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リベラルという概念は、19世紀以降から普及し始め、当初は経済的自由主義としての側面が強かった。20世紀に入ると文化的な側面も加わり、21世紀以降の現代リベラリズムは、個人の価値観、ジェンダー、人種など幅広く結びついて大きな変容を遂げている。
個人的には排外主義との関係と、日本におけるリベラリズムが面白かった。
前者に関しては、リベラル・左派政党のジレンマや、不安定な雇用、さらにはグローバル化が進むにつれ、排外主義勢力も同時に強まっている。リベラルは排外主義に対抗できるのか今後も注目したい。
後者は、欧米のリベラリズムと結構かけ離れているなあという印象。欧米では福祉、移民問題、グローバル化という点がフォーカスされる一方で、日本では平和主義、安全保障としての文脈が強い。戦後から欧米と日本では多くの共通点があったにもかかわらず。政治勢力としてのリベラルが違った道のりを辿っていったのは興味深い。
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なかなか堅いが見通しがよくなる本。
「思想史家のリチャード・ベラミーは、1870〜1913年にイギリス、フランス、ドイツなどで現れた思想を「倫理的リベラリズム」と呼んでいる。この時期の思想は、社会主義と異なり市場経済を肯定する一方で、「自由」をたんなる指摘利益の追求と結びつけるのではなく、個人の尊厳や道徳的発展と結びつけた。社会とは、たんなる私的利益の集合ではない。それは共通の目的のもとに結びついた道徳的集合である。個人は社会の中でのみ自己の能力を発展させ、自由や自律を獲得する。自由を実現するためには、国家がすべての個人に能力の発展の機会を保障しなければならない。本書では、このような特徴をもった世紀転換期の新しい思想と運動を、まとめて「リベラル」と呼ぶ。」(p.15)
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現代のリベラルは「すべての個人ご自由に生き方を選択できるよう国家が一定の再分配を行うべき」と著者。大きな政府は新自由主義、リバタリアンから攻勢を受けグローバル化、民主主義を体制原理として認めない中国の台頭で厳しい状況。労働環境変化により定形的業務労働者はポピュリズム化し知的労働インテリ層が支持者のリベラルに明日はあるのか。
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個人の尊厳と自律、価値の多元性、法の支配がリベラルの中核をなすものだけど、長く日本ではリベラル=革新ととらえられてきた。そして政治の場では破れ続けている。
でも政治手法としても、復権の道は残されていないだろうか? 現代社会を見渡すと真っ暗な気持ちになるけど。そしてこんなことを言うのは嫌いだけど、人は動物じゃないのだから。そんなに市場が大切だろうか? とはいえ好んで貧乏暮らしはしたくないしなぁ。豊かさの指標を物理的なものから変えるのは難しいよね。
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1年前に発刊された本であるが、基本的なところを指摘しているのでこれからますます読まれていくことであろう。
最後に日本についてのリベラルが書かれており、自由主義的伝統の弱さと1990年代以降の政治により、正規雇用と非正規雇用が分断され、政治への支持ではなく、極右と極左による排外主義が台頭するとしている。
そうした兆候はますます大きくなっている。
リベラルとリベラリズムの違い、リベラルの変遷なども丁寧に書かれているので、リベラルという言葉を卒論で使うには欠かせない1冊であろう。
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田中拓道『リベラルとは何か』読了。
リベラルな価値観に基づいてマイノリティ支援の政策を拡大するほどに"リベラル"であった大衆が自身が受益できないことで不満を募らせ離れていくという「リベラルのジレンマ」は日本はそれ以前という感じもあるけどまさに困難であるなと。そして、社会福祉制度の受給対象を細かく分断すればするほど、受給者への世論の反感は高まるってのは日本における生活保護叩きや行政の水際作戦、コロナ対策の事業者や子育て世帯への給付金のあれこれを思い返しても日本の現在進行系の問題なんだよな、と。
しかしながら、いまや日本もそうだけど新自由主義的政策をとった国家はいまやワークフェア(社会福祉を提供する代わりに徹底して労働させる)国家に向かってるってのは経団連が牛耳ってる以上そうなってしまうよなと。われわれはいつまで都合のよい駒であり続けるのか。
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リベラルがどのように形成され、どのような挑戦を受けてきたかを知ることが出来た。
日本はやっぱりリベラルの歴史が浅いね。
アメリカのリベラルとヨーロッパのリベラル 大きな政府 小さな政府
完成へと向かう存在としての人間 ミル
17世紀 古典的自由主義 ロック 「統治二法」自然権 アダム・スミス 「国富論」
19世紀~20世紀 自由主義からリベラルへ 幅広い分配 振興中産階級 リベラルコンセンサス 戦後 ケインズ主義的福祉国家 マクロ経済政策 ニューディール
1970 文化的的リベラル 脱物質主義的価値観 権利運動 学生運動 自由の両義性 担い手の不足
1980 第三次産業 ネオリベ 新自由主義 フリードマン 「隷属への道」 個人に平等な機会を マネタリズム サッチャー レーガン 歳出削減 金融転換 ウィンブルドン現象 トリクルダウン
リベラル リバタリアニズム リベラル 保守 工場 事務労働者 専門職 再分配 市場
1990 グローバル化 ギグエコノミー インサイダー アウトサイダー 新しい社会的リスク
ワークフェア競争国家 人への投資 底辺への競走
現代リベラル ロールズ 「正義論」 無知のベール 機会均等 格差原理 事前の分配 基本財 運の平等
EU戦略 マタイ効果
2000 排外主義ポピュリスト グローバル化福祉排外主義 リベラルのジレンマ 福祉制度の選別性 福祉の寛大さと排外主義 普遍主義的アプローチ インサイダーとアウトサイダーの分断の縮小
日本のリベラル 天賦人権 自由主義伝統弱い 1980 仕切られた生活保障 公的支出最低 日本型福祉社会 企業と伝統集団 90年代 バブル崩壊 格差社会 90年代後半 リベラルの使われ方 民主党 コンクリートからヒトへ 離散集合 安倍晋三 ワークフェア
財政赤字 高齢化 新しい社会的リスク 格差の固定