投稿元:
レビューを見る
考古学の世界はどうなっているのか。その実態に迫ったのが今回の本だ。
昔、発掘調査した遺跡をもう一回掘るとはなにかと思った。
最先端の考古学研究・発掘調査技術・自然科学分析などを活用することで、以前では分からなかったことが分かる。
長崎県佐世保市の福井洞窟を例に上げている。1960年、1963年、1964年の3回、日本考古学協会は発掘調査を行った。
この調査によって、隆起線文土器には放射性炭素年代測定によって約12600年前のものと判明した。当時としては世界最古級の年代だとして世界的に注目されるなどの成果を上げた。
その後、佐世保市は、福井洞窟をまちづくりに活かそうとして、2012年に約60年ぶりとなる再発掘調査を行った。
約14600年前の層では、炉跡や石器の制作跡が見つかった。他にも当時の寒冷だった環境も復元された。
2021年にはガイダンス施設「福井洞窟ミュージアム」が完成した。
ガイダンス施設の意義について著者は言及している。
一番良いのは、遺跡の近くにあり、遺跡を見ながら遺跡のない要素把握することがガイダンス施設に求められる最大の条件と述べている。
発掘しても広く知ってもらう機会がないとどうして基調で保存する必要があるのか一般市民には伝わらないからなあ。
考古学を巡る問題も取り上げているが、このところ遺物実測経験の少ない埋蔵文化財専門職員が増えていることも取り上げている。
大学での発掘調査の減少、考古学関連作業のデジタル化などが要因だ。
実際に遺物測定をして、観察力があるかどうか不安になるので、知識と技術をもとにした観察力を身につけたり、 レベルアップする環境を整える必要があると指摘している。
普段知ることのない考古学の実態に迫れてよかった。