0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちぃ - この投稿者のレビュー一覧を見る
収録された7作はどれも、科学技術がうんと発達した未来の話。しかし表題作では未だ人類は光の速度に到達できていない。高次元ワームホール(通路)で一気に近づける惑星がある一方で、非効率なワープ航法でしか行けない遠い宇宙は航路廃止になってしまった。夫と子の移住先へどうしても行きたい老科学者の決意が切ない。
1編目の「巡礼者たちはなぜ帰らない」は、言葉だけだからこそ生まれた味わい深さ。作者の世界観に一気に引き込まれた。
韓国発、柔らかな読後感のSF短編集
2020/12/23 23:03
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
ワープ航法が確立された未来、故人の思考回路が保管できるようになった未来、感情を物性化できるようになった未来。現代よりも何かが進歩した世界の中で、充たされない何かを抱える人々を描いたSF短編集。先進技術が、切なさを浮き彫りにする。
先進技術のアイデアに溢れているけれど、あえて詳しく描かず、むしろそれを享受することなく何らかの理由で「流れ」に乗れなかった少数の人々を描いていて柔らかな読後感。カシワイさんの表紙画の雰囲気ともマッチしてる。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
イチオシはというと、スペクトラムです。韓国作家によるSF小説の短編集ですが、なかなか、ひねりは、作ってあります。また、170歳の女性が、宇宙船を待つというのも……ね。ただ、ツッコミ入れるならば、こうはいかないでしょみたいな結末が多々……
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ニックネーム - この投稿者のレビュー一覧を見る
韓国の若手作家の作品集です。2010年代後半から中国SFが界隈のみならず一般にも流行している現代において、こうした短編集で日中以外の作家も読めるようになると嬉しいですね。あと、genesisシリーズの表紙デザインが踏襲されているので、genesisの横に並べると楽しいです。
投稿元:
レビューを見る
弱者やマイノリティといったテーマを、SFという舞台に見事に落とし込んだ小説。人のこころの揺らぎや哀しみがとても繊細に捉えられているうえ、温かい筆致のおかげで重たく哀しいテーマもすんなりと読める。理不尽だらけの近未来は果たして私たちの未来なのか、変えられる未来なのか。
投稿元:
レビューを見る
何かを手に入れる前と失ったあとでは決して等価ではなくて、あったことの余韻を大切にする人たちのものがたりだな、と感じた。
投稿元:
レビューを見る
80~90年代にたくさん生産されたようなちょっと懐かしい感じ、それから時代的なものじゃなく感覚的にもノスタルジックなSF短編集だった。比較対象が少ないのであれですがテッド・チャンほどの精密さ、精巧さはないけど人の温かみが感じられる手触りも柔らかくて触り心地の良い、内容的にもわかりやすい作品たちだった。表題作よりも『スペクトラム』が一番好みだったんですが何気なく帯観たら『はちどり』のキム・ボラ監督で映画化って書いてあってエッ観たいじゃんそれは…となりました。ルイのデザインをどうするのだろう。
『スペクトラム』はとにかく最後の1ページに胸をぎゅっと掴まれる。ルイが残した数々の美しい記録たちのなかに紛れ込んだ彼の一言はどうしようもなく、切なくてそして嬉しい。
そして表紙が可愛い。
投稿元:
レビューを見る
わたしたちはたどり着くところを知っている。
ふんわりとした表紙に惹かれたSF短編集。解説で指摘されているように、マイノリティに焦点を当てている小説でもある。今はまだない未来の技術を描きながら、とても身近な話に思えるのは、登場人物たちが未来の人であるにもかかわらず、同じように悩み、考え、動こうとしているからではないか。
「わたしたちが光の速さで進めないなら」今はもう行くことのできない惑星へ、とうに亡くなった夫と子どもが眠る惑星へ、渡航する船を待ち、コールドスリープを繰り返してきた女性科学者。彼女のステーション占拠をやめさせ、ステーションを廃棄する仕事に来た男。交流に漂う優しい悲しさと最後の旅に出る科学者の強さが、満足感をもたらすエンディング。
「館内紛失」データとして保存されているはずの母にアクセスできない。図書館をモチーフに書かれたこの作品は、母になること、『82年生まれ、キム・ジヨン』でも描かれた女性の生き方を問う。最後のセリフは同情か、絶望か。
「わたしのスペースヒーローについて」選ばれたマイノリティとして非難を浴びながら訓練に耐え、最後に任務を投げ出して海に飛び込んだ宇宙飛行士。彼女を慕う主人公は後に続く宇宙飛行士として身体を改造し宇宙の果てを見るミッションに挑む。憧れた人はどうして宇宙ではなく深海を選んだのか。世間の期待や責任から自由になる選択をしたジェギョンおばさんは、ガユンだけでなく、私のヒーローにもなった。
投稿元:
レビューを見る
サイエンスノンフィクションだと思って手に取ったら、純粋にSF作品だった。今時のSF作品をぜんぜん知らないこともあって、とっても楽しく読めた短編集だ。当然だけど最新の科学技術を背景とした物語で、人(それも魂)をデータ化してアーカイブするなんて、昔にはなかった設定だよね。なかで「感情の物性」がお気に入り。どうやら作者は、人の感情と物質とのつながりや関係性を扱うのが好みみたいだ。この作品が初の上梓らしく、これからが楽しみだ。
投稿元:
レビューを見る
この本と作家の方を知ることができて、読むことができて幸運です。
どのお話も、まなざしがとても優しい、そしてすごく面白かったです。
自分が特に好きなのは、
巡礼者たちはなぜ帰らない
スペクトラム
共生仮説
館内紛失
中でも館内紛失は、主人公にとても共感して、読んでてたまらなかったです。
もっとこのキム・チョヨプさんの作品や、その他の韓国女性作家さんの作品を読んでみたいと思いました。
投稿元:
レビューを見る
SFというジャンルが持つ孤独さってどんなところからくるんだろう。
遺伝子操作、ファーストコンタクト、深宇宙…
新しい技術で世界が拡がれば拡がるほど、喜びの一方でまた新しい孤独がうまれ、またそれを乗り越えていく。
いやあ孤独だねえ、くしゃみしてしまうな。
投稿元:
レビューを見る
『はちどり』のキム・ボラ監督の次作原作ということで。
やわらかい感性で描かれた、あたたかいSF集。
「スペクトラム」どんな風に撮るのかすごく楽しみだけど、「館内紛失」も似合う気がした。
それにしても、韓国、層が厚すぎる……
投稿元:
レビューを見る
地球外生命体を、異物ではなく他者として捉える感覚が新鮮で、繊細な描写が美しかった。
「わたしのスペースヒーローについて」
オリンピック選手を見ていて苦しくなることがある。その感じを思い出した。
国中からの過剰な期待とプレッシャーと、掌を返すような極端な反応。
国のお金が注ぎ込まれていようが、努力による成果は本人の所有物だと思うので、
自分のためにそれを使おうとしたジェギョンは
私にはとても正しい姿に見えた。
投稿元:
レビューを見る
SF読むと認識が拡張された気がします。日々理解できる範囲が狭かったと。宇宙人との対話が言語でなく色彩だったなどなど。なぜ発話だけがコミュニケーションだと思っていたのか、そういう気づきが面白いです。
投稿元:
レビューを見る
28.
これがSF小説か、大好きになっちゃった
不思議な感じではなくて
とても現実味がある切ないお話が多い印象だった
館内紛失を読んでボロボロに泣いてしまった
私を産む前のお母さんが愛していたもの
子供や家庭にまつわるものでなくお母さん自身のもの
(私はお母さんと仲が良い方だけど)
そんなものがあるかと思い返しても
ぱっと思いつかなくて
お母さんは家庭に全てを捧げているような気がして
びっくりするくらい泣いてしまった
お母さんは私が生まれる前のことをあまり話さない
実家に帰ったら聞いてみようと思った