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それぞれリンクしつつ4人の物語が進んでいきました。道がまっすぐならどれだけ楽だろうって思う。まっすぐなんて面白くないよ、って思っていた頃もあったけど、今はまっすぐがありがたい。ただ、こんな風に少し逸れてしまっても、確実に進めるというのは有難いことだし強いなと思います。悲しい事もあったけれど、それもこれも含めて皆また次の新しいステージに進めると思えた読後でした。
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学生時代の友人4人、それぞれの人生を生きる中で「普通」からははみ出していく。そもそも「普通」の人生の人なんて誰一人いなくて、みんなそれぞれの悲しみや苦しみを抱えて生きている。当たり前だけど、そんな当たり前なことに改めて気づかせてくれる1冊。「ない」ものの中に「ある」があり、「ある」もののなかにも「ない」がある、という、深い喪失を経て至った青子の想いを表す言葉に、失うことが全てなくなることではないということを気づかされる。また、玄也の、新しいバイト先での人付き合いの仕方がいいな、と思う。自分が何も立派ではない、と引きこもっていた彼が、相手の弱さに気づき、フォローすること、自分の弱さもさらけ出せるところがいい。ちょうど登場人物たちと同じ年代、自分も周りもいろいろある年齢だけど、変化も受け入れ、自分も少しずつ変わっていく様子が、決して違和感なく描かれている気がした。
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大学時代、いっしょに過ごした仲間たち4人のその後。
30代になった彼ら、彼女らが経験したこと。
娘の死と離婚。
仕事で挫折し、引きこもり。
自身の癌、闘病と死。
妻子との別居から離婚。
人生において30代というのは、いろいろなことを経験し、吸収していく年でもあるが、すべてが順調で思い通りにいくわけではない。
何をもって普通というのか…
それぞれが、空回りしたり、挫折したりの繰り返し。
でもずっと不運が続いていくわけではない。
誰かがそばにいる。
ひとりではない。
それを気づかせてくれる温かな再生への物語だ。
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三十代、四十代って過渡期というか変化期なのに、家族で乗り切るしかないとか個人で乗り切るしかないとかなってくる気がする。環境や状況は人それぞれなんだしというか。なんだかんだ青子の最後まですべてを言わないとこに切なさというか、大人の女性の現実を感じてぐっと来た。言ってしまうと野暮というか青子の男気に共感。重い話をさらっと。一気に書いていたらもっとそれぞれの話は深くなっていたんだろうか。
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出産後2ヶ月で子供を亡くした青子
乳癌が見つかった茅乃
職場の上司によるいじめにより部屋から出られなくなった玄也
里帰り出産した妻が東京を嫌がり、二人の子供と妻に会えない卓馬
大学の合気道部で出合った4人が10年ぶりに集まるようになり、それぞれの距離感で支え合っていく。大学卒業後に違う経験をし、違う困難に直面したからこそ、自分とは違う言葉や考え方ができる。
互いに相手を思いやって慎重に選ぶ一言が、新しい視点や、救いを与えてくれることもある。
多くの印象に残るシーンがあり、心に残る本だった。
色々なテーマが練り込まれているなかで、特に大きなテーマは大切な人の死だと思う。
p221
『茅乃はもういないのに、いなくなった気がしない。それは彼の女に名前を呼ばれ、受け入れられた感覚がずっと続いているからだ。……星から放たれた光が地球に届くには時間がかかる。自分たちが見ているのは過去に発された光であり、目に映る星がすべて、この瞬間に存在しているとは限らないのだ。友人はいる。消えてもまだ、光を届けてくれている。そこにある星も、ない星も、光っているという意味では変わらない。』
大切な人の死に直面した人の多くが、明文化できないながらも同じように感じたことがあるのではないか。
私は自分を大切にしてくれた祖父を亡くしたときに、こんなに無条件に自分を愛してくれた人がもういないことに喪失感を覚えた。でも、深く愛された記憶は残り、自分がボロ雑巾のように思えるときでも最後の砦になってくれる。新しい家族に会わせることができないのが少し残念だけれども…
亡くなった人が遺された人の心の中で生きている、という表現は少し違うような気がしていたが、
遠くで光っている星という表現は素直にいいなと思った。
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「新しい星」を含む8篇の短編集。仲良し4人組、青子、茅乃、卓馬、玄也が各篇の主人公として描かれている。傷つき、痛みを負った者を救えるのも過去を知る親友だからこそ。静謐で温かい物語でした。
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大学の合気道部で同期だった男女4人が1話ごとに語り手となる連作集です。年は20代後半~30代後半あたりでしょうか。
冒頭、表題作の語り手青子は、自身の娘を生後2か月で亡くし、夫とも離婚。
もう一人の女性主人公茅乃は、乳癌となり左の乳房を摘出することに。
男性の主人公のひとりである玄也は、職場でのパワハラが原因で実家に引きこもる毎日。
最後の主人公卓馬は、出産のため帰省した妻とコロナ禍の影響で会うことができず徐々に心が離れていく。
と、4人それぞれが簡単に人に打ち明けられないような重たい悩みを抱えており、それらといかに向き合っていくかというあたりが本作のテーマになるのかなと思いました。
表題作が顕著ですが、話によっては結構深刻な事態が立て続けに起こっているものの、それら悲劇を押し付るでもなく、後からじわじわと胸に迫ってくるように描かれているあたりはとても良かったです。
また、4人を恋愛関係に持っていかせず、適度な距離感を保ち続けているあたりもリアリティがあっていいなと思いました。
静かな佇まいのいい作品だと思いますが、一方で本作のような趣向は特に真新しいものではなく、既に多くの作家さんたちによって描かれてきたような気もしていて、そういう意味では良くも悪くもインパクトがあった前回の候補作『くちなし』と比べるとちょっと落ちるかな、っていうところはあります。
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生きていれば誰でも直面する可能性のある厳しい現実を、静かに、繊細に、柔らかく、丁寧に、美しく、描いている。適度な距離感と温かさを両立しているのが素晴らしい。
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大学の合気道部の同級生たちが歩むそれぞれの人生。
挫折や喪失の中で友情に支えられながら希望を見出す男女4人。
200ページちょっとの分量だが心に残る佳品。
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終始涙がこぼれそうになりながら読了。
友人も家族もみんな大切にしたいし、伝えたい言葉は飲み込まずに伝えたい。不安定な自分の気持ちも、上手くいかない生活のごたごたも、格好つけずに素直に話せる人がいることがいかに大切か。そういうことがすごく伝わってきた。友達って大切。
人の人生ってとても儚い。自分がいなくなっても世界は回り続けるし、自分の人生でこの世に残せるものなんて何もないかもしれない。それでも身近な誰かの心に自分の言葉が、笑顔が残せたなら、きっとそれは幸せな人生なのでしょうね。
のらりくらり生きられる人生も幸せだけど、不器用でたくさん転んだ人だからこそ気づける気持ちってある。「弱さを知っている」ということは強さだと思うから、そんな生き方も悪くない。
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登場人物はみんな何かを失っている。
でもその何かをすべて失った訳ではない。
失って、でも少しの希望は残っていて、その希望を少しずつ、胸に拾い集めていくような、そんな温かいお話だった。
大学の元合気道部の4人は、4人のうちの1人である茅乃の病気を機に、10年後合気道の集まりに参加することになる。青子は子ども2ヶ月で失い、玄也は上司のパワハラで心を失い、卓馬はコロナで家族を失った。そんな4人が少しずつ少しずつ、再生していくお話。
特に好きなシーンは、入院中の茅乃を青子が抱きしめ声をかけるシーン。
「大好きだ。会えて本当に嬉しい。」
そんな言葉を大切な人にちゃんと伝えられる青子はとてもすごくて、とても胸を打たれた。残念なことに、青子が茅乃に会うことができたのはこれが最後になってしまった。
そんな茅乃を亡くし、1人途方に暮れる娘菜緒に玄也がかけた言葉が2つ目の好きなシーン。
「学校でも、家でも、大人になってからでも、なにか困ったとか、手を貸してほしいことがあったら言ってください。どうしたら菜緒さんが楽になるだろうって、一緒に考えます。俺ができることは俺が、俺ができないことでも、俺より…俺とは、違うタイプの生き方をしてきた大人が、あと二人いるから。きっと誰かは、役に立てると思う。迷わないで、なんでも言って」
この言葉をかけられて菜緒が救われたことはもちろん、玄也自身も救われたのではないかなぁと思った!!
やはり彩瀬先生のお話は、とても温かい。
またいつか自分が彼らと同年代になったときに、
必ず読み直したい1冊!!
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この本に描かれているような友と呼べる人がいる人は幸せなのかもしれない。
どんなに困難な状況でも、ちょっとした言葉が、そして心がつながりあえる。この距離感がこんなすてきないことはないなと思いました。
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連作短編の名手、彩瀬さんによる、30代前半、大学の合気道部で同期だった男女4人、それぞれの姿を描いた8編の連作短編集。生まれたばかりの子供を亡くした青子、乳癌になって手術をした茅乃、仕事を続けられなくなり、引きこもりになった玄也、そして唯一、仕事も家庭も順調に見えた卓馬も・・・。それぞれに寄り添う彩瀬さんの筆致が優しい。合気道は、「眠れない夜は体を脱いで」でも出てきたと思ったら、彩瀬さん自身が元合気道部の黒帯保有者なのだとか。今度は、合気道をメインに、4人の大学生の頃の姿を描いた前日談なども読んでみたい。
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あー、なんて沁みる。
優しい雨に打たれたような読後感でした。
大学時代に合気道部の同期だった4人。言ってしまえばただの友人だけど、この距離感だから何かを預け合えることもあるんだろうなと思います。
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初めましての彩瀬まるさん。今年は絶対読もう!と思っていた作家さんの一人です。
生後2ヶ月で子どもを亡くし離婚した青子
育児中に乳がんが発覚し闘病中の茅乃
パワハラにあい会社を辞め引きこもっている玄也
夫婦関係に悩む卓馬
大学時代の合気道部仲間4人の、それぞれの悩みと友情と…「愛するものの喪失と再生を描く」8篇からなる連作短編集です。
4人の関係がとても良かったです。距離感がリアルで、お互いがお互いを思い合い支え合っていて、家族以外に愚痴や悩みや本音の言える相手がいるっていいですよね。コロナ禍での生活もストーリーに反映されていて、描かれる悩みだったり問題だったりも等身大で、読みながら共感したり自分に置き換えて考えたりしてしまいました。
彩瀬さんの他の本も読んでみようと思います。
あとこの本は、表紙がとても素敵ですよね。写真なのか絵なのかどっちかなぁと思っていたら、Iskaさんという方の写真でした。まるで絵やCGのような、ちょっと幻想的な景色ですよね。写真集も出ているようなので、じっくり見てみたいなぁ。