紙の本
コロナにより世界は変わるのか
2021/12/03 20:58
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投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
コロナ禍が世界や人類に明らかな変化をもたらしたかはわからない中で、それを生き延びるというか、やり過ごすために、自分の心の中を少し整理しておいたほうが良いようだ。「コロナピューリタリズム」「コロナアンビバレンス」という言葉に、納得しながら、読み進めると、その先に光が見えたわけではなく、変わらない世界があり、そしてそれを少し視点を変えてみている自分がいることに気づいた。日常という幻想が覆い隠しているものが、表出したのだろうか。
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コロナ禍という非常事態において、「ふだん『日常という幻想』が覆い隠している様々な過程や構造が可視化される場面」を丁寧に描き解説されており、納得できるものも多かった。著者は「コロナ禍がそれほど社会や人間を変えるとは思っていない」と諦めに近いことを書いているが、当初は「パンデミックは忘却されやすい災厄だ。だからこそ適切に外傷化される必要があり、望ましい社会的変化という瘢痕を残す必要がある」とも書かれている。最終章で、優生思想について言及し、鬼滅の刃についての論評もあり、興味深く読ませていただいたが、コロナから離れての社会論評と書かれているが、底ではつながっていると思いながら最後まで読み切った。
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2022年2月、新型コロナウイルスの世界的流行という未曾有の大災害の最中にいます。
日本でも感染の蔓延を防止するための対策がとられています。マスクをせずに外出することなど考えられず、飲食店は時間制限が行われ、飲食を人とする機会がほぼありません。大規模な集会やイベントも制限されています。
そしてそれに慣れてきている自分がいます。毎日のように居酒屋で談笑をした人達とはもう2年も会っていません。コロナ前の写真を見返して、大人数の集合写真やマスクなしで笑顔で人と近接している写真で一瞬ものすごい違和感を覚えてしまいます。コロナ前の時間のほうが人生の大半だったのに、今ではそれはまるでパラレルワールドの自分が歩んできた、別世界のものだと錯覚してしまいます。
コロナによって何が変わってしまって何が変わっていないのか。そしてその変わったことを私達はいつまでも忘れずに覚えていられるのか。人と実際に会う、ということはオンラインと何が違うのか。そんなことを考えることのできる本書です。
ひきこもって読書やNetflixなどをひたすら味わって、そんな生活もそれなりに楽しくやってきたけれど、やっぱりそろそろリアルに色んな人にあって話したいなあ。本書を読んで、人と会うということが私に不安と恐怖を感じさせたり私の存在を揺さぶったりする「暴力性」をはらんでいる一方、誰かと目の前でやりとりをするということの本能に訴えかけるような心地よさを与えてくれたことを思い出しました。
今、私はそれを求めているんだなぁと感じています。