紙の本
なかなか興味をそそられる書名である
2021/09/07 14:30
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投稿者:名無し - この投稿者のレビュー一覧を見る
なかなか興味をそそられる書名である。なるほど、毛沢東をひたすら敬愛する習近平の権力欲の源泉は、父を破滅させたトウ小平への復讐だったと考えれば納得できる。トウ小平らが推進してきた改革開放経済政策を、ただ中国共産党の世界支配に使用するという算段もそうであろうというもの。
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ちょっと読みづらいかもだけど…
隣国の恐ろしい内情が詳しく解説されている。
こんなの読むと「本屋大賞とかで盛り上がってて良いのか!?日本!?」って思っちゃうよね…
ちなみに本屋大賞獲った本、どれも好みじゃない…
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昨今の中国は、軋轢増加を気にもせずに対外的に威圧的な態度に出たり、国内の産業基盤の一部を自ら破壊するような政策を行っている。このことを題材に、中国において習近平が自らの保身と共産党の強化のためにとっている様々な政策を詳述。
中国の歴史は基本的には下剋上の歴史。共産党も国民党を内戦の末に破って政権の座についた。毛沢東は、自己の保身のために、大躍進政策と文化大革命で延べ数千万人の自国民を迫害・殺害した。そして習近平は、中国国民全体や、IT企業の経営者を、彼の権力基盤を脅かす存在として位置づけ、権力基盤の強化を図っている。
興味深いのは、中国においては法律はあくまで共産党の支配強化の道具でしかないという指摘。立法、行政、司法の三権分立がない中国では、これら3つの権力どころか憲法ですら、共産党の下位にある。
本書の第一部は、中国が2027年をめどに台湾併合のための準備を着々と進めているという話題。内戦によって成立した中国共産党政権では戦争で勝つことはその正当性を人民に認知される手段。1927年の人民解放軍創立から100周年となる2027年までに台湾を統一するという軍事的達成をもって、習近平は自らの地位を毛沢東と同等に引き上げられると考えているとのこと。
習近平は党内のライバルや実力者を排除・訴追し、憲法改正や様々な法改正、
さらには党紀の改正によって自らの独裁体制の足固めを徐々に進めているという。
また、アリババのジャック・マーを蟄居状態に追い込んでいることが象徴的だが、IT企業の経営者たちを、自らの地位を脅かす潜在的な敵と位置付けている模様。
極めつけが中国における「文革2.0」つまりバージョンアップされた文革。人民たちを相互監視と密告奨励によって疑心暗鬼にし、世論を誘導して政敵を排除している。現段階では、1960年代の文革のようなリンチや暴力行為は発生していないにしても、「ネット近衛兵」がターゲットを売国奴やスパイといったレッテルを貼るような活動はすでに活発化しているという。SNSなどでの投稿内容を検閲したり、作為的な「賛(いいね!)」をする「ネット文明ボランティア」は2000万人。
さらに、学校教育現場での思想教育が強化が進んでいるという。大学のカリキュラムで共産党思想を教えることが義務化されたほか、職員の一定数(200人に1人)を思想教育要員とることが規定された。2021年夏からは全国の高校で軍事教練が義務化されたという。上述の2000万人の「ネット文明ボランティア」は、全国の大学に動員の割り当てノルマが課されているという。毛沢東の文革は中国国内で進行したが、現在の中国の思想統制・強化はネットで行われているがゆえに、中国の膨張にともない世論誘導やイデオロギー侵略が、日本を含む外国にも及ぶ可能性がある、というのが著者の考え。
第二部以降はJBPressなどに寄稿された記事の採録。
- 香港の民主化運動を完全に封殺するにいたった法整備や判決の紹介
- Ant FinancialのIPO阻止の最大の理由は政敵である江沢民ファミリーがPEファンドを通じて同社の株式を大量保有していたからではないかという事情
- 顔認証システムを用いて共産党が個人���報を収集していることへの警鐘
- 宗教団体に対する締め付けの強化
といった内容。
読めば読むほど習近平が存命している限りは、中国の覇権拡大の方向は変わらず、日本はそのフロントラインにいるということを実感する。また、自国企業の経営基盤を破壊することなど、屁の河童程度にしか考えていないということもよく分かった。
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著者は産経新聞から中国留学、香港支局長、中国総局記者(在北京)などを歴任とのこと。シノフォビアというよりはドラゴンスレイヤーと言うべきか。
習近平治下の中国について、また、約束の50年を待たずして共産党の膝下に置かれた香港について、何が起きているのかを克明に描く。
克明に描くということは、習近平の独裁志向を糾弾するということになるわけだが、読み進めるのが辛いほどに恐ろしい。
父君は開明派の政治家だった紅二代で、父子共に文化大革命で迫害されていながら、子は却って毛沢東思想で洗脳されて今や中国を第二次文革へ向かわせようとしている由。
この分では台湾侵攻も十二分にあり得る。
この分野に興味のある方もない方も、一読の価値ありと信じる。