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大人はみんな頼りにならない。最も身近な大人である家族が一番頼れない。そんな家庭て育った山吹の子供時代から大人になるまでを描いた物語。
大きな夢ばかりを追いかける祖父、真偽不明の物を売る店を営む祖母、浮気をしている父、亡き子が忘れられず生きているかのように暮らす母。
姉の紅はそんな家族に怒りを抱えやがて家を出て行く。
誰からも前向きな愛情をかけてもらえないまま大人になっていく山吹の姿が読んでいて寂しくなる。
それでも小さな幸せを手にする姿にホッとした。
家族ってなんだろうと考えた作品。
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次男の不慮の死で母は空想の世界に生き、父は愛人に逃げ、長女の紅はそんな両親に反発し、家族の心が空中分解してしまった羽猫家。
母の世界を守るために長男の山吹がつく嘘がこの上なく優しい。
そんな山吹の胸を抉るような憎悪が剥き出しになった母の雪乃の心の叫びが綴られた手紙は残酷だ。でも、その手紙を結局一度も息子に出さなかったのは彼女の中にわずかに残っていた母親としての愛情に思えて仕方なかった。
様々な登場人物の言葉に乗せて語りかけてくる寺地さんのメッセージは、ままならぬ現実に苦しむ人の気持ちを楽にしてくれるだろう。
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羽猫山吹(はねこやまぶき)は小三、8歳。2歳上の姉、紅がいる。2歳年下の青磁が事故で死んでしまったことで、羽猫家は特に大人が壊れている(もともとちょっと変わっている人も)。五つづつ歳を重ねながら章が進む。羽猫家の大人は頼りにならない。その環境で強く生きられない山吹のちょっとずつの成長が語られていく。嘘つきだけど、憎めない面々を、愛しく綴られた物語。
弱かった山吹が少しずつ意志を持ち、自分の気持ちを表現出きるようになっていく様子が気になって、一気に読んだ。
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みんな自由で家族なのにバラバラで、みんなと居るのに孤独を感じる。何だか、自分の家族のことではないかと思ったくらい…(全然違うけど)
羽猫家のひとびとが抱える問題、彼らと交わるひとびとの問題、すっきり解決とはいかないし、他人が抱える何かにズケズケと入り込んだりもしない。どちらかと言うと、時間が解決していくということが多いのかもしれない。
だれど、良くも悪くも影響し合って、進んでゆく。
寺地さんの本を読むと、何となく、ダメな自分、弱い自分が許されている気がする。おばあちゃん、自分の祖母を思い出して、好きだなぁと思った。
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主人公の名前は「山吹」名字は「羽猫」
青磁を亡くしてから
父は不倫、母は架空の世界で生きる
祖父は嘘つきと呼ばれ
姉は家族に反発
まともなのは祖母
反発しあいながらも家族の歴史を重ねていく
羽猫家族のいく末と山吹少年が大人になるまで
ラストの遊園地の場面が良かった
ありのままを受け入れる家族
これはこれで凄い
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この本は4日で読み終えてしまった。まぁ、面白かった。文章に緊張感があり、次どうなるのかと?
先の内容が知りたくなる小説だった。
寺地はるなさんの小説は初めてだったけど、もう一つ読んでみたい。
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寺地はるなさんは『大人は泣かないと思っていた』に続き2作目。
舞台は佐賀県の架空の町 塩振町。
羽猫家で長男として生まれた山吹の小学生から30年間の物語。あらすじで思っていた程、風変わりな家族と感じず、私にはそれなりに普通の家族のように思えた。ただ、家族といえども一家には大人も子どももいる。本作は、山吹や姉の紅といった子ども目線で進むので、そこには大人には見えない不安や戸惑いが描かれている。それ故に、既に大人になってしまった私には(半分位は大人になったことを言い訳にしているのかもしれないが)、気付かなかったことや、見過ごして来たことを詳らかに綴られているような作品だった。
家族は様々だし、それは家族といえども一人一人の人間が自分の物語を懸命に生きているのだから至極当たり前のことだろう。時には自分や誰かの為に『嘘』をつくことが必要になるかもしれない。
作中での山吹の恋人頼子目線の場面で
「言葉の裏に隠された嘘と真実の割合をつまびらかにするために躍起になる必要はない。」とあった。
様々な『嘘』が一つの鍵となる本作だが、誰でも嘘はつく。少し大袈裟だが、誰しも時には生きるために嘘が必要になることもあるのだと思う。
中でも特に印象に残ったのが、母 雪乃が山吹にずっと出せないでいる手紙にしたためた心の声を吐露するシーン。
これは凄まじかった。
脱力して放心しそうだった。
読み手としては、このシーンがあって良かったと思う一方で、母親の弱さ故の残酷さに、この返事が山吹のもとに届かずほっとした。時が経てばまた雪乃の思いも変わると信じたいと思った。
寺地さんは『嘘』を善悪で表現するのではなく、ただ介在するものとして扱っている。解決したり糾弾するでもないその新鮮さは、読み手に否応なく人間のありのままの姿を見せているように感じた。そして、そのありのままを受け入れることも時には大切なのだと教えてくれる作品だった。
以下、印象に残ったフレーズ
かかわることはできる。寄り添うことも。
どうしてもわからないことは、わからないまま受け止めておくこともできるのだと、大人になってから思うようになった。わからなくても、愛せなくても、その存在を認めることはできる。
あきらかにまちがった選択をして窮地に立たされた人間に「自分なら、こうする」「そんな選択はしない」と言い切るのは、気分の良いことだ。だって自分はその渦中にいないし、いくらでも冷静な判断がくだせる。安全な場所から他人の選択に口を出すのは、恥ずべきことだ。
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みんな信じたいものを信じて、何が真実だとしても自分の都合のいい解釈で生きていく。
例え「嘘」だとしても誰にも迷惑をかけないのなら、それで生きていけるのなら、それでもいいんじゃないかと思えた。大人になったらきっと分かることも増えるだろうと。
「この世の中は役に立つものだけでは出来ていない」本当にそうだと思うし、そう思いたい。
家族の形は人の数だけあるということを思い知らさせる作品。
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読者として浅いのかもしれないけど、やっぱりお母さん嫌いだ。
紅とおばあちゃんぐらいしか好きになれる女の人いなくて、ちょっとずつ苛々しながら読んでた。
だからかな子を拒否するシーンはちょっとすっきり。でも千里さんの近くに置いておくの嫌。
文章はするする読めるけど、登場人物に引っ掛かるせいで純粋に楽しめなかった。私の力量不足なんだろうな。
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嘘をよくつくお爺さん、嘘で母に寄り添おうとする山吹、嘘の世界に縋ろうとする母。
一見優しい嘘が、本当は人を傷つけていたり、軽くついた嘘が人を和ませたりする。
嘘もつかいようというけれど、それを感じる作品だった。
私は頼が大好きだ。
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寺地はるなさんの作品は好きなのでこれで7冊目です。
事故で亡くなった幼い息子の死を受け入れられず空想の世界で生きている母、
愛人の元へ逃げる父、それに反発する姉。
思い付きで動く祖父、唯一まともな祖母。そんな家庭で育った主人公の山吹。
主人公の山吹を中心として幼少期から大人までの破綻していた家族を描いた物語。
山吹が幼少の頃を描いた部分は子供ということもあって、
家族の言っていることに子供らしくぼんやりと思っていたことだったり、
おばあさんの言っていたことに納得するかのように
子供なりに理解していっている様子があどけなかったですが、
それと並行して母が自分に振り向いてくれなかったということが
とても寂しいというのがひしひしと伝わるので切なさも感じました。
それが山吹だけでなく姉の紅もあり、父も母の現状に受け入れることが
出来ずに息を抜ける場所へ逃げてしまったことが何とも言えない気持ちになりました。
母親は自分のお腹を痛めて産んだ子供だからこんな気持ちや行動になってしまうのかとも思いましたが、
それには深い訳があったと思うとやりきれない気持ちになりました。
特に母親から山吹に宛てた手紙は冷たくて、
自分が子供だったら今後立ち直れそうにない文面でした。
けれど人間というか、家族というのは月日を経るごとに
成長したり、進化をしたりして気持ちなども変わっていくこととなり、
山吹も何処か後ろ向きだった心も徐々に前向きになって
自分なりの幸せを掴むことが出来てほっと出来ました。
文中にあった「みんな年を取った、いやな気分にはならなかった。
それだけの時間を生き延びてきたのだと思った。
美しくも、絵になる写真でもなかったが、それでも良かった。
自分たちのそのままの姿が、ただうつくしとられている。」
というのがこの作品を凝縮している部分だと思いました。
家族だから本音を言えなかったり、嘘をついてしまったりして
しまうと思いますが、それが形を変えて最終的には
これで良いと言える家族になれるという未来があるから
家族というのは良いものだと思いました。
作品の中所々で祖母が話す言葉がどれも印象的でした。
中でも「自分以外の人間のために生きたらだめ。」
寺地さんの作品は心が温まる作品が多いですが、
今回も同じく背中をそっと押してくれるような
言葉が沢山詰まっている素敵な家族の物語でした。
タイトルだけを見ると犬と猫の物語だと思いましたが、
最後に分かってすっきりとしました。
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私も親と折り合いが悪かったので、なんともいえない気持ちで読んだ。
自分自身がアラフィフになって改めて感じることは、親だからって皆んなが大人ではないということ。母親は動物的本能で子供を無条件に愛するというのも、都市伝説・おとぎ話の類いだと思っている。
自分の親が世間一般の親と違うと感じても、子供としてはなかなかそれを認めたくないし、自分も他の子供のように愛されてると思いたいもの。でもどんなにジタバタしても事実は事実で、成長して現実を受け止められるようになっていくまでもがくことは仕方のないことだと思う。
とはいえ、実際には飼うことのできない妄想の犬を撫でることで寂しい現実をやりすごす子供のことを考えると、本当に切なく、胸が痛くなった。
苦しい子供時代を生き抜いた子供たちと、頑張ったねとハグを交わしたい。
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他人から見れば間違ってると言われるかもしれない。それでも、それを自覚しながら間違いだと言われる選択をすることを他人がとやかく言うことじゃないよなと、首がもげるくらい頷くように読んだ。
何かしらの事情や悩みや不安や悲しみを抱いている。それを知ってるのは自分だけで、それに向き合うのも、どう付き合っていくかも、そして今後付き合うのも自分。手を伸ばすことなく、手を取り合うことなく、相手と自分に不器用に優しく寄り添う姿が、とても愛しかった。
私もずっと、いつかこの環境を私から手放せるような、そんな漫画みたいな出来事が起こったらなーって空想してたな。そんなふうに現実から目を逸らして、やっと幸せだと言える大人になった、と思う。
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違和感なく月日は経っていきました。「5年後はどうなっているんだろう」と、楽しみに読みましたが、なかなか事態は好転せず、苦しかったり、切なかったりするばかりで…。ラストの遊園地で救われましたが、それまでの鬱屈とした流れからして、ちょっと変容が急だった気もします。しかして、家族全員が一つとなって救われたことよりも、紅や山吹が個々に幸せになったことの方が嬉しかった。
「社会にとって役に立ってない子 が この世に存在しなくていいという理由にはならない」という祖母の言葉、そして、山吹の刊行記念エッセイにある珠玉の言葉たち、忘れずにいたいです。
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自分も家族も環境も思い通りにはならなくて、嘘や空想や現実逃避しながら懸命に生きている。
親子、姉弟、夫婦、友人、たくさんの関係性があって、主人公の山吹を通して大人になりながら、少しずつ周りが変わったり、自分が変わったり、とにかく希望が見えてよかった。
人は弱いんだけど、強い。