係小説を今後も上梓されることを願ってやみません。
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クモ膜下出血で意識不明の重体で運ばれてきた、横川達男。
彼の主治医の白石ルネは、横川が、身近な人を苦しみ凄惨な見た目になって死んで行ったのを、自分はああなりたくない、と日頃から訴えていたのを聞いていた。
横川の苦しむ様子に耐えられなくなった家族は同意し、白石は横川を尊厳死に近づけるべく、逝かせようとした。ところが予想外に、チューブを外したところ苦しげな声を出したため、うろたえ、対処法を先輩にも相談し、ミオブロックを点滴で使用する。
新人ナースが、点滴を静脈注射と誤記したことから、殺人事件では?と発展していく。
どこにでも居そうな保身に傾く人間、損得ばかり考えて動く人間、言ったことを翻す人間…
人間不信に陥ったルネは、近づいてきた週刊誌の記者に救われた思いで思いのたけをぶつける。
それは悪意を持った記事に置き変わっていた。
裁判になる時弁護士をつけるのは知っていたが、この場合、患者側につく弁護士と、医療者側につく弁護士といるのは知らなかった。
正しいだけでは裁判は勝てない。
判決とは、裁判とは、尊厳死、安楽死とは。
ここ数年の話題ワードがちりばめられ、考え方は色々だけど、私たちがしっかり死に向き合って考える時が来ているのだろう。
自分は身内を失った時、良い主治医に恵まれたから、医療不信はないが、人を失うだけで十分に辛いのに、それ以上に医療不信にもなったら、人生滅びてしまう。
難しい問題だが、今後の課題だろう、特に長寿すぎる日本では。
実際に起こった話をベースにしてはいるが、読んでない人はぜひご一読を!!
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「尊厳死」と「安楽死」名称こそ知っていれど深く知見は無く、脳死での臓器提供の意思カードを持ち朧げに自分の死はこうありたと思っていた。この患者側の気持ちと生死に関わり治療にあたる医師側は、法治国家の元で其々の思いを胸にその狭間で難しい治療判断をしている事を学ぶことが出来た。
この本を読み終え、何にせよ生き抜く事は前提に万人は死から逃れられない事からその死に対しては当事者の気持ちを第一優先に選択(個人的には安楽死を望む事)が出来る何らかの法整備も日本には必要だと感じた。
白石ルネは脳卒中センターに勤務するカテーテルを専門とする外科医でそのルネの元に患者の横川達男が動脈流破裂のくも膜下出血で運び込まれる。ルネは治療の甲斐なく自発呼吸も困難で多臓器不全に陥り助かる見込みが無くこのままだと悲惨な状態に陥る事から家族に無益な延命治療の中断を説明して合意を得て結果的に尊厳死を実施する。
3年過ぎたある日ルネを快く思わない同僚から当時の新人担当看護婦が点滴投与(尊厳死対応) を間違えて静注(安楽死対応)した看護婦記録を発見して病院相手に出席交渉を開始するもマスコミに発覚して事態が悪転する。その後、ルネは病院側の保身からトカゲの尻尾切り扱い、遺族からは賠償金に目が眩んでの虚偽行為で立場が悪くなり、最後法廷闘争で有罪判決を受ける。その過程でルネの味方となる、弁護士、ジャーナリスト、父親、医師等と理不尽な判決に控訴を決断する。。。
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患者にとっても家族にとっても無益な延命治療を中止する──。その決断を下すことが医師にとってどれほど大変なことかと思う。ぼくたちは「医者は病気を治すのが当たり前、死にかけた人を救うのが医者の義務だ」そんなふうに考えていないか? だが、本当に患者に必要なことはなにかを考えたい。意識もなく、機械によって生かされている状態を、その人は望んでいるのだろうか、と。本書は苦渋の決断を下した女医が受ける理不尽な仕打ちを描く。登場人物はステレオタイプでわかりやすいが救いはなかった。
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助かる見込みのない患者の治療を中止した女医。助けられるものなら助けたい、だけれど助けることができないのならせめて穏やかに終われるように、という純粋な思いやりと医師の使命から起こした行為であるはずなのに、それが非難されるはめになるという恐ろしい医療サスペンス。おそらくこういった医療に携わる人が読めば恐怖するのではないのでしょうか。
もちろん助かるかそうでないかなんて、いくら医者でも100%と断言することはできないだけに、言質を取られて追い込まれていくさまが怖い。もちろん女医を陥れようという外部の圧力もありますが、何も知らない者からすれば何が正しいのかだなんてわからないし、声の大きい意見に流されてしまえば「殺人」だと思ってしまうのかもしれません。しかし延々と治療だけを続けて苦しみながら生き続けることのほうがよほど惨いことなんですよねえ。積極的安楽死を全面的に肯定するのは難しいと思いますが、治療を中止するというのは非人道的とは思えません。
本当に、こういったことが実際に起こらないとは限らないわけだし。そしてもしこれが犯罪とされてしまったら、医師がとことん治療に取り組むことができなくなってしまう……それが本当の意味で恐怖でした。
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久坂部羊さんの小説はいつも考えさせられます。
医療裁判の難しさ、人の気持ちの難しさ。
でも、誰しも自分を守ろうとするのは仕方ないかな?
医療現場が現実には大変な状況になっています。
正にこのお話の様な終末期についての判断をしなければならない場面も多いのではと思います。
患者が自分の親だったら自分はどうしたかと考えました。
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意識不明の重体で運ばれた、横川達男。主治医の白石ルネは、延命治療は難しいと治療を中止。家族の同意のもと、尊厳死に導いた。三年後、カルテと看護記録の食い違いが告発される。白石は筋弛緩剤を静脈注射したというのだ。医療業界を揺るがす大問題へと発展し、検察は彼女を殺人罪で起訴した。保身に走る先輩医師、劣等感を感じる看護師、虚偽の報道を繰り返すマスコミ。様々な思惑が重なり合い、事態は思わぬ方向へと転がって―。
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事実をモデルにしたフィクションということで、まさに医療の現場、上層部の思惑、医師同士の確執、出世欲、さらにはマスコミの実態、などなど、現場の空気感がリアルに伝わってくる物語である。ルネの誠心誠意の治療や患者家族への対応には頭が下がる思いがする。それなのに、主張が全く伝わらないもどかしさと無力感といったら、読んでいるこちらも、歯噛みしながら地団太を踏みたくなるほどである。人の命にかかわることでさえ、身勝手な思惑が事実を変えてしまうこともあるのか、とやりきれなさと憤りに包まれる。公正なはずの裁判でさえ然りである。孤立無援の戦いではなかったことがせめてもの救いだろう。死にゆく者と、送る者、その間に立つものなどのことを、さまざま考えさせられる一冊だった。
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コメディのような負のスパイラル。保身の輩と世間知らずでお人好しな主人公に歯痒さ募る。安楽死と尊厳死。重いテーマだけど、コインの裏表。立ち位置によってどちらもあり。うまい終わり方。
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尊厳死、安楽死、生命の問題は重いテーマである。
肉親の死にどのように向き合ったのかで意見は異なり、そこに正解は無いだろうと思う。
様々な状態で、様々な考えを持つ患者や家族への医師の対応は繊細で辛いと思う。
最近は延命治療の希望をエンディングノートに書いたりするが、必ずしも、そうゆう場合だけではないのが難しい。
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家族に書面にサイン求めない優しい配慮が仇になるのは本当にやるせない。あらゆるリスクを事前説明し、言質を取られないような会話だと知りたいことがわからない。
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脳死状態の患者に対して、無益な延命治療の末路の悲惨さを患者自身にも家族にも回避するため、人工呼吸器の管を抜き延命治療を止めた女医.白石ルネ。3年後内部告発により殺人罪で逮捕され、看護師の裏切りや院長など病院上層部の保身により有罪判決に。医療の不確定要素に目を瞑り、法律的な見解だけで裁判が進む不条理さをみる。消極的に死なせる尊厳死、積極的に死なせる安楽死は日本においては殺人となる。しかし、助からない患者は最初から何もしなければ罪に問われない。不可解な命題だと思う。読み応えあった。控訴審では勝訴してほしい。