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バティックの装丁が美しくて
卒論を書いてた時によく目にしていた倉沢先生の本だったので、思わず購入した。
学生結婚をして、夫と一緒に一緒にアメリカのコーネル大学博士課程に進むも、夫は日本での職が見つかり帰国。倉沢さんは、インドネシアに1年間のフィールド調査をしにいき、なんとか日本での職も見つけて帰国したころには、いろんな歯車が合わず、、別離。その後、新しいパートナーに恵まれて、名大教授を経て、慶大名誉教授までなられた。
女性がアカデミックの世界で生きていくことへの障壁をまざまざと見せつけられた。それでも倉沢先生は柔軟に子育ても結婚も研究もされていて、苦労はたくさんあったと思うが側から見たら大成功にみえる。
私も海外の教育機関をメインの職場として考えて職探しをしている院生の立場なので、通じるものがあった。何もかもどうにでもなるさではあるのだが、チャレンジングな道だなと改めて思う。
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増補 女が学者になるとき: インドネシア研究奮闘記。倉沢 愛子先生の著書。インドネシア研究の第一人者として知られる倉沢 愛子先生、倉沢 愛子博士の半生記。倉沢 愛子先生、倉沢 愛子博士は女性学者、女性研究者の道を切り開いた功労者の一人。現役の女性学者、女性研究者のすべてが倉沢 愛子先生、倉沢 愛子博士に直接お世話になったわけではなくても、多くの女性学者、女性研究者にとって見えない恩人と言える存在のかも。日本の女性学者、女性研究者がもっと当たり前の存在にならないと。
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女が学者になるとき(倉沢愛子/岩波現代文庫)
副題は「インドネシア研究奮闘記」。著者は「日本占領下のジャワ農村の変容」でサントリー学芸賞を受賞したインドネシア研究の第一人者。
本書で著者が描くのは
-東大紛争の影響をもろに受けた学生時代
-文革の最中に訪れた中国での体験
-学生結婚してからのインドネシア貧乏留学
-1970年初頭のジャカルタ事情
-コーネル大学留学での博士課程
-日本軍政下のジャワ農村研究のためのフィールドワーク
-占領下でのジャワ農民や区長の苦難
平易な文章で著者が体験したインドネシアの事情や苦労、また著者の専門である日本占領下でのジャワ農村の変容調査の様子が描かれていて、ほぼ一気読み。
題名だと女性故に著者が受けた差別や強いられた苦難を中心に描かれているイメージですが、そのあたりは本書の中心にはなっていないという印象です。
「私の研究生活には、『ガラスの天井』を破ろうとか、差別と戦おうとかいう勇ましいものは、何もなかった。男性に許されているごく普通の研究活動を、とやかく言われずに続けさせて欲しい-------ただこれだけだった」
とあるように本書で読めるのはインドネシア研究のために奮闘している若き研究者の姿。ただ、7章に「研究者の道、女の道」、補章として「女は学者をやめられない」という章を設け、研究活動以外の著者の半生や女性としての経験や心境も綴っています。
70年代初頭のジャカルタ、80年代初頭のジャワでの生活も描かれていて、インドネシアが好きな方には必読と思います。また、フィールドワークにおける聞き込み調査方法も興味深く読めます。とにかく面白い半生記。お勧めです。