紙の本
変わらないヒトコワ
2021/06/29 18:44
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投稿者:tamayo04 - この投稿者のレビュー一覧を見る
明治時代でも令和でも、いつの時代でも変わらないヒトコワの物語。変わっていく世の中でも、人間の恐ろしさが出る面は変わらないのだなあと思いつつ、ホラーとして楽しむにはあまりにも身近にありそうな小さな恐怖が詰まっていて読んでいて怖かった。題名が印象に残りますが秀逸だなあと読む前も読み終わっても思います。
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岡山の田舎の闇再び。
『ぼっけえ、きょうてえ』より艶めかしさは少し薄まった印象だけど、作中の「ハレー彗星なんぞ、きょうてえものじゃあないで。ほんまにきょうてえものは、飢えじゃ。病気じゃ。戦争じゃ。そいから、人の心の中にあるものじゃ」を存分に体感できる。
一話目の「穴堀酒」は元女囚の書簡という形で話が進み、これがどう怖くなるのかと好奇心が膨らんだ果てに一気に目の前が暗転。悲しみとヒヤリの余韻を残す表題作、摩訶不思議な印象の「大彗星愈々接近」…でえれえ、やっちもねええぐみととろける甘露の融合にほろ酔い。
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「ぼっけえ、きょうてえ」の続編らしかったが、どんな内容だったか思い出せず。それはそれとして面白かった。
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「ぼっけえ、きょうてえ」の正統派後継作ということです。直接の関係はないのだけれど、テイストはまさしくこれだなあ。どれもこれもがとことん嫌な話(褒めています)。実際になさそうでありそうで、あったら嫌だなあという印象。怖いというよりはじわじわと沁みとおるような不快感と妖しさ満載の酩酊感が独特な魅力です。薄い本なのだけれど、これ一冊でお腹一杯。
一番ありそうな話で嫌だと思ったのが「穴掘酒」。一見一番普通っぽい話だというところが、逆にとんでもなく嫌でした。
表題作「でえれえ、やっちもねえ」にもやられました。意外な幕切れと最後の一言に唖然。
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「穴堀酒」がよかった。
書簡体小説って面白いですよ。
全体の話の面白さは「ぼっけえきょうてえ」には及ばないが、作り出されている雰囲気はこちらも抜群に良い。
よくもこれだけ不快な空気を作れるものである。
他にも岡山舞台の作品を書いてそうなのでまた読んでみたい
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岩井志麻子の明治から昭和初期を舞台にした貧困と土俗の信仰、迷信、伝説が入り交じった郷愁的で恐ろしい作品群、つまり「岡山モノ」の起源にして頂点「ぼっけぇ、きょうてぇ」の正統な続編ということで期待した一冊。
結果からすると「ぼっけぇ、きょうてぇ」の続編と名乗るには少々足りないながらも「穴堀酒」のようなトリッキーな作品や「大彗星…」のようにファンタジックな作品もあり岩井志麻子の作品の中でもふわっとした入門編といった感じである。
しかしながらやはり物足りない。もっと濃厚な岡山の闇を描いてきた作者の作品にしてはとにかく薄く広いのである。
とにかく物足りない一冊。
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帯には「『ぼっけえ、きょうてえ』待ち望まれた正統後継作!」と書かれている。
日本ホラー大賞を受賞した「ぼっけえ、きょうてえ」(1999《平成11》年)はあまりにも陰惨な物語が強烈な作品と思っているが、世間でもホラーの名作として評価されているらしい。同年に刊行された同名の短編集は、作者の故郷である岡山県の田舎の風情を背景にした、今思うとやはり傑出した本であった。
作者の岩井志麻子さん、その後いろいろ本を書いたようだが、私は未読。アマゾンのレビューを見るとさほど評価が高いとは言いきれない。
そこに、本書。巻末に「本書は、角川ホラー文庫のための書き下ろしです」と明記されている。令和3年6月発行。出たばっかりである。やはり4編から成る短編集。
しかし、結論を言うと、あまり良くない。やはり『ぼっけえ、きょうてえ』からは数段劣ると思った。
前にも感じたのだが、この作家、文章が上手くない。赤川次郎以降ときどき見かける「全部改行」というライトな書き方とは違い、ある程度センテンスをまとめて「意味段落」としているが、どの段落も文庫本にして3行ほどと決まっており、すこぶるヘンテコな箇所で改行し、次の段落に移行するのが、全然論理的でない。話題の連鎖もスムーズでないから、意外と読みにくい。悪文である。
それでも、『ぼっけえ、きょうてえ』と同様に、岡山県の片田舎の、明治から昭和初期にかけての風俗描写は興味を惹くものがあるし、情趣を覚える。作者は1965年生まれだから、祖父母の世代あたりの風景や人間模様を描いている。岡山県の資料をよく調べているようだが、祖父母や親戚から話を聞いた体験も生かされているのだろうか。
最初の「穴掘酒」が、グロい描写もあって最もホラー小説らしいものだった。ラストがちょっと気に入らないが、これはまあまあ良かった。
が、つづく「でえれえ、やっちもねえ」「大彗星愈々接近」は恐怖を主眼としていないのでホラーとは言えない、一種のファンタジーである。「でえれえ。やっちもねえ」の中で1箇所書かれている、明治期の岡山県を襲ったコレラを巡る人々のパニックは、『ぼっけえ、きょうてえ』所収の「密告函」でも描かれていたが、近所の者がコレラに感染していると密告し疎外し合う様子が、現在のコロナ禍を彷彿させて面白い。
最後の「カユ・アピアピ」は普通小説のような進行で、うら寂しいような人生の哀歓があり、途中登場人物の心理も巧く書かれたところがあって、なかなか良いと思った。そう思って読んでいると、最後にいきなりホラー小説になるという風変わりな構成に驚いた。
まあ、やはり、文章が下手なのはいただけない。文章が下手であっても小説としては素晴らしい、という、散文の世界ならではの例外的な事象も文学史上ないことはなく、『ぼっけえ、きょうてえ』も割とそうだったのだが、本書ではどうもふるわなかった。
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以下、チラシの裏。
岩井志麻子を数作、集中的に読んだのは2017年。
その後は深追いすることなく、豹柄タイツでハッスルする姿やワイドショーで発言が炎上したりする様を、ネット記事で見知っていたが、実は心の奥底で、結構尊敬していた。
その根拠を思い出すと、2014年大晦日から2015年元日にかけて放送された「ツキたい人グランプリ〜ゆく年つく年〜」に行き着く。
岩井氏の動く姿を見たのはその一度きりだが、まずべろべろに酔って除夜の鐘を撞くときに「50歳になって生理が上がったから中出しし放題だぞー!!」と叫んでいた。oh……
この番組自体は、フジテレビで、坂上忍がとにかくその年に流行った人物を呼ぶだけの、賑やかで鬱陶しい番組だった。
泥酔して眼の座ったヤカラの大沢樹生が、誰彼構わず殴りかかったり蹴りを入れたりする無法状態の中、確か佐村河内守騒動で引っ張り出された新垣隆が、氷風呂に突き落とされた挙句コメントを求められて、モゴモゴしているのに業を煮やした大沢樹生が蹴りを入れようとするのを、周囲のお笑い芸人が真顔で静止しようとする中、岩井氏は新垣氏を庇うように背後から抱きかかえて落ち着かせようとしていた……この映像が、今も忘れられない。
文庫書下ろしとかKADOKAWAに一極集中とか事情はあるかもしれないが、好きです。
本書も面白かった。
■穴掘酒 ……よくある話だが、手紙の文体と、穴掘酒という風習が重なって、凄み。柳田國男の「葬送習俗事典:死穢の民俗学手帳」にも項目あり。
■でえれえ、やっちもねえ ……表題作だが、うーん怖いというよりライトなシニカル小噺という感じか。しかし令和のコロナ禍の夜で読む意味はある。ちなみに作中ではモブキャラに近いが、孤児院を創設した人物のはモデルは石井十次と思われる。
■大彗星愈々接近 ……★少女、老婆、に平凡な男が翻弄される、このへん山岸凉子の絵で再生された。藤子・F・不二雄「ドラえもん」で忘れがたい「ハリーのしっぽ」のハレー彗星1910年、しかも「内田さん」まで出てきた上、ガルシア=マルケス「百年の孤独」も連想できる、大変に美味しい短編。平凡な男と描写されたが、実は歴史上の人物、浮田幸吉だったというのも、極上の味。どなかたwikipediaに加筆してくれれば。
ハリーのしっぽ
■カユ・アピアピ ……★上京志望、作家志望という点で、作者の投影かと思っていたら、なんとシンガポール(新嘉坡)でカユ・アピアピ(炎の木)って、あー金子光晴と妻の森三千代だ! と驚いた。作中の古賀根安和って、「こがね蟲」を書いた作家の本名は金子安和だから、間違いない。森三千代は愛媛県宇和島出身なのでモデルに過ぎないだろうが、かなりあのふたりの核心に迫らんとする力作だと思う。また話は変わるが、矢野絢子の歌の一節に「ホンソホンソ」とあったのに聞き流していたが、こういう意味の方言なのね。瀬戸内海近辺かしらん。
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じっとりとした
陰惨な暗さがあります
どれも 悪夢のような
暗く哀しい話です
怖さは ぼっけえ~のほうが
どぎつい怖さがありましたね
完成度も 高いです
でも これはこれで
やっぱり独特の 気持ち悪さは
さすが 岩井先生だな と
「穴掘酒」の男の手紙が
女をはめる気まんまんで
気持ち悪くって
ぞわぞわしました
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文庫王国から。今ほど読まなかった頃、”ぼっけえ~”は読んだことがあって、正直、それほどぴんと来なかった記憶のまま今に至る作家。ただ、そのときには『自分の読解力の問題もあるかも』と思い、とりあえず判断を留保していたもの。今回、続編ってこともなって久しぶりに本著者にトライ。結果、やっぱり合わないってことが分かりました。真実を知って背筋がゾッとする、って類の短編集だとは思うんだけど、個人的に、そのスリルが殆ど味わえず。想像の域を出ないというか、だったらもっと読者の想像力に丸投げしてもらった方が、とすら思ってしまった。もし続編が出たとしても、今度はもういい。
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ある男のせいで獄中に放り込まれてしまった女。しかし、女は男を恨むことなく、慕い続け牢の中で男に向けた書をしたため続けていた。やがて、恩赦のおかげで出所できた女は、同じように男に向けて手紙を書き続ける。男を想う一途な心を込めながら……。
***
前回絶賛した、「ぼっけえ、きょうてえ」の正式な後継作とされる「でえれえ、やっちもねえ」をさっそく読んでみた。第一話目は腐った花の香りをかぐようなくらくらした気持ちになりながら読んだ。
ただ、前作は全編がなんとも言い難い妖艶な雰囲気を常に湛えていたのと比べて、こちらはなんとなく生々しい。
前回は幽霊の様なものが登場人物の前に現れて、惑わし、狂わせ、翻弄していたものだが、今回はその様子は鳴りを潜めていた。
うっそりとした、静かで不気味で怖い。いつの間にか寄り添っている、恐ろしいものに鳥肌が立つ、という雰囲気はいくらか希釈されており、前回のままの様子が好きであるという方にはちょっと物足りないかも。
前回の毒性ありありの作品は現代だと何か問題でもあるのだろうか?いやまさか。
出てくる女性たちも不幸であるのだが、前作よりは幾分か恵まれており、良い生活を送ったりしていた。
全てが最初から破綻しているという雰囲気の話が一つしかなかったのは残念かも。
第一話目と同じ流れで、男に執着する情念、怖いがしかし美しい。という流れだったらなぁと失礼ながら思わずにはいられなかった。
特に毛色が違ったのは「大彗星愈々接近」という話。煽情的なほとんどなく、今までにない話だった。怖いというよりは、ユーモラスで面白い。
これはこれで乙なのだけれど、作品の雰囲気に中てられる気満々だったので、些か驚いた。
同作者の既読作品は「楽園」であったので、こういう煽情的かつ猟奇的な話を書く人なのだと思っていたので本当に面食らった。
ただ、第一話目は本当に素晴らしかった。ほかの作品も面白いのだけれど、これだけが飛びぬけて面白い。
異様ではあるが、静かだった女の情念がぱっと一瞬燃え上がり、相手の男も一緒に燃やさんとする。
憎悪にも似た愛情がぼうぼうと燃えていて、ぞっとした。
岩井志麻子さんのこの手の話が大好きになってしまったので、これからもこういう話を続々読みたい。
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『ぼっけぇ、きょうてえ』と同じ世界観で展開される女たちの怖くて怪しい短編集。相変わらず読みやすい。13歳で神隠しに会い、70歳で戻ってきたヨシ婆さんのお話が好きだ。これだけは人間の闇をあまり感じない。ハレー彗星や神隠しとあわせてファンタジックなムードがある。
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妾の女が霊媒師家業、ハレー彗星接近。あれ??これって「岡山女」でやりましたよね??
あまりの既視感に再読かと勘違い。
江戸、明治、大正、昭和。岡山縛りの4つの怪異譚。
岡山弁は相変わらず怪談話と相性がいいとは感じます。
穴掘酒(大正時代)
刑期を終えた女が、愛しい男宛に書いた手紙の形式。
この話だけは面白かった。
手紙形式のやりとりで面白かった作品といえば湊かなえの「往復書簡」が思い出された。
ホラー作家の描く「時候の挨拶」」というのもまた味があっていい
淑女を装っていた女がどんどん荒ぶってくる文面。