紙の本
人口政策の重要さを再認識するための良書
2022/02/01 16:40
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Takeshita - この投稿者のレビュー一覧を見る
良い本を読んだ。著者は元厚労省官僚で介護保険の制定に関わった人だが、介護保険法案も何度も廃案の危機に見舞われ施行まで6年もかかっが、最後は国民各層や現場から是非介護保険制度を導入してくれと政府を督励する声が高まったと言う。今介護保険制度の恩恵に浴している国民は多いだろう。同様に日本の少子高齢化も今手を打たなければ、加速度的に人口減少が早まり2050年には国民の38%は65才以上の老人になる。その時起こるのは深刻な世代間対立と経済停滞であろう。本書は小説仕立てではあるが、文中のデータは最新のものであり諸外国の政策の紹介も詳しい。EU諸国の例のとおり人口問題は国の政策で左右される所が大きい。日本も早急に手を打たなければ国家じたいが益々衰退する。貴重な警世の書である。
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介護保険制度の立役者であり、地方創生総括官などを歴任した元官僚である著者が、小説形式で人口減少問題とその対策について解説。
人口減少問題に関する様々な論点やその対策の方向性がよく整理されていて、非常に理解が深まった。
本書一押しの施策である子ども保険については、以前に構想が浮上した際には、保険にはなじまないのではないかと思って違和感があったけが、本書を読み、社会全体で連帯して子どもの養育を支え合う仕組みとして結構いいんじゃないかと思えてきた。
介護保険制度の立案から施行までに携わった著者だけあて、制度設計や法案化のプロセスが臨場感のある形で再現されていて、国の政策立案過程を仮想体験できるというのもポイントである。
500頁を超える大作ではあるが、読み進めるのに苦を感じることはなく、小説としての出来は別にして、政策関連書籍としてかなりの良書だと感じた。
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止まらない人口減少を阻止し、再び成長する日本を取り戻すための政策作りに奮闘するチーム。人口減少が起こるメカニズムと時代背景、他国の状況、子育てと仕事の両立の難しさ、途中離脱、再就職が難しいが故に気がつくと出産適齢期を超えてしまう状況、地方創生、移民政策の意味すること… 様々な要因が複雑に絡み合うテーマなんだけど、データと共に小説仕立てにしてあり比較的読みやすかった。(と言いつつ読了までじっくり2週間掛かった)
最後は熱く締めくくられて読了感は◎
人口問題、最終的には移民受け入れするしか無いんでしょー的に考えていたが甘かったなぁ。色々知る必要があると思った。
辞書のように分厚い超大作だが読む価値あり。
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小説に見立てて書いたのは、分かりやすさを追求した結果だと思いますが、小説としては評価するには値しない。
さりとて、内容もほぼ実態を並べているだけの感あり。
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500ページ超の大長編。本書はたしか日経の書評で知ったか?(うろ覚え)
ずいぶん前に図書館に予約したが、1回目の順番をコロナ疎開中で逃してしまい、2度目の予約。1度目より早く回って来た。それも分かる。そんなに多くの人が手軽に読めるものではなかった。
ともかく、日本における喫緊の課題を、より多くの人に知ってもらおうと小説仕立てにしたが、その思い、企図はともかくとして(悪くない)、小説としては成功したとは言い難い。終盤の、このままでは日本はダメになるという熱い思いの総理答弁には心を動かされるものがあるが、お話としては時系列を辿り平板で、人口問題に多少でも関心を持っていなければ、なかなか読み進むのに苦労する。要は、小説的にストーリーに没頭していけないし、登場人物への感情移入も難しい。
が、そんな題材を小説にして世に問うてみようという試みには拍手を送りたい。
なにより、筆者が、旧厚生省官僚であったこと、政争、というか権力闘争に揉まれ、自身が進めてきた地方創生、日本再生を結実できなかったことへの慙愧の念もあり、人口減少という看過できない問題を、ひとりでも多くの国民に一緒になって考えてもらいたいという思いは強く感じた。
さて、前人未到の(という言葉は、本来明るい未来、希望に向かって使う四字熟語と思うが)、ハイパー高齢化によって、若い世代の活力がそがれ、社会機能の停滞が国力を衰退させていく。しかも、そのツケは明らかに次世代が負わされることになる。未来への解決策、処方箋が果たして示せるか!?
物語はフィクションとしているが、本書の中で使用される資料、データは本物らしい。その事実だけを拾い読むだけでも、十二分に人口問題に関する知識を得ることができる。
また、政策を実行してくまでの過程を、それなりに臨場感を持って感じとれるのは、小説仕立てとした故か。政策実現までのノウハウは著者の経験が大いに活かされ、リアリティあるものになっているのだろう(それが小説として面白いかどうかは別として)。
憂国の諸氏は、ひとまず手にしてみては? 頭数(=人口)がそのまま国力、という考えがひょっとしたら前時代的なものかもしれないが、現実を知り、よりよい未来を考えていく上での、必要最低限の知識は、間違いなく補完できる内容にはなっている。
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フィクションではあるが、人口をめぐる歴史や現状や将来推計は事実に基づく情報なので、人口減少という社会問題を理解する事ができた。
また、官僚や政治家がどのようなプロセスで、制度づくりを行うのかというプロセスをあまり意識した事がなかったため、興味深かかった。
なぜ、一億人国家なのか引っかかりながら読んでいた。総理答弁で語られた内容は理解でき、将来世代にとって希望を持てる国にしていく必要があることも理解できできるが、国土も狭く、食料自給率も低い日本が、人口を維持することが本当に必用なことなのかは語られておらず、国家より、もう一段上のレイヤでも、この問題を考えるべきではないのがと思った。
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NHKのニュースで紹介されていたことをきっかけに読んだ。小説の体をとっているが使用しているデータはすべて実在のものであるため内容は極めてリアルであり、人口減少がはらむ問題とその解決策が詳細に議論されている。最終的にこの小説内では「人口戦略法案」は廃案となってしまったが、首相の「今回のことは”『始まり』の終わり”でなければならない。人口戦略の第一幕は終わったが、第二幕、第三幕が開かなければならない。さもないと日本の本当に”『始まり』の終わり”になってしまう」の言葉は日本国民みながしっかりと受けとめるべき。
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日本における2020年の合計特殊出生率は1.33。人口減少を止めるには、これを2.07以上に回復させるしかない。それは容易なことでないにしても、早急に何らかの打開策が必要なのは多くの国民が認めるところ。
ただ、ただちに解決策を講じても人口減に歯止めがかかるには長い期間を要する。また、結婚・出産は個人の問題であり、国が介入すべきでないという根強い意見もある。 それでも、スピードをあげて進む少子高齢化に対する国民的議論は必要というのが、元厚労省幹部の著者の考え。 本書は、政府内に立ち上げられた「人口戦略検討本部」で官僚や専門家が真剣な議論を行い、法案を立ち上げ、国会に提案する過程を描いた小説。
登場人物やストーリーはフィクションだが、素材はすべて公開された資料や文献に基づく事実。
この本で提示されている「人口戦略(案)」は非常に勉強になった。そのポイントを以下に記しておく。
①非正規雇用や専業主婦も含めすべての子育て家庭に対し産休・育休給付や児童手当を大幅に拡充するため、「子ども保険」を導入する。②不妊治療や妊娠・出産、ライフプランに関する相談支援、ライフコースの多様化 ③若者に焦点をあて、子育てのしやすい地方の創生を目指した地方大学の強化や地域の人材教育推進、二地域居住、多拠点居住、地方体験の推進
なお、移民政策については、西欧諸国の事例から失敗すると大きな問題になることもあり、意見の集約が図れなかったという設定。
人口戦略検討本部における様々な角度からの議論に圧倒されたが、それとともに、制度設計のできる官僚へのリスペクトが高まった。
また、法案の与野党への根回し、与党内議論のプロセス、国会提出のタイミングなど、経験を積んだ著者ならではの現実的なストーリー展開もさすがだなと感心させられた。
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286まで読了。
子ども保険、というか提案されている「両親手当」「育休中の配慮」は形だけで終わりそうな気がするなあ。
両親手当・・・妊娠判明時に就労していた非正規含む女性はその後退職しても、育休に相当する期間(子が1歳まで、保育所に入所できない場合は最長2歳まで)終了後に再就職するという旨を申請すれば、育児に支障のない範囲で職業能力の維持・向上に努めることを条件に、就労者と同等の扱い(所得比例額プラス最低保証額)とする。
→これ、失業保険と同じで「就職する気ありますよ~」みたいに「子ども産んだ後も働きますよ~」って言ってたらもらえるやつやん。失業保険は活動等で一応その気があるか判断できるけど、働く気があるってどうやって証明するの?口でなんぼでも言えるやん。言ったもの勝ちやん。
育休中の配慮…育児に支障のない範囲で職業能力の維持・向上をはかるため、業務に関する情報提供や研修機会の確保とともに、育休明けの公平な職場復帰に務めることとする。
→企業も困るよね。イーラーニングの動画とかメールで送って、「このエクセルのスキル自分で勉強しといてね~」「この本読んどいてね~」っていうくらいじゃん。
・ライフプランの啓発、不妊治療支援
不妊治療支援はまあ理解できる。
ライフプランで、学生結婚妊娠した人の再就職とかあるけど、よほど若い20代後半とかじゃないと難しいのでは。
日本の企業は年齢差別があってミドルエイジの転職就職は難しいし。30代未経験で幼稚園・小学生の子持ちですをいったい誰が雇ってくれるんだろうか。絵にかいた餅。
まず国が国家公務員・地方公務員として、アルバイト並みの薄給や外部委託ではなく正社員並みの待遇で30代以上未経験子持ちを雇ってから言えよ。教員の常勤講師とかも。
・地方創生
地方大学の教科、地方における人材教育の推進
若者を地方居住させる
テレワークの推進、二地域居住と兼業・副業の推進
農山漁村体験や地域留学
テレワークできる職種は限られてるし、テレワークだけで生活できる職種はもっと限られる。薄給のライターと高給のエンジニアみたいに。
・移民政策
低賃金単純労働の技能実習生の扱い 特定技能2号は実質移民になるのでは
留学生は金の卵
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人口減少対策について、真正面から書ききった。元官僚だから書ける立法府の内情はさておき、子供保険を含む対策案の説明は理路整然としていた。なかでも親世代が子供世代に投資・支援するという発想は、国債発行しまっくって子世代に借金を押し付けている現状を変えるすばらしいプロパガンダ案と言えよう。未来への投資を箱物やインフラにするのではなく、子供たちにする! この発想を日本国民が共有できれば・・・・
公表されている統計データを読み解くだけで、日本の暗い未来が想像できてしまう。老人ばかりが多く、若い世代が極端に少ない国に、若い世代が住み続けたいと思うわけがない。子供をつくる・つくらないは個人の自由だが、人口減少は悪いことだというコンセンサスが必要だ。有識者(健全なマスコミ、文化人、科学者、経営者、政治家等)は本書を読んで勉強し、将来世代のために日本の人口減少に歯止めを打つ必要性を強く感じてほしい。
以下、個別案の感想。
・子供の授かりやすさの原因の一つが、個人差の大きい卵子の数であり、これはAMH検査をすると推定できるというのを初めて知った。成人祝いにAMH検査をやるべきでは?
・世代別に比較したコーホート出生率で、1992年以降生まれの適齢期(20代)での出生率が前の世代に比べ下がっている事実はもっと危機感を煽るべきだと理解した。このままでは10年後にはさらに深刻な事態になる。
・子供保険のターゲットが常勤で働く母親だけでなく、パートや働けない親の子も対象にするべきだという主張は腹に落ちた。育児休暇ではなく、育児手当を全ての親に渡すための子供保険は現政権で実現してほしいものだ。
・介護保険は最近の政府施策では良い保険だと思っていたが、成立まで6年もかかったのか。このへんの舞台裏をNHKあたりでドラマ化しないかなあ?廃案になりそうになったら、細かいことを反対していた市町村の担当者たちが慌てて賛成すべく立ち上がったくだりは参考になる。現場力が日本にはまだあることを誇りに思う。
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MBAのさかいさんが進めてた本。
経験豊富な官僚の方が、日本の少子化、高齢化について一通り分かりやすく解説してくれている。
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小説形式で読みやすく、基礎知識からはじまりながらも網羅的に人口問題の個別テーマが語られていて、且つその対策案の設立の難しさを介護保険設立との対比から説明されていて、とにかく面白い。
500ページを超えるが読み物なのでサクサクいける。テーマ違うけど、三枝シリーズを読んでる感じ。