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本書の中で橋本治が書いています。「しかし、いくら目をこすっても、谷内六郎はすごいのである。すごいくせに、それは週刊誌の表紙だから、ある程度の時間がたつと、まとめてチリ紙交換に出されてしまう。谷内六郎の絵をゴミとして放出してしまう自分が、なんだかとんでもなく贅沢なことをしているような気分になった。それは本当に贅沢なことなのだ。日本人は、谷内六郎を、平気で毎週消費していた。」言われて見れば「週刊新潮」は、「昭和」という気分をパッケージにした商品だったのかもしれません。中身の「黒い事件簿」のようなドロドロとしたスキャンダリズムと表紙の甘くて切ないノスタルジーのバランスは絶妙でした。 欲望と叙情を食い散らかして、時代は成長の坂道を駆け上がっていたのでしょう。そして、上るべき坂道を見出せない今、振り返ると、谷内六郎の絵(そして、言葉が…いや、人生そのもの…)が、「商品」としてではなく「アート」として、時代の心を揺さぶるのだと思います。先日放送された日曜美術館で、今をときめくアートディレクター佐藤可士和が学生時代、谷内六郎の文庫版の画集に支えられたみたいな話をしていたのが、すごい新鮮でした。でも、かけ離れたような2人のアウトプットは、少年のようなピュアなヒューマニティーという点では共通しているのかな、とも思いました。生誕100年を記念した増補改訂版です。