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家庭科の教鞭をとり現在は九州栄養福祉大学で教育学を教える著者が、人生における大小様々な選択のシーンに於いて、「自分で納得して決める」ということが大切と考えるに至った教員時代のエピソードを紹介した本。自分で決めた生徒達はその決断に責任を持ち、夢を叶えようとする気持ちが強く、叶わなかったとしても夢に関われるような仕事を選ぶ等充実した生活を送ることが出来ている。親の言うことに納得しないまま従った生徒は、モヤモヤしていたり、上手くいかないときに責任転嫁をしたりする傾向がある。
書かれている内容は至極真っ当であり異論はないが、エピソードは短くて読んでいて盛り上がらず、主張もひねりがない。事実をまとめた書籍として関連データが豊富に掲載されているかと言うとそうでもない。正直なところ、何を目的に出版したのか、著者・編集者の意図がよく分からない。ページ数は少ない(91頁)ので、活字の苦手な人が子育てに関して調べ始めるとっかかりとしては良い。かも?
気になったところ。
p.62 苦しい時には、助けを求めてもいい。「自分で決める」ということを重要な力と掲げている本書ではあるが、それと同時に親の心構えとして「苦しい時には助けを求めてよい」ことを子供にきちんと伝えることを挙げている。自分で決めて失敗したら自分の責任として突き放すのではなく、人の助けを借りながら失敗の原因を考え、再挑戦することが大切。「人に迷惑をかけてはいけない」という道徳観は悪くはないが、海外ではそれよりも「困っている人がいたら助けてあげなさい」と教えられることが多く、そちらの方がより良い社会になるだろう。