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圧倒的な絶望の暗闇の中で、自分を後ろから照らすのは過去の自分。
そしてその光はあの日つながれた友からの思い。友の思いは歌になり今の自分を照らしてくれる。
「おれたちの歌をうたえ」という叫びが暗闇で光となる。
どこで間違えたのか。何を間違えたのか。誰が悪いのか。そして繰り返される「なぜ」。
いくつもの問いを、変えることのできない道を、悔いながら、恨みながら、それでも生きる。
幼い正義では、見えなかった真実。友に隠し、自分に嘘をつき、それでも守りたかったもの、信じたかったもの。
40年という月日。栄光の五人組という勲章は、光だったのか、闇の始まりだったのか。
友が遺した暗号。そこに込められた本当の意味に胸が締め付けられる。
私にはあるだろうか。瀕死の状態になってまでもたどり着き、明らかにしたいと思う友との謎が。
見えないように、気づかないように隠したまま生きていくんじゃないか。忘れてしまえば楽に生きていける。
そんな自分を嗤うのは、やはり過去の自分。
読みながら自分の指先の温度が上がるのを感じた。
生きたい。今の自分を照らす過去の自分を確かめながら、生きていきたい。生きていけるのか。
いや、生きるのだ。どこまでも生きろ!とアドレナリンが叫ぶ。
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600ページの大ボリューム。細部まで丁寧に書き上げたからこその大作です。疲れたけど納得の読後感に浸れます。栄光の五人組、険悪になりながらも、それぞれを想う絆が途切れることがなくて良かった。オススメ★4つ
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突然、スマホから見知らぬ番号が。幼馴染が死んだということで、世話を任された人からの電話だった。同時に伝言もあるという。それは謎の5行の詩。それに込められた意味とは?一つの事件をきっかけに昭和・平成・令和を経て、隠された真実が明らかになる。
色々読み応えのある作品でした。
なんといっても約600ページという量に1クールの連続ドラマを見ているようでした。読み終わった後はドッと疲れましたが、一つの事件から水面のように拡がる大河級のミステリーに骨太さを感じました。ミステリーだけでなく、ハードボイルドのエッセンスもあったので、男臭さの雰囲気も醸し出していました。
昭和・平成・令和と3つの時代でそれぞれ起きる出来事を思ったよりも長めで描かれています。普通だと過去編になると、さらっと短めに描かれますが、この作品は中編くらいの長さでした。その分、当時起きた出来事を細かく描くことで、より重厚感が増していました。
昭和では仲良しだった人たちが、ある事をきっかけに歯車が狂っていきます。その後、平成や令和では良い方向へ行くのかと思いきや、悪い方向へ突き進むので、胸が痛む思いでした。その背景として、差別や学生運動など社会問題が絡んでいて、その辺のリアルさは印象深かったです。
次に暗号としての謎解きも魅力的でした。5行しかない暗号には、色んな要素が絡まっていて、よくここまで練られていたことに圧倒されました。名だたる作家たちやそれぞれの登場人物、ある事件の鍵を総合的に絡めて、詩に込められているので、全てが明らかになった瞬間、凄いなと思ってしまいました。
それぞれの登場人物たちの末路が儚すぎましたが、主軸となる幼なじみたちの友情が表面では見えなくとも、裏では固く結ばれているのではと感じました。
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【友情を諦めなかった男たちの、悔恨と希望の物語】友が遺した五行の詩。連絡を待ちわびていた元刑事はそれが自分達への伝言だと気づく。あの日の真実を求めて、執念の捜査が始まった。
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かなり作り込まれているとは思うが、イマイチ入り込めなかった。河辺にあまり共感出来なかったからかもしれない。大作。
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サーガと呼びたくなる重厚な過去からの今に繋がる物語。読み応えたっぷり。バディものとしても。
全体的に頭脳警察っぽくて好き。
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本を手に取った時、その厚さに一瞬気持ちが揺らいだ。
最初の書き出しで、押し寄せる文芸の波に、覚悟を決めた。
言葉も、様々な引用も、読み手の膨大な背景知識を求められる。久しぶりの読み応え。
なのに、あっという間に引き込まれ、読み終えてしまった。分厚い598ページ。
いくつもの時代を思い出して行き来し、様々な事件が複雑に絡み合う。
それぞれの登場人物が、それぞれなりに、過去と向き合い前を向いていく。その潔さと、読み終えた後の清々しさ。
とても面白い。
こういうものこそ、何度も読みたい。
その度に発見があり、余白を考察するのが面白い。
本好きにはたまらない本だと思う。
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昭和の「栄光の5人組」から始まり、平成、令和の事件。正直、読んでいて苦しくなりました。どこかに希望はないのかと、主人公の河辺と共にもがきながら読みました。
呉さんの作品は、いつも知らない世界観を与えてくれます。そしてどこかに必ず温かさを残してくれます。
過去を受け入れ、未来を生きていく強さを感じました。
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600頁超の骨太で武骨なミステリー&ハードボイルド労作で、読むのも結構疲れた。「スワン」が凄かっただけに、力が入り過ぎて丁寧だけど大分冗長でもあり、私にとってはインパクトはそれほどでも無かった。力のある作家さんであることは間違いないが、書かれているテーマで当たりはずれがあるような気がする。
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テンポよく、1日でサクッと読めるタイプの小説だったけれど、しかも途中から結論が見えて来てたけど、意外な展開もあり、結構楽しめた。
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過去の殺人事件を引きずって生きている五人そして被害者の妹、それぞれのその後の人生なかなか重みのある作品だった。
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昭和から平成、令和を通して、それぞれのワガママや相手を想う気持ち、偶然のイタズラで起こる悲劇。テレビで紹介されていて気になって読んでみたが、う〜ん、いろいろ詰め込んでるかと思えば、そんなことで殺す?みたいなのもあり、とにかくたくさん登場する人々に感情移入も出来ず、私には難しい物語でした。謎解きも、動機も、ちょっとよく分からなかったです。
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昭和から平成を経て令和へとつながるミステリ。かつて「栄光の五人組」と呼ばれた友人たち。しかしとある事件をきっかけにばらばらになってしまい、再び出会うことになるのは問題が起きた時。友人の死、そして残された暗号。過去の事件に隠された謎はいったいなんだったのか。
暗号の謎は、これはもう当事者たちしか解けませんよね。それと同時に、思い出を深く喚起させる意味合いもあって印象的でした。たとえ何十年会わなくても、お互いに生活がかけ離れてしまったとしても、あの時代を共に過ごした友人たちというのは決して分かたれることのないものなのだなあ、という気にさせられました。ノスタルジックな気分になります。
過去の事件の真相は、これはこの時代ならではの背景があったのですね。些細なずれが重なって起こってしまった事件はなんともやりきれないのだけれど。しかしそれですら懐かしい過去になってしまいそうな雰囲気でした。四十年という時の優しさも感じられます。
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現代史の中にある事実や事件が物語に織りなす昭和、平成、令和を思い出す。主人公の言葉「二十年前も、四十年前も、生きていたのはおれたちなんだ。」過去も現在も生きているのは自分なのだ。過去は変えられない。それをどう捉えて生きるかを考え行動する。それが生きている意味で、あるのかと思う。
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1981年生まれの著者による1959年生まれの世代の主人公(たち)の過去・現在・未来とつなぐ、という大きな野望を持って書かれた小説。連合赤軍事件に大きな衝撃を受けたローティーン、上京後のバブル時代の欲望の噴出、自分の人生がままならないことにどうしようもない時代、そして還暦を迎え終わりとはじまりを整理できない日々、昭和47年、51年、平成11年、令和元年を章にして時代を行き来しつつ物語が展開します。まさに同じ世代としてタイムラインを過ごしてきたので、完全シンクロできるか?と期待したのですが、なかなか難しかったです。理由は、それぞれの時代の空気とか出来事がパターン化された部品に思え、後付けに思えたこと。主人公の皮肉な言い回しがハードボイルド小説のパロディのように感じてしまったこと。というわけで、全然ジャンル違いますが、映画「三丁目の夕日」のノスタルジーが人工甘味料的な感じなのと同じように、人工で作られたホロ苦フレーバー臭を感じました。たぶん、先の映画と同じように自分たちがターゲットなのではなく、令和の若い人に昭和や平成を楽しんでもらうエンターティメントなのかもしれませんね。社会の空気だけじゃなく文学、音楽、詰め込みまくっているのもサービス精神か…。しかし、この本の想定読者じゃないとしても令和二年という最終章の未来につながるほのかな明るさは、この本からの頂き物です。やっぱりこの小説はここかな?過去と向き合えば明日がくるというメーッセージ。そう思うといろいろ盛り沢山なトッピングのビジーな感じも気になるなくなるかもしれません。