紙の本
新聞広告で紹介されていたので紙の本を買いました
2023/06/20 14:42
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投稿者:みえ - この投稿者のレビュー一覧を見る
短編集ですが、一話目から自分にはハマらず、読むのがシンドいです。メルヘンのような、世間離れし過ぎのような、なんだか中途半端で、好きな人にはたまらないのかもしれませんが、自分は無理でした。途中まで数話、読んで置いてあります。
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あとがきに代えた「季節の力」にこの本の意図が書かれている。
”人間は季節に支配される弱者であり敗者である”
同じように行動しているつもりでも季節に包まれその意味は変わってしまう。ほんとうにそうだ。
(”季節の移ろいを暮らしに取り入れる”というような上から目線よりよほど腹落ちする。自分は”地球にやさしい”という言葉が嫌いだがそれを同じ感覚かもしれない)
24の短編に通底しているのは死者や人ならざる者との交感、美しい表現の中に、時に下世話だったり時にメタな著者視点が出てきたり、意外な結末であっさり話を打ち切ってきたり、なかなか食えない面白さがあった。
表題作の「ほとほと」のひさ代の暮らしは自分の超理想だ。
P10 カンカンでもコツコツでもなく手を打ち当てて、ほとほとなる戸は、たぶん雪で湿っているのだろう。密やかな、おおやけにしたくない負い目も、その音に込められている気がする。
P10 どうぞここでゆっくりなさってください。そしてときどき、昨夜のように、私の前にお出ましください。二人でたのしく、ほとほといたしましょう。
P49 自立とは、自分の欲望を手放さないことでもある。結衣子は最後まで自立した女として死ぬ覚悟ができていた。(エイプリルフール)
P177 この世に地獄があるなら、その地獄が自分を受け入れてくれるかも知れない。それでもいい、自分を待ってくれている場所があれば、このまま歩いて辿り着きたいと思った。
P185 とことん苦しめば、怨念はおのずから力を為すものだ。わかるかね?とことん苦しみ憎み、呪い、悲しむ。それが力になる。いいかな。中途半端はよくない。苦しみも孤独も怨みも、命のギリギリまで突き詰めるのだ。そうすれば、呪いは祈りになり、憎しみは優しさを生み、怨霊は神になれる。(夜の梅)
P227 水を呼び寄せ雨を忍ぶ、ぼってりと必死な日本的紫陽花ほど季節を感じさせるものはないだろう。(紫陽花)
P274 モニワ羽虫は施設に入ることになりそうだという事実を、自分の運命とは思えなかったし、本心ではこのままこの草地の茅萱の中で、ウシオイ虫と一緒に死んでしまいたかったのだ。けれどウシオイ虫は運命を受け入れた。だから自分も受け入れなくてはならない運命があるのかもしれない。
虫たちの沸き上がる鳴き声が、一瞬静まった。(虫時雨)
P315 人間は季節に支配される弱者、ある意味では敗者です。塗り替えられ、消し去られ、何かを染め付けられる。そして生き返る。季節は抵抗できない相手なのです。それを肯定するしかありません。このような人間の物語は、今生のみで終始するものでもありません。境もなく、今生とあの世を行き来してしまいます。これもまた季節の力が働いていると思えます。いったん終わっても、蘇るのが四季。(季節の力)
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俳句や短歌を詠むように、短編を詠む髙樹さん。
切なかったり、愛しかったり、ゾッそしたり、でも神秘的で上品なそれぞれの季語の物語。
良き日本、四季、季語。そんな風流なものに思いを馳せてしまう読後感だ。