投稿元:
レビューを見る
小佐野賢治を大叔父に持ち、半端ない大企業の御曹司として生まれ、大学院在学中に台湾で企業したオープンリーゲイの歌人。というプロフィールを全く知らずに読み始めた。
彼の詠んだ歌をどこかで見かけて、ずっと気になっていた。
読み始めてだいぶ過ぎた辺りで、もしかしてこの「小佐野」ってあの「小佐野」?となり思わず調べてしまった。そうか、あの小佐野家の次男氏だったのか。
日本一恵まれたシングルマザーの息子、と言うのが大げさでもなんでもなく。小学校から慶応に通い周りにいるのも同じようなセレブ子女。そんな中で向き合うセクシャルアイデンティティ。
中学生で気付いた自らの性的指向。今よりももっと公にしにくい時代のなかで、ひどいいじめや差別や排斥されることなく生きてこられたのはやはり恵まれた環境ゆえか。
それでもいくつもの出会いと別れの中で、心身ともに傷つきながらの時間は、小説という形で読むよりも多分もっと深い苦痛にまみれていただろう。それをそれほど痛々しく思わせないのは、わざとなのか。
ところどころに差し込まれるその時その時のこころの吐露。
短歌という形でしか放出できない熱は、熱として熱いまま読み手に迫る。だから、小説部分よりも歌に心惹かれてしまう。
投稿元:
レビューを見る
P191〈歌は、僕にとってずっと、狂おしい思いやひとには言えない秘密を書き留めておくためのものだった〉
なるほど、苦しい胸の内を吐露するように書かれている。
友人のアイコちゃんとのエピソードは
切なくて、どうにもならない現実を突きつけられた気がした。
しかし、アイコちゃんとのこと以外は
ダンと、読者の距離ができてしまったのではないか。
〈経済的に恵まれた〉ことが殊更強調され
P256
〈ふつーの家で育ったふつーの人にはわかんねーような色々があって、〉
庶民の私にはわからないこともたくさんあり、そこが残念だった。
投稿元:
レビューを見る
ゲイである著者のこれまでの恋愛や自分・家族の心情、状況、その頃の日本の現状などをつらつらと書いた物語だった。
著者は、その時その時思ったことなどを短歌に書いていて、それが所々載っていた。
83年生まれの大卒御曹司ヤンキーだった著者が過ごした時代(80〜00年代)の日本がどれほど無法地帯だったのかを知ることができた。当時は、未成年の酒・アルコール販売は当たり前に行われていて、大学生に対しては黙認状態だった。
また、未成年が出会い系サイトに登録してもいいし、ルーズソックスが流行っていた頃は、スカートは膝上30cm、ルーズソックスを伸ばすと2m超が当たり前で、それが王道と言われていたなど、現在と違うのがたくさんあった。そんな世の中だったら、相当治安が悪かっただろうなと思った。
著者がLGBTで色々なことに苦しんだこと、親の反応・心情などを知ることができ、自分が想像していたものよりも大変で苦しい思いをしていることを学んだ。
投稿元:
レビューを見る
素敵な歌がたくさんあった。メモした。
生まれた境遇的には恵まれてるけど、本人にしかわからない悩みとか苦しみ、そういうののキツさって本人にしかわからないから、ただ環境だけ見て簡単に他人に「恵まれてるね」とか言うのはよくないってことに気付かされた。
“「理解」にいたる道のりは険しい。ひとを理解することは、ひとの痛みや苦しみを追体験しないかぎり困難だと思うから。”
投稿元:
レビューを見る
青春の悩み、不安、葛藤、苛立ち、いろいろ
それから成長
性的指向や家庭環境は私自身とかさなるところは全然ないけど、この自伝的小説を読んで胸が苦しくなったりドキドキしたりとても共感できた。
若くてエネルギーに満ち溢れて、矛盾だらけで痛々しくて、愛おしいなあと思った。
短歌たちもとてもいいと思った。
小説と短歌が両方あるのおもしろい。