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歴史の隙間に落っこちてしまっている様な物に調査と推理で迫っていく過程はとんでもなくスリリング。
ラストも痛快。
ゆかりのある地名も多く、より楽しめた。
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第166回芥川賞候補にもなった乗代雄介さんの作品。高校で歴史研究部に所属するぼくが、人を喰ったような大阪弁を話す捉えどころのない中年男と一緒に「皆のあらばしり」という謎の本を探す物語。古書~ディズニーネタまで守備範囲が広い謎の男の謎の博識っぷりが面白い、ラストの展開は予想できず、終わってみればミステリー小説のような感じだった。歴史純文ミステリー ←この響きに興味ある方はぜひ。
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歴史研究部の高校生が、地元の歴史を調べるために訪れた皆川城址で、関西弁の中年男に出会う。
この中年男がとにかく胡散臭さのかたまりなのだが、高校生の少年にとっては、驚くほど史跡に詳しく、少年は胡散臭さをぬぐえないまま、中年男に引き込まれていく…。
見つかっていないのに目録に記されている『皆のあらばしり』という本は、本当に実在するのか?
中年男は少年を使って、その本に関連する人物の家へもぐりこませ調査させるのだが…。
謎の怪しすぎる中年男の目的もよく分からず、なのにあまりの博識と計算高さにどんどん引き込まれ、謎解きに夢中になる少年の気持ちがよく表れていました。
こんなに自分の想像を超えて、何でもよくお見通しで自分の知らないことを何でも知っている(しかも自分の好きな分野で)大人が居たら尊敬して、師事を仰ぎたくもなることでしょう。
中年男が語ることは、一つ一つもっともなことばかりでついに少年は中年男を信じて行動を起こすのです。
中年男と高校生、ぐうの音も出ないほどの博識、世渡り術を知る者とまだ世の中を知らない少年、この取り合わせが見事だと思いました。
歴史的な謎解きもあり、ワクワクもします。
そして…ラストが愉快で見事。してやったり、です。
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高校の歴史研究部に所属する「ぼく」は皆川城址で大阪弁をしゃべる怪しい中年男と出会う。旧家に伝わる謎の本は「皆のあらばしり」。小津安二郎の親戚にあたる小津久足が著した本かもしれず、まだ世に出ていない。見つかれば大発見の代物らしい。
架空の場所かと思いきや、読みだして調べると、栃木県にあり、小津久足も実在の人物で興味津々。本に纏わる歴史謎解きに、大阪弁を喋る謎の男と青臭い高校生浮田との会話に絶妙な味わいがある。
中年男のうさん臭さが鼻に付くのだがまあ良しとしよう。
ラストの大逆転より、中年男が浮田に語るエピグラムにハッとさせられた。「打算っちゅうのは十中八九、空ぶるもんや。大半の人間はそこでやめてしまうから打算に留まるんやで。それを空振りしてなお続けてみんかい。打算でやっとったら割に合わんことばっかりなんやから、そんな考えはすぐに消え失せるわ。積み重なる行為の前には、思考や論理なんてやわなもんやで。損得勘定しかできん初手でやめてしまうアホは、そんなことも理解できんと、死ぬまで打算の苦しみの中で生き続けるんやけどな!」
一見軽薄な処世術に聴こえるが、何とも深い洞察に満ちた言葉に思えないか。
「この世はな、知らんことには、自分が知らんという理由だけで興味を持たれへん、それを開き直るような間抜けで埋め尽くされとんえん。せやから、自分の知っとる過去しか知らずに死んでいきよる。八十でくたばる時に考えるんは八十年間のこと、つまり頭からケツまで己のことや。己のことを考えるから苦しむっちゅうことに気付かず、今に通用する身の振り方だけを考えて、それを賢いと合点して生きとんねん。情けない話やの! 青年が、そんな退屈な奴らを歯牙にもかけんと生きていけるよう、わしは願うばかりやで」
これに、私は鹿児島弁交じりの長崎弁で返そう。
「そげんよ、男はん。良う言わした! じゃけん、こん年になってん、あたい(私)もバタバタしちょるとさ」
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最後まで面白く読んだけれど、最後が私的には残念。スッキリしなかった。作者の博識にはびっくりさせられた。
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歴史研究部の浮田青年が妙に歴史に詳しい男との出会いで、皆川城内村に伝わる古文書などの来歴を調べる物語だが、地元の旧家の竹沢家の娘も絡んで話が展開する.『皆のあらばしり』と称する来歴不明にの古文書の存在が明らかになり、男の提案で竹沢のひいじいちゃんの周辺を探索する浮田と竹沢.浮田の冷静さが判明する最後の件は楽しめた.小津安二郎や土門拳が登場したり、天狗党の乱など栃木の歴史的事項も出てきて、著者の幅広い調査の片鱗が見えた感じだ.
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途中、歴史の説明みたいなところは読みながら眠くなってしまった。
この怪しいおじさんの目的は何なのか、ということが気になって最後まで読んだけど、あんまり面白さはわからなかった…。
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登場人物は歴史研究部の男の子と、謎の関西弁の中年男のほぼ二人。
この二人の会話で物語が最後まで展開していく。
構成や知識量はすごいなと思った。
でも…皆さんの評価が高いので期待していたが、私には面白さがいまいちピンとこなかった。
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鮮度のいい刺身みたいな1冊。これこれ〜♪ と口に含めばまぁ小さな切り身なのにしっかり満足感出るから不思議。刺身の価値の本質は、希少性や味ではなくその小ささにある。サクにかぶりついたところで刺身の10倍満足するかと言ったらそうじゃないので。
図書館で適当に借りてきたので地元栃木の話だとは思わずびっくりした。よくできたショートショートを膨らませて書いたような感じ。かと言って水っぽさはなく身もしまっているし、史実に沿った内容なのでアカデミックな興味もそそる。
歴史の謎が解明されていく話の流れと、高校生が才に溢れた謎の男を認め、そして認められようと思う心の流れが合流して完結するラストは美しく実に見事。
ちなみに栃木市には共学の進学校はありませんので國學院栃木の特進クラスとかなのかね?だったらラグビーの話で男が食いつくだろうから、架空の共学進学校なんだろうな。栃高と栃女が統合した世界線の話?(そう遠くなさそう)
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学者の精神はもちろん最後の青年と謎の男の関係性に心打たれる。そして最初の1文から読み終わる最後まで、乗代さんの文章は心地良い。
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著者の作品らしくふゎっとした柔らかいストーリーながらも、時々に軽い緊張感を味あう展開が最後まで続き、飽きさせない内容。一方で最後まで回収されなかった布石や背景設定が多く残り、消化不良の感じもする。それも併せて作品のユニークさと思えば、満足感のある面白さがあった。
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設定にも違和感あって、歴史用語が多すぎてよくわからなかった。日本酒のあらばしりって言葉が好きでそれがタイトルに入ってて惹かれたのと、直木賞候補って書いてあって読んでみたけど、、、
メルカリで即売却。
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栃木県皆川城址で出会った大阪弁の男、彼の探す「皆のあらばしり」という本を巡っての高校生歴史研究部の僕との仲間意識と協力。天狗党などの歴史の蘊蓄も勉強になったが、最後の僕のきらりとひかる置き土産、ミステリーのような味わい。