紙の本
米国ビジネスの新しい動きを知ることができる書
2023/03/07 14:22
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投稿者:巴里倫敦塔 - この投稿者のレビュー一覧を見る
社会を変える力を持つソーシャルイノベーションとは何か、どのように立ち上げ、どのように実践すべきかを具体的に紹介した書。スタンフォード大学が2003年に創刊したスタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー(SSIR)誌から10本の論文を選び、ソーシャルイノベーションの現状と今後を論じる。抽象論や観念論に終わらず、事例に基づき、企業や非営利団体、行政が組織の枠を越えてとるべき方策や在るべき立ち位置を提示する。
ソーシャルイノベーションは、マイノリティや貧しい人を助け社会全体を豊かにすることを目指す考え方である。経済的・社会的価値の分配バランスが、社会全体に傾いた動きを指している。目新しさや改善が重要で、より持続可能であることや、より公正であることに重きを置く。「富める者が豊かになれば、貧しい者にも富がこぼれ落ち豊かになり、経済が良くなる」と考えるトリクルダウン理論とは真逆の経済政策を志向する。
ソーシャルイノベーションの実現には、ビジネス界のアイデアや方法論を、非営利分野や行政分野の活動に適用することが不可欠である。実際にこうした事例が爆発的に増えているとする。本書は、新自由主義とは真逆の米国ビジネスの新しい動きを知ることのできる好著である。これから注目を浴びそうなBコーポレーション(社会に利益をもたらすことを非常に深くコミットする営利企業)やカーブカット効果、コレクティブ・インパクトといったキーワードがいくつも登場するので、予習の意味でも一読する価値がある。
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起業やソーシャルイノベーションにまつわる、誰もが感じる難しさや課題について、先進の研究者や実例に関する論文が掲載されている。例えば、プロジェクトを推進した姿である”エンドゲーム”について、「リーダーはスケールアップに邁進するより、組織が貢献できるインパクトの実現に焦点をしぼるべき」。あるいは成功した組織の方法論をどう複製するかについては「成功したプログラムの成果を再創出することであって、特徴や要素一つ一つをコピーすることではない」など。やはり、世界には賢い人がたくさんいて、同じような悩みについてちゃんと解決方法やチャレンジを考えてくれている。やはり学ぶことが大切。
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メンバーからの推薦図書。めちゃくちゃ面白かった。
ソーシャルセクターの6つのエンドゲームと資金規模の話。
社会課題の解決を目的に、ステークホルダーをつないでいくシステムリーダーシップの話。
メモ止まらない!
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2021.91
・非営利組織は売上とインパクトはイコールで無いからこそ、エンドゲームを設定する必要がある。
・非営利組織に投資の目が集まってきている。
・カーブカット効果。目の前の人の困りごとを。
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2003年にハーバード大学で創刊された雑誌「スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー」から10論文、日本の様々なセクターのやってみる人「わたし」に向けて役立つインスピレーションや知見を集めた本。
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スタンフォードショーシャルレビュー(論文)の優秀10作品を日本語訳してまとめた本。
近年注目の社会的意義のある仕事に注目して展開が進められている。
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世界で最高の企業から、世界のために最高のことをする企業へ。
世界への貢献度を競い合う。
イノベーションからソーシャルイノベーションへ。
単独ではなくコレクティブ。
変化が起きる自律性を作る。
システム全体をデザインする。
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スタンフォードの論文の中から、社会、サステナ、環境などに対して、ビジネスパーソンが学ぶことのできる要素を含んだものを10個ピックアップし、日本語訳として出したもの。
リーダーシップの重要性、パタゴニアなどのサステナをある種の企業ミッションに取り込んだ会社、逆に非営利団体は、グラミン銀行のようにスケールした会社もあるが多くは実際にスケールアップを達成した団体は少ない。問題解決というテーマに取り組みながら、そこからフルスケールと言われる1000万ドル以上の規模に成長するのは難しい。そして、What’s your endgame?というのが今こそ考えないといけない問いである。成長して大きくなることではなくて、一体何が社会課題に対して貢献できたことになるのか、企業もまたもう一度、それを問いなおすタイミングに来ている。経済的成長と、社会的意義の両立を謳った場合、一体何がそのアウトカムであるのか、心地よい響きだけで株価が上がる時代ではないのかもしれない。特に、スケールではなくて、インパクトで測っていくのは正しいと思う。オープンソース化、レプリケーション、行政に渡す、ビジネス化して、商業化してしまう。色々な方法がある。ちょっと思いつくのはNYを綺麗にしたいという思いだ。汚い道、匂い、ひどいものだが、それでもNYは人を惹きつけている。もっと、もっといい街にしようぜ、という考え方は、きっと誰もが思っているけれど、誰も立ち向かおうとしていない。綺麗にするには?クリーンにするには?実は、日本の東京の動き方が最も正しいだろうと思う。これを輸入して、参考にして、新たなNYを作ろうぜ、こんなのどうだろうか。ただ、本書の論点が、あまりにも小規模のこうした非営利団体をどうスケールするか、しないほうがいいのか、というところに固執している点は、ちょっと残念だ。あくまでも、スタートアップ企業のスケールと同じような文脈で、社会的意義のある活動のスケールを捉えている。これはスタンフォードの限界かもしれない。もし経済的なスケールを目指すのであれば、これは経済的活動しているサーキュラーエコノミー、脱炭素などのファンドに任せてインパクトファンドを組成して金を回せばいい。変に、活動している主体、つまりいいことをしている、そのアイデアがある人自体がスケールを目指さなくてもいいと思うんだ。それよりも、その情熱を支援する、お金があればいい。そしてそれはあるのではないかと感じている。レプリケーションも、スケールにおける一つのやり方だけど、ボランティアを横展開しても、あまり意味がない。ボランティアとしてのみ成り立つのであれば、それはそこまでだからだ。
逆に、5章で述べられているのは、インパクトをどうやって成しえるか。Teach for Amricaのようにある種の大成功を収めている非営利団体は、今やMBOのイグジット先としても人気が高いという。さて、こうした、講師派遣のニーズに応えることがどうしてこんなにインパクトがあるのか。例えば、日本では、包装紙の概念がサービスの一つ、特に顧客を大事にしている、ものを大切にしているという表現に使われている。それ��無くしたらどんなインパクトがあるのか、そして誰がなくせるのか。アメリカではそもそも包装という概念が薄い、有料、しかもお店での包装はやってもくれない。だから、包装紙に包まれてくるプレゼントはほぼ特殊な誕生日などのケースを除いてない。包装紙というか、外装をよりエコに問いう考え方で、企業と組むNPOも出てきている。スケールのために、企業をレバにするのはありだろう。一方で、利益偏重主義に取り込まれないことがポイントだ。
では、Bコーポはどうか。非常に興味があったが、考えれば考えるほど、大企業には適合できない。つまり、複雑なディシジョンメイク、事業部やカンパニー制をもち、デリゲーションと地域や国、部門と部、グループに至るまで、複雑な組織構造を評価するメソッドはないからだ。これは遠いなと思う。一方で、カーブカットのように、車椅子でも動き回れる環境整備は、苦しんでいるのは誰かではなく、不公正を改善するための最善の方策は何か、という点にある。ここに集中すれば、物事はとてもシンプルで、公平性こそが国の発展の礎であることに気がつく。改めて、こうした本質的な定義、本質的な国の成り立ちを考えることが大事だ。アメリカは、そうやって発展してきたんだと思うし、日本もまた、社会というものを最も大切に、擬人化して一体になって進んできた国である。この擬人化した融合は、アメリカから見たらやや奇異の目で見られるだろう。物質主義でもあり、キリスト教的な宗教感が強い国だから、一方で、多様化と公平性で他国をのしてきただけに無視できないはずだ。
ティムブラウンは、デザイン系では著名な方だが、こうしたサステナビリティ分野へもかなり早い段階からビジネスチャンスに気がついていたと思う。デザインも、問題解決につながるという考え方。
Collective impactは大前氏も提唱している概念だが、知の巨人達が集まって、社会的課題に対して本気で議論したらどうかというものだ。おそらく、狭い範囲では不利益を被る団体もあるしそういう国もあるだろう。ただ、知の巨人達が出すベストアンサーは傾聴に値するはずで、それを試してみたら、問題解決に近づくのではないか。利益代表とならない人物達のコレクティブな発想を期待するというのも一つのやり方だ。ゼロサムのように、誰かのためにだけやるのではなくて、全体に導入する。子供を見るための中抜けタイムを全社員にというのが対談の中に出てくるが本当に日本的で、みんなが同じように働いていないといけないという前提に立っている。元々、そうでなければ、そんな問題さえない。子供のために、今日の朝は初登校に付き添う必要がある。だから、朝の会議は出られない。当たり前で、むしろ、そこで出た話題を後でキャッチアップする。中抜け制度を作る必要さえないアメリカとの差は大きい。変えないといけない日本のマインドセット。高い牙城だ。