紙の本
中世史家が読む『薔薇の名前』
2022/09/28 13:40
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウンベルト・エーコの小説家としてのデビュー作にして最高傑作『薔薇の名前』を、作品の舞台となった西洋中世史を専門とする著者が読み解くものだが、それなりに面白いものの『薔薇の名前』という巨大な作品を捉えきれていないような感もあった。
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“知の巨人”ウンベルト・エーコの初の小説にしてベストセラーの「薔薇の名前」の解説書としてはもちろん、作品背景にある西欧の中世についてもくわしく、わかりやすく解説してある。この手の解説書は、どのレベルに合わせるかで、読み手により評価が分かれそうだけど、非常に詳しく専門的な話も交えつつ、わかりやすく書かれていて、かなり幅広い人々にも読み応えがあるように思えます。私も澁澤龍彦読んでるし、エーコの小説ほとんど読んでるからつまんないかもなと思ってたら、てんで予想を覆されて、新たな知識の発見がたくさんありました。また「薔薇の名前」、読み返してみようかな。
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薔薇の名前は、ずっと前に途中までは読んだ覚えがあって、いくつかのシーンはまざまざと思い出せるけれど、ラストまで読んだか判然としない。
図書館でウンベルト・エーコ生誕百年記念のコーナーができていたのを見て、そのことを思い出した。
薔薇の名前は、おそらく借りられてて見当たらなかったけれど、この本が目に入り読んでみた。
半分は薔薇の名前のストーリーの流れを解説して、もう半分で薔薇の名前の舞台に関する歴史を説明している。
もう一回薔薇の名前に挑戦して、読み終えたらまたこの本を読みたい。
本が現実をどれだけ表せるか、本にその力が備わっているかの答えを持っていなくても、わたしたちは言葉を使うことによってしか現実を認識できない。そして本は現実を認識させてくれるための言葉を提供してくれる。
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中世史家の筆者によるエーコ『薔薇の名前』の解説本。読み解いていく上での新たな視点を与える本というよりは、より中世の世界観に浸るのに役立つ本という印象。
最初に物語とその舞台設定を追って(当然、本編のネタバレを含むから注意)、その後ウィリアムなど主要登場人物などを深掘り。最後は「中世について語る」ではなく「中世の中で物語を語る」作品である『薔薇の名前』により入り込めるよう、エーコがどのように中世世界を作中に再現したかを解説。
修道院のモデルや当時の時代背景についての解説、黙示録など作中で引用された文章や登場する実在の人物についての解説はもちろん『薔薇の名前』世界に浸るのに役に立ったし、それ以上にアドソやウィリアムのセリフや、アドソが娘について形容する言葉などのありとあらゆる箇所に「書物について語る書物」としての元ネタ、引用元があると知れたことが大きな収穫。