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人間が想起してきた「魂の形」とはなんだったのか、というテーマで日本や中国の神話や伝承、古代エジプト、ギリシアの神話、インド神話、キリスト教のモチーフなど時間と文明を広く渡って思索が展開する。
蝶や蜜蜂、鳥など、翼あるものの中でも特定のモチーフが隔たった文明で共通して魂を表す形として用いられるのが面白い。テーマの力もあってか、生と死、文明を移ろっていくうちに夢うつつのような気持ちになってくる。文章は固めだけど、不思議とふわふわ軽く頭の中を流れていく印象なのでそのせいもあるのか。
「しかし魂について人が想いめぐらすことは、みな夢のように根拠がなく、夢のように真実なのではあるまいか」と著者は書いているが、想い描かれる魂、その矛盾やあいまいさをはらんでいながらも力強いさまは確かに「夢のように真実」としかいいようのないものだった。
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古代、人の魂はどのように考えられてきたかを考察したエッセイ。倭や平安時代、古代ギリシア、エジプト文明や神話を見ると場所や時代が違いながらもある共通点があることに気がつく。それはユングの唱えるところの集合的無意識に通底しているようだ。読んでいてとても興味深く、中でも古代エジプト文明や神話に興味を持ったので、この辺りの著作を探して読んでみたい。
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たま、あるいはたましひ
何を以て羽翼有るや
白鳥黒鳥
漂えるプシュケー
オシリスの国
ラーの舟
蜂蜜あるいはネクタル
魂の梯子と計量
心蔵から蓮華へ
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魂の形を他の生き物に仮託したり、心臓という肉体そのものだと思ったり。
見えないものをどうにか理解できる形で表す、という人間の思考の営みがみられてよかった。
あと解説に引用されているこの方の詩人観が好き。
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多田智満子『魂の形について』(ちくま学芸文庫2021年11月第一刷)の感想。
小説好きにはユルスナールやシュオッブの翻訳者として知られているであろう詩人の、エセー。形象を通じて古人の霊魂観を視つつ、それらを包含する大きな世界観を探る様な内容。読み易く、読後感は軽やか。
的確・懇切なちくま学芸文庫版解説も有難い。