紙の本
知識人の啓蒙は成功するか
2022/08/14 21:07
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投稿者:サンバ - この投稿者のレビュー一覧を見る
レイ・ブラッドベリのSF小説を解説した本。「本が燃やされる」ディストピアは、突飛な設定に見えるが、本の中身を考えず「よく分からなかった」とレビューする私たちの生きる現代社会と酷似していると指摘。
作品は、知識人たちだけが生き延びることができた一方、ついに大衆への啓蒙を果たせずに終わる。ここが本作の限界であり、私たちに与えられた課題と説明する。
おそらく多くの人にとって、知識人と大衆は同時に内在するものだろう。その相剋に負けないだけの思考と選択の余裕は失いたくない。
映画版との違いも丁寧に説明しており、そちらにも興味が湧いた。
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【1回目】100分de名著テキスト中でも、出色の出来と思う。戸田山氏の解説は平明で、かといってくどくもなく、かつ読みの深さに圧倒される。ディストピア小説として知られるので、最後に主人公は死ぬものと思っていたが、大規模な戦争が起こった後でも(何と、たった1行で表現される!)生き延びる。以下、引用。「本好きであるだけで、知的だったり倫理的だったり人間的だったりするわけではなく、大事なのは『本をどのように使うか』ということです」。※『』内、本文では傍点。
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華氏451時は名前は知ってはいたものの、この本を読んで。俄然読んでみたいと思った。
その前にトリュフォーの映画も見てみたい。
今の時勢をよく表していそう。
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先に原作を買ったが訳がわからず挫折したので、発売を楽しみにしていた。テーマと今ならではの面白さが解説されていてとても良かった。原作もこれを読んだ後なら見所もわかり面白く読み切れた。
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番組の解説がとても良かったので、テキストも買ってみたのだが、番組よりも詳細に解説が書かれていて非常に良かった。
まだ原作を読んだことがないので、このテキストを読んでなお一層映画と書籍の両方に触れたいと思った。
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最初に小説を読んだ時に自分が感じたこと以外にも深くこの作品を読めるようにさまざまな観点からの分析と示唆、考え方の道しるべを与えてくれている。華氏451度をもう一度読みたくなる。
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本より大切なのは、記憶し伝えること(本はその手段)と、それに基づく反省的思考です。
知性への信頼を取り戻し啓蒙への営みを立ち上げ引き継ぐ。
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最初はただの後付けじゃないかと思って読んでいたが、読み進めるうちにブラッドベリの著書の本質について完全ではないが理解できた。
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「レイ・ブラッドベリ『華氏451度』」戸田山和久著、NHK出版、2021.06.01
125p ¥600 C9497 (2021.07.15読了)(2021.05.26購入)
【目次】
【はじめに】寓話としての『華氏451度』
第1回 本が燃やされるディストピア
第2回 本の中には何がある?
第3回 自発的に隷従するひとびと
第4回 「記憶」と「記録」が人間を支える
☆関連図書(既読)
「華氏451度」レイ・ブラッドベリ著・宇野利泰訳、ハヤカワ文庫、1975.11.30
「ウは宇宙船のウ」萩尾望都著・レイ・ブラッドベリ原作、集英社文庫、1978.12.31
(アマゾンより)
本が燃やされる「ディストピア」は、SFか、現実か。
読書が有害とされ、本を所持しているのが見つかるとファイアマンに家ごと焼き払われてしまう全体主義的な近未来社会。
人びとは甘い仮想現実世界に浸り、考えること、記憶することを放棄している。職務に忠実なファイアマンである主人公モンターグは、ある少女との出会いをきっかけにその職務や、社会のあり方、自らの実存に疑問を感じ始める……。
「近未来SF」の姿をとりながら、反知性主義が広がる「現実」を鋭く風刺するこの予言的作品に込められたメッセージを、「思考」「知識」「論理」についての著作も多い科学哲学者の戸田山和久氏が読み解く。
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難しい内容であると思っていたため、かなり身構えて読んだが、解説がとてもわかりやすく、気持ちよく読むことができた。
本至上主義のようにならないように気をつけたい。
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こんな世界に生まれてたら絶対に生きていけない!と本気で思いました…最後の終わり方がビミョーなので☆4かなぁ?
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ブラッドベリの「華氏451度」を読んだのは30年は前だろう。正直言うと、ちょっとブラッドベリぽくないかなと感じた。短編の名手の印象が強かったし、批評がモロに全面に出ている印象がそう感じた理由かもしれない。
放送は数回見た。講師役の戸田山教授の話は、トリュフォー監督がまず在りきのよう。僕は映画は見ていない。
まあ、小説の内容は思いの外覚えているなと思ったが、各シーンの意味合いの説明は半分感心し、半分仕込み過ぎじゃないのとも思う。
敵役ベイティーについては、うっすら覚えている感じ。豊富な書物に関する知識、引用されるモノローグの上にファイアマンのボスとして屹立する矛盾に満ちた人間。
一瞬で始まり、一瞬で終わった戦争。これは覚えてなかったな。
終盤にブラッドベリのミスについての指摘もある。なんとなく30年前に不満を感じた部分があったことを思い出す。
「華氏451度」は典型にはまり過ぎているとは思うけれど、しかし、なかなかの名作であることは確かなんだな。いつか読み返すことがあるかもしれない。
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まさに現代のことを描いているような本ですね。人間は確かに、難しいことを考えることや深く考えることが面倒だと放棄することができる。それでも生きていける時代だから。それは楽かもしれないが、放棄し続けると中身のないちっぽけな人間になり、自分が何者かすら分からなくなるだろう。
モンターグの妻がまさにそう。現実と仮想の違いも分からなくなっている。幸福とはなんでしょう?
「本は能動的に考えるもの。正当な理由で行動に移すこと」と番組で言っている。
幸福とは自分らしく生きることだと思う。自分らしくいきるために欲しい情報を得て、自分で考え、信じる。そのなかで軋轢が生じるのは当たり前のこと。それでも自分らしく生きられたら、最も幸福だと思う。
衝撃的な本だった。
映画も観てみた。映画の結末は本とは違う。未来は軋轢のある社会に戻れる希望を持たせるものだった。
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反知性主義。2020年代の課題。また言語(読み書き)が失われて、感情が他者に取り出されるほど浅くなってしまっている。本を読めばいい。本を。画面ではなく本を。本が燃やされる社会とは、画面をみる社会なのではと。
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破壊する炎→継承する炎。
メディアはどんどん簡略化していく。知識人にならなくても生きていける世界になる。