「小人か妖精の仕業」
2021/12/21 22:16
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投稿者:6EQUJ5 - この投稿者のレビュー一覧を見る
小川洋子さんのエッセイは、ちょこちょこ読んでいたような気がするのですが、本は九年ぶりとのこと。
どれも味わい深い。装丁の、磁器の絵付けのような、にじみのあるデザインも秀逸です。
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本棚にいつまでも飾っていたい、
手に取りたいと思わせてくれる装丁。
読み終わるのが勿体無いと思わせられる雰囲気。
さまざまな想いを追体験させてくれる貴重な一冊。
小川洋子という小説家のイメージにマッチした一冊。
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「無意識にあっさり書かれたものより、混乱と逡巡の末にようやくたどり着いた文章の方が美しい」というのが、小川洋子さんの生きざまそのものと思いました。
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ほのぼのとしていて優しい、江國香織さんのエッセイとどこかしら似ている雰囲気です。
本書は、神戸新聞でのエッセイのタイトルをそのまま使っているそうですが、このタイトルの意味が終始気になっていました。
この謎は、あとがきで説明されていました。郷土岡山の敬愛する内田百閒さんが関係しています。
小説家の観察眼は凄いなといつも感じますが、こんなことを考えながら見てるのかと思ったのが、病院の待合室の赤ちゃんの話。
自分の耳をずっと触っている赤ちゃん。
私だったら、たぶん耳がかゆいのかな?くらいにしか思いません。
ところが、小川洋子さんが見ると、
「こんなところに…」という感じで、耳たぶを折りたたんだり、引っ張ったりしている。
適度に芯があるのに柔らかく、複雑な輪郭を持ち、自在に形を変えてもすぐまた元に戻る。
「いったいこれは何なんだ」
この世に生まれてまだ何カ月もたっていない人間が、大きな謎と直面した瞬間に私は立ち会っている。
となり、同じ光景を見ているのに見えている世界が違ってきます。
このエッセイには、阪神タイガースや岡山県のことが出てくるので、個人的な興味が惹かれ読みやすかったです。
また、ご本人の小説に関係する逸話もずい分ありました。
「ことり」のモデルになった文鳥の"ブンチャン"は8年も生きた。
「ブラフマンの埋葬」ほど、のびのびと書けた小説はない。
「最果てアーケード」は、小さい時の思い出から。
とか「琥珀のまたたき」や「小箱」についても書かれていました。
「きかんしゃやえもん」は、最も多く声に出して読んだ本で、なぜかというと… とか、好きな本のエピソードも何冊か紹介されています。
きっと、小川洋子さんに関係した本を何冊か読んでみたいと思うでしょう。
最後の方に「みんな気を付けて!」というようなことが書かれていました。
誰もが経験あると思いますが、私自身が今でもそうしそうになることです。
『小説を読んで、わけが分からない、とつぶやきながら表紙を閉じることは、よくある。
分からない=つまらない、となり、ピンと来ない、退屈、共感できない、認めない、意味不明……。
さまざまな言葉で芸術は否定される。
若い頃は自分もそうだった。自分が基準で理解できないと感じた時点で自分とは無関係と決めつけていた。』
『自分の価値観だけを物差しにして、他者を容赦なく切り捨ててゆく"ツイッター炎上"のニュースは気分が暗くなる。』
みな自分基準で生きているに違いないですが、自分を正当化しすぎる姿勢は、自分を小さな世界に閉じ込めることになりそうですね。
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【目次】Ⅰ 遠慮深いうたた寝/Ⅱ 手芸と始球式/Ⅲ 物語の向こう側/Ⅳ 読書と本と
Ⅰは、「神戸新聞」で連載しているエッセイから。Ⅱ~Ⅳは、あちこちに書かれたものをまとめたもの。日常を切り取ったものでありながら、どこかさまよい出たような読み心地のものもある。
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小川洋子さんが各媒体に発表したエッセイをまとめた本。タイトルは神戸新聞に長期連載(中?)された作品によるらしい。
ぼくの勝手な解釈(例によって雰囲気だけだが)だと、エッセイは軽妙で面白みのある文章、随筆は文学的な香りのする格調高い文章となる。本書は間違いなく後者だ。それでいて内容はご本人もあとがきで書かれているとおり、日常生活での出来事が多くほんわかとした雰囲気に浸れる。
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小説は読んだことがあり、エッセイはどうかな?と思いましたが、読んでいるうちに小説と同じ空気に浸っていました。
表紙が文章を表しているなあと思いました。ブルーがきちんと感、にじんだ感じがほんわか感を。
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小川洋子さんのエッセイ。陶器のような装丁に目と心を奪われて手元に置いておこうと購入。小川さんの日常や心模様、過去や物語の裏側が静かにでもどこかユーモラスに綴られている。小川さんの文章の静謐さはどこからくるんだろう。鋭い観察眼からかもしれない。それでもエッセイならではの小川さんの愛らしいお人柄が滲み出ていて少しずつゆっくり楽しみました
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+++
作家の日常が垣間見られる9年ぶりのエッセイ集!
どのエッセイも結局は
文学のない世界では生きられない
ことを告白している――小川洋子
日々の出来事、思い出、創作、手芸、ミュージカル……
温かな眼で日常を掬い取り、物語の向こう側を描く。
2012年から現在まで続く「神戸新聞」好評連載エッセイ「遠慮深いうたた寝」を中心に、約10年間に発表されたエッセイの中から厳選し、「手芸と始球式」「物語の向こう側」「読書と本と」の4章で構成する珠玉のエッセイ集。
*美しい装丁 九谷焼による陶板画・上出惠悟/デザイン・名久井直子
+++
ときどきエッセイだということを忘れさせられるような、物語めいた世界に連れて行かれる。著者の日常が描かれてはいるのだが、著者の目を通してみた世界は、きっと細部がことにクローズアップされ、奥深くを顕微鏡で覗いたような景色なのかもしれないと、ちょっぴり思ってみたりする。同じ景色を見ても、わたしとは全く別のものが視えているのではないかという気がする。そんな著者の目を、ほんの少しだけ体験できた心地になれて、得したような気分になる。装丁の陶板画のような、滑らかな手触りも感じられる一冊だった。
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小川洋子さんのエッセイ。すごく身近に感じる内容と、どこか不思議な内容とが絡まって独特の世界観だなぁと感じました。作家さんのエッセイは、親近感がわくのでとても好きです。
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◎76ページ “推し”のいる幸福
待ちに待った公演の日程が発表になる。私は半年先の真っ白のページをにらみ、確実に足を運べる日、遠征が可能な日を思案する。その時、命がある保証もないのに、そんなことはすっかり忘れている。未来の一点に、自分の足跡を刻むように、公演名を大きな字で書き込む。その一行が、人生を先回りし、光を放ちながら私を待ってくれているような、小さな幸福を感じる。
さあ、いよいよ当日がやってくる。その日、一回限りの、決して再現ができない、生身の人間だけが作り上げることのできる世界へ、一歩、足を踏み入れる。ちゃんとチケットを持ったか、私はもう一度ポケットを確かめる。
◎86ページ すべては奇跡
客席に入り、薄暗がりの中で自分の席を探す。チケットにあるのと同じ番号を見つける瞬間が、私は好きだ。自分のための居場所がちゃんとそこにあると、示されている気がするからだ。
いよいよ、そう、本当にいよいよ、序曲が鳴り響こうとしている。
これが、コロナ禍前の私だ。あの頃は、何もかもが当然だと思っていた。そのことを、誰に向かってかはよく分からないが、謝りたい。すべては奇跡だったのだ。
◎92ページ いつか終わる
世の中の、すべてのことはいつか終わる。恋人との楽しいデートも、夫婦喧嘩も、つまらない仕事も、病気の苦しみも、本人の努力とはまた別のところで、何者かの差配により、終わりの時が告げられる。
だから、別に怖がる必要などないのだ。どっしり構えておけばいい。終わりが来るのに最も適した時を、示してくれる何ものかが、この世には存在している。その人に任せておこう。そう思えば、いつか必ず尽きる寿命も、多少は余裕を持って受け入れられる気がする。
内田百閒 大手饅頭
ブラフマンの埋葬
最果てアーケード
小箱
夜と霧
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たった数ページのエッセイ 文章なのに時々わっと衝撃をうけるような一文があったり、綺麗な言葉に心癒されたり ほろりと涙が溢れてしまったり、色々な感情を突き動かしてくれるような本だった。
でも小川さんからすると、文章を光らせたのは作家ではなく私自身。なんかどこまでも綺麗な心の人だなと思う。
小川さんの見てる世界を少し知れるような そんな本。私も楽しく生きてるつもりだけど、小川さんの見ている世界ってもっと楽しそう。
もっと色々みて 感じて 生きていきたい
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あとがきに全て私がここに感想として書きたい事が書かれていました。エッセイと一括りにしてしまうのは少し違うと思いますが、それでも小川さんの日常の一コマや考えや思い、過去作の話が詰まっていました。中でも小石を拾いに、は何処までが本当で何処までが妄想で何処までが小説なのか、もっと続きを読んでみたかったです。
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これまでさまざまな媒体に掲載されたエッセイが一冊にまとめられている。ひとつの話が2ページ程度と短くて、テンポよくするすると読めてしまう。
中でもわたしのお気に入りは、『レ・ミゼラブル』に出てくるジャン・バルジャンと小川さんのお父さんを重ね合わせて書かれた「ただそこに、いてくれるだけで」。
自分は親不孝な娘だったと述懐する小川さんが、無条件の愛を注ぐジャン・バルジャンの姿から、父にとって娘が、自分より大切な存在だったのだとしたら、それだけで自分は生まれた意味があったのかもしれないと自己肯定する小話。ユーゴーの原作からの引用も、子育てをしたことのある親ならば納得の一文だ。
もうひとつのお気に入りは、ある学校の図書館で交流した男子学生とのやりとりを描いた「文章を光らせるもの」。ここに出てくる中学一年生の男の子の質問が素朴ながら秀逸なのだが、その質問に心の中で応える小川さんのメッセージもまた胸を打つ。
小川洋子ならではの、無機質なものに生命を与える想像力と、失われてしまったものに対する寂寥感とがたっぷり詰まったエッセイ集。
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「遠慮深いうたた寝」小川洋子(著)
2021年 11月9日 河出書房新社
2022年 1/27日 読了
小説の裏側を覗いているようなので
好きな小説家のエッセイはなるべく読まないのだけれど
小川洋子はぼくにとって特別だ。
一言も疎かにしないのはエッセイでも変わる事はなく真実の言葉に何度も涙しました。
羽生結弦さんはスケートを
大谷翔平さんは野球をやる事になんの迷いもなかったように
小川洋子さんも小説を書く事になんのためらいもない人なんだろう。
そりゃ魅力的なはずだわ。
小説家を目指してる人はぜひ読むべき。