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冷蔵庫は現代社会に生きる者にとって必要だ。痛みやすい飲食物を保管したり、電子レンジでチンするだけで食べられる冷凍食品を冷凍したり、便利な電化製品だ。
しかし、そんな便利な生活を手にしたのは、冷蔵庫の発明、普及、冷凍食品の進化などの要因が積み重なった結果だ。
冷凍と人間の長い歴史に光を当てたのが今回の本だ。
冷蔵に関する記録が残っている一番古い時代はいつだろう。それはユーフラテス川西岸にあったシュメールの都市、テルカにあった。紀元前18世紀までさかのぼる。現在のシリアのイラク国境近くに位置する。
1933年の発掘調査で出土したマリ文書で分かった。「いかなる王もかつて建てられたことのない」テルカの氷室をマリの王ジムリ・リムが命じたことを伝えている。
そんな昔までさかのぼるとは思いもよらなかった。
家庭用冷蔵庫の発明は意外な人物で驚いた。フランスの修道士アベ・マルセル・オーディフレンだった。オーディフレンは、ワインを冷やす機械をいじっていた。1903年には、二酸化硫黄を使った実用模型を作っていたという記録があった。
しかし、電気冷蔵庫の権利を取得したのは、オーディフレンではなく、ゼネラル・エレクトリック社で、1911年に獲得した。
気になる値段だが、1000ドルだった。当時の自動車の価格の2倍だ。手に入れることのできるのは、一部の富裕層に限定された。
冷蔵のない人生なんて考えられない。自分の家には冷蔵庫を持たずに近くのコンビニを冷蔵庫代わりにしている人もいるようだが、冷凍技術の発達の恩恵を受けているからできることだ。真夏でも冷たいアイスクリームを美味しく味わえることを感謝しながら思う。