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紙の本
過ちを繰り返さないために情報機関の創設を
2021/07/24 07:59
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』(江崎道朗著、扶桑社)の続編ともいうべきもの。巻末資料も含め300ページ余にわたる内容は、ただただ、その精緻な分析調書に感嘆。日米戦争が始まる前のアメリカにおける共産党組織について外務省専任総領事としてニューヨークに送り込まれた若杉要の調査書が本書になる。この調書は、第1章から第3章と大きく分類され、第3章以降は10節、20項目、さらに細分化された項目が並ぶ。一度でもアメリカ共産党に関与したならば、人種、民族、階級に関係なく、相互監視され、離脱は許されない。財源確保も含め、新興宗教も真っ青の組織運営マニュアルだ。特に、プロパガンダ部門ともいうべき出版、演劇、映画、ラジオ、美術、教育分野における対外宣伝の巧みさに驚く。アメリカ共産党をダミーとして、ソ連が敵としたのは、日本とナチス・ドイツ。どれほど日本がアメリカに対し和平交渉を行おうとも、徹底してつぶされていく仕組みになっている。とりわけ、驚くのは、138ページの「米国作家連盟」の項目だ。シンパとして中国革命の孫文夫人・宋慶齢の名前までもが出ている。212ページには、工場におけるサボタージュの具体的な方法がマニュアル化されている。例えば、発電機内にレコード針を落として使用不能にするなど。
日米戦争前、外務省の外交の無能さが批判の対象にもなったが、正面からアメリカ側と交渉しようにも、結果は見えていたのだ。日本の背後に位置する中国への工作も巧妙だ。日本軍の戦闘行動を残虐極まる行為と過剰に糾弾。YMCA、YWCAというプロテスタント系キリスト教団体も背乗りし、その中国支部も支配下に置く。
本書をつぶさに読み込みながら思い起こしたのは近衛文麿の『戦後欧米見聞録』だ。近衛は欧州大戦(第一次世界大戦)後のパリに乗り込み、共産主義、アメリカの反日プロパガンダについて述べている。いわゆる東京裁判前に服毒自殺したヘタレの近衛と見られるが、実は早くから日米戦争を予見し、その対処を考えていた。近衛は、この対日プロパガンダの元凶であるホーンベックの存在も知っていた。そこで、松岡洋右、廣田弘毅が動いたが、近衛も含め、松岡、廣田も口を封じられた。
振り返って、戦後の学校教育現場では、ヘミングウェイ、スタインベックという共産党シンパの作品を教科書で読み、読書感想文の推薦図書にもなった。映画も鑑賞した。知らず、知らず、洗脳されていたのだ。
あの「だまし討ち」と言われた真珠湾攻撃はプロパガンダであると判明したが、これほどの仕組みが作られていたならば、日本は破滅の道を選択するしかなかった。近現代史の研究者にとって、本書は必携だが、過ちを繰り返さないためにも、情報機関の創設は必須と考える。
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