紙の本
季語っていいな、ときっと思います
2021/01/05 15:18
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
川上弘美さんは芥川賞作家です。
しかも、現在は芥川賞の選考委員でもあります。
そして、『機嫌のいい犬』という句集も出していますから、俳人でもあります。
つまり、この本は俳人川上弘美さんの、それでいて単なる俳句好きの人でもある川上さんの「季語」についてのエッセイなのです。
川上さんが俳句をはじめるきっかけは1994年に第1回パスカル短篇文学賞に応募した頃だそうですから、小説を書いているのとほとんど同じだといえます。
この本では川上さんの好きな季語とともにその季語がはいった俳句が収められています。
なかに川上さんの句も数句収められています。
「はるうれひ乳房はすこしお湯に浮く」、これは川上さんが俳句をつくりはじめた頃、すぐに使いたくなった季語「春愁」がはいっていて、春のぽわんとした気分を感じるいい句だと思います。
この本では「季語」の話に紛れて、川上さんの子供時代の話や大学生の頃のこととか、川上弘美ファンにはうれしい話がたくさんあります。
私がほほっーと思ったのは、「針供養」という季語のエッセイで、その中で川上さんは自身の離婚について書いていて「離婚にあたって、本棚のほかはほとんど何も夫のもとから持ち出さなかった」と綴っています。
ただ唯一この別れた夫の母であった人が使っていた裁縫箱を持って出たといいます。
エッセイでありながら、まるで川上弘美の短篇小説を読んでいるかのような、味わい。
それは「俳味」に近いかもしれません。
投稿元:
レビューを見る
美しい季語、美しい俳句。
日本語の一つひとつを噛み締めて、移りゆく全ての季節を味わいたくなりますね。
投稿元:
レビューを見る
+++
96の季語から広がる、懐かしくて不思議で、ときに切ない俳句的日常。
俳人でもある著者による初めての「季語」にまつわるエッセー集。
散歩道で出会った椿事、庭木に集う鳥や虫の生態、旬の食材でやる晩酌の楽しみ、ほろ苦い人づきあいの思い出、ちょっとホラーな幻想的体験など、色彩豊かな川上弘美ワールドを満喫しながら、季語の奥深さを体感できる96篇。名句の紹介も。
+++
季語の選択、それにまつわる思いや、懐かしい昔の出来事などのエピソード。どれをとっても著者らしさが満ち満ちていてうれしくなる。書かれていないあれこれまで想像してしまって、ついつい頬が緩んだり。紹介されている句も、季語の使われ方がわかりやすく、情景が思い浮かぶものばかりで愉しい。大切に読みたい一冊である。
投稿元:
レビューを見る
『家守綺譚』書いた人かと思った。だっていえもりきたんの実話バージョンだったから。この本書いた人ならあの神作品書けるなー、と感服致した。
それでこれ書くにあたり、調べてみたら、作者全然違ってた カオス
川上弘美、川上未映子を混同していた事実をつい最近知り(こんな綺麗で若い人が50過ぎのはずない!そこで川上という有名女性作家が二人いることを知ったのは、昨年末…冷汗 村上違いみたいなもんかと自分を慰めた)
その上、梨木香歩まで混同していたとは、、、
いやー、これは現代作家好きにボコられても仕方ないやつ
それはさておき、この本を読んで、外国の凄い人が日本文学に惚れ込んで日本に住んじゃう理由がわかった。あはれ の世界が開いた ハローニューワールド
投稿元:
レビューを見る
静かにゆったりと読みました
知らない季語や俳句に触れることが出来て良かったです
こんなエッセイもありですね
投稿元:
レビューを見る
好き好き、この手の本。
著者の好きな季語とそれにまつわるエピソードがリズムよく語られている。
著者特有のそこはかなとないユーモアが随所に散りばめられていて楽しく読了。
好きな俳句
・風呂敷のうすくて西瓜まんまるし
・せり・なずな 以下省略の粥を吹く
投稿元:
レビューを見る
無条件にこういうのが好きなので、いつでもパラパラしていたい。
ステキにハンドメイドの連載だからか、少し「ご婦人」感があるのは気にしすぎ?
とまれ安定の著者、気の抜けた、でも美しい季語にまつわるエッセイ。
投稿元:
レビューを見る
ことばの力を感じる本。暮らしから生まれた季語が愛おしくなるような…。見開きで読み切れる短い文章だけど、気づきがあっておもしろい。
投稿元:
レビューを見る
本屋で、俳句のコーナーを歩いていると、優しい色使いのこの本を見つけた。偶然の出会いだったが、ページをパラパラめくると、興味のあまりなかった、季語というジャンルに惹きつけられて、購入。
なんだか、柔らかな太陽の光を浴びながら、コーヒーや紅茶を片手に読みたい本。
季語なんて、学生時代は暗記するものとしか思えなかった自分にとって、季語にまつわるエピソードは、全て新鮮。
言葉ひとつにも、思い出が結びついているように、季語にもそれがある。
『それぞれの持ち味を、差別せずにただありのままに良しとする。それが季語の精神』(P174)
曇り空のどんよりとした雰囲気や、無造作に生えた雑草。それら全てを、「良いもの」という視点から眺めてみる。まずは身の回りから。
そうすることで、なんのことのない日常も、喜びに満ちたものになるのかもしれない。
いつまでも読んでいたいエッセイでした。
投稿元:
レビューを見る
『すてきにハンドメイド』というハンドメイド雑誌に2012年から2020年まで連載されたものをまとめた、季語にまつわるエッセイのような本。
ひとつめの『日永』にある川上さんの言葉がうつくしい。『ガラスケースの中のアンティークのように眺めてきたいくつもの季語を、自分の俳句にはじめて使ってみた時の気持ちは、今でもよく覚えています。』
『ガラスケースの中のアンティーク』。
なんだかわかるなあと思った。ビロードの敷かれたガラスケースの中から古いブローチをそうっと両手で取り出すような心持ち。窓から射す光を受けて鈍く光る金属とキラキラと光を跳ね返す宝石。
プレバト!が好きで毎週欠かさず見ている。夏井先生はよく、季語をたてる、とか季語の力を信じる、と仰る。俳句における季語の重要さをはじめて知った。なんでもいいからくっつけておけばいいわけではないのだ。だってガラスケースの中のアンティークだから。つけるのならばそれ相応の場所が必要なのだ。
追記
2021年3月14日放送のラジオ番組メロディアスライブラリーで川上弘美さんの『センセイの鞄』が紹介された。
最後に川上さんとともに芥川賞の選考委員をされている小川洋子さんが、お二人が共通してアンティークのブローチがお好きだと、川上さんに会うたびにどんなブローチをされているか楽しみなのだとおっしゃっていた。
投稿元:
レビューを見る
筆者の私生活が垣間見えるエピソードが多く、楽しく読了。
季語やそれに関する解説がわかりやすく、勉強にもなりましたが、それにまつわるエッセイがとても良くて。
お酒のおつまみをチャチャッと作って、呑んでいる様子など、力が入っていないけど、かっこよくて、お料理上手なんだろうなぁと。誰かに見せるためとかじゃなく、ゆったりと自分のために何かをして、時間を使っている様子が潔くて憧れます。
時折、挟み込まれる「息子たちごめんよ」というフレーズが出てくる、子育てをしていたころのお話や、庭の手入れを5分で辞めて部屋でお酒を飲む話など、一歳の子どもの育児で髪を振り乱す毎日の私には励みになりました(笑)。
あと、個人的に好きだったのは「針供養」。別れた元夫のお母さんのお話。
投稿元:
レビューを見る
図書館で借りたもの。
行きつけだった居酒屋から、東京の四季おりおり、すこし人見知りな作家の日常まで。川上弘美ワールドを満喫しながら季語の奥深さを体感できる、俳句エッセイ。
季語と、その季語が出てくる俳句が紹介されている。
季語や七十二候とか、季節を表す言葉が好きです。
子供の名前をそこから付けたりとかいいよね。
(息子の名前は季語ではないが…)
春の季語の“朝寝”が好き。
花といえば桜、月といえば九月の月のことっていうのは知らなかったなぁ。
いいなと思った俳句
枝豆や三寸飛んで口に入る 正岡子規
せり・なずな 以下省略の粥を炊く 池田政子
文字数が少ないから、短歌よりも作るのが難しいな~。
投稿元:
レビューを見る
弘美さん素敵。弘美さん面白い。と文面に突っ込みを入れつつ時々爆笑や微笑をしつつ読了。
いやぁ俳句の本?でこんなに楽しませていただけるとは、さすが川上弘美さん。文章がとっても美味しい。言葉の選び方が本当に素敵。
俳句をモチーフにしたエッセイ集ですよね、と思いつつ一応ジャンルは俳句?
俳句って略しすぎてて解りにくいな難しいなと感じることが読んでいて多いのですが、ここに紹介されている句はエッセイを読みつつのおかげか、絶妙な句のチョイスのうま味なのか、とっても面白く解りやすいと感じます。何なら、俳句やってみようかなくらい思ってしまうくらい楽しみましたね。
装丁も和風ながらなのに色使いが淡くてメルヘンな感じ。時々差し込まれているイラストがまた味わい深くて、手元に置いてつまらないことがあった時なんかに手軽に読んで笑わせてもらいたい感じです。
「濁酒」は酒飲みには身に覚えの有りすぎる一篇。
酒と肴がある限りそれを手前で止しておくと言うのはなかなか難しいんですよねぇ…酔っぱらっちゃうと尚更…
読みながら飲みたくなってしまいました(笑)
投稿元:
レビューを見る
1つの季語とその季語を使用した俳句で2ページ、
96の季語にまつわるエッセイ。
ぱっと読んでぱっと光景が目の前に広がるような
俳句が多かったです。
ざっと読んで川上さんはとても正直な人なんだなぁ
という印象。もちろん好印象。
ことばを取り上げたエッセイは大好き、なものの
未だ『大きな鳥にさらわれないよう 』を積んでいて
川上さん初読みの一冊になりました。
図書館本。文庫本派なので文庫本になったら
きっと買って再読します。楽しみです。
投稿元:
レビューを見る
川上弘美さんが季語というものの存在をはじめて知ったのは、大学生の頃だったそうです。
大学の図書館で『歳時記』を発見し狂喜したそうです。
それ以来、俳句をつくることはなくても、ずっと歳時記を愛読してきたそうで、数十年たった頃から俳句を作るようになったそうです。
私が『歳時記』を知ったのは、文学好きな伯母の家で見たものが最初でした。中身はちらっと見ただけなので、そのうち図書館で探してみようかと思います。
春、夏、秋、冬、新年の順で冒頭に季語が載っていて、川上さんのエッセイ、その季語を使った俳句が載っています。
今は五月になったばかりで、俳句の世界では夏、気分的にはまだ春なので、春、夏の季語、俳句に魅かれました。
春
ものの芽
物の芽のほぐれほぐるる朝寝かな 松本たかし
朝寝
あらうことか朝寝の妻を踏くづけぬ 脇屋善之
春菊
春菊や袋大きな見舞客 石田波郷
春愁
はるうれひ乳房はすこしお湯に浮く 弘美
夏
薄暑
朝すでにほろびみひかり湖薄暑 山上樹実雄
更衣(ころもがえ)
衣替えて居て見てもひとりかな 一茶
雷
雷が落ちてカレーの匂ひかな 山田耕司
秋
花野
花野みなゆれ初めたる通り雨 高木晴子