サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

e-hon連携キャンペーン ~5/31

hontoレビュー

ほしい本の一覧を見る

乱歩とモダン東京 通俗長編の戦略と方法 みんなのレビュー

予約購入について
  • 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
  • ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
  • ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
  • 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。

みんなのレビュー3件

みんなの評価3.4

評価内訳

  • 星 5 (0件)
  • 星 4 (0件)
  • 星 3 (2件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
3 件中 1 件~ 3 件を表示

紙の本

モダン都市文学としての乱歩『通俗小説』

2021/07/18 10:41

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る

著者は立教大学名誉教授で近現代日本文学・文化が専門。2004年隣接する旧乱歩邸と乱歩が好んだ土蔵書庫の蔵書と諸資料の寄贈を受けた立教大学により、整理保存・評価の責任者となった。これをきっかけに、乱歩研究者となったが、乱歩研究者は多い。いわば新参者。そして14年間の研究成果として、本書を世に問うたのである。何か新事実が明かされるのか、と思ったら、そうではなかった。1929年に始まる『黒蜥蝪』『黄金仮面』のような怪人対名探偵明智小五郎の冒険物語、これを文学研究では「通俗小説」、「純文学」に対して一般大衆の好みに応じた娯楽性の高い小説、つまり「大衆小説」を、近現代日本文学研究者の目から解題・分析するものであった。著者の視点は乱歩の「通俗小説」を、海野弘氏が文学の一ジャンルとして提唱し、現在確立した「モダン都市文学」として捉えるものであった。
第一が関東大震災後のモダン都市東京。東京の変貌を文学者の視点から描いた傑作には永井荷風『断腸亭日乗』がある。『荷風と東京』(川本三郎著,都市出版1998)は、荷風の『日乗』という鏡を通してモダン都市東京の過去と現在との往還を試みながら論じていた。乱歩は、帝都の二大幹線道路である昭和通りと大正通り(靖国通り)を作中にいち早く取り込み、「繁華を誇る日本一の京浜国道」を舞台とするカーチェイス・シーン、また、新しい都市施設であった遊園地とか高層化時代になって登場したランドマーク(本書では国技館)を次々に意欲的に取り込んでいく。第二は大衆読者のモダンへの憧れに応えた「文化住宅」や調度品、ファッション、暮らしぶりなどが、明智小五郎の住まいの変化に合わせて精緻に描写される。しかし『乱歩「東京地図」』(富田均著作品社1997)という200か所にもおよぶ東京の乱歩ゆかりの場所を現地踏査した先人乱歩研究家の労作があり、目新しいものではない。
しかし「近代家族」は新しい切り口である。これまでの「モダン都市文学論」では扱われていないテーマではないか?著者は小林少年を子供と見立てることで、明智家を疑似家族と考えて1930年代に広まりつつあったモダン文化住宅に住み、愛し合い、信じ合う人間的生活を営んでいる、夫婦と子供だけで構成される近代家族像、今日の「核家族」を小説の中に体現しているという。小林少年を明智夫婦の子供と見立てることには驚きだが、両者の関係は躾に類した親子の絆のようなものがあった。例えば『怪人二十面相』『少年探偵団』に出てくる勇気、助け合い、勉学優先などの徳目、また、少年探偵団の七つ道具の一つ「小型手帳と鉛筆」は注意力や記録力を養うため、さらに『妖怪博士』の奥多摩鍾乳洞探索は近代家族の典型的な休日の行楽なのである。しかし戦後の『青銅魔人』では都心の事務所、麹町のアパートに移るし、妻の文代は突然結核で療養所暮らしとなって消えてしまう。小林君だけは相変わらず少年である。敗戦後昭和初期の近代家族像がそのまま温存されていくとは予想できず、乱歩は明智家の近代家族像に終わりを告げたというのである。ただ高度経済成長時代には「核家族」は「復活」するが、戦前のそれとは異なるものであった。
ところで、本書でも著者による小林少年の出自とその後、療養生活をしている文代夫人など乱歩がついぞ触れなかったが、乱歩ファンとしては知りたい秘密は描かれていない。しかし「明智小五郎回顧談」(平山雄一著ホーム社2017)がフィクションとして描いている。ラストは、乱歩を想わせるようなどんでん返しと「二代目」小林少年の登場、そして颯爽と登場する文代夫人、そして怪人二十面相が一堂に会し、知りたいことがわかる仕掛け。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

2021/03/22 00:50

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2022/11/12 23:16

投稿元:ブクログ

レビューを見る

3 件中 1 件~ 3 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。