投稿元:
レビューを見る
著者は本土から沖縄那覇、名護にうつりすみ、ヤマトンチューであることの苦渋を抱きながら、沖縄への熱い想いを語る。そして言う「戦後77年、沖縄復帰後50年が経とうとする今も、沖縄ではいまだに戦争が終わっていないのです。沖縄県民だけいつまでも頑張らせるつもりですか。そんな時代はもう終わりにしましょう。
沖縄はアメリカ軍に基地を提供した覚えはない、アメリカ軍に強奪されたのだ。それがいまだに続いている。保守の本流である翁長雄志がチムググル(私心の無い真心)で訴えた。「イデオロギーよりアイデンティティ」「保守と革新が、基地を挟んで、経済か平和かと白黒論争をする時期ではない」と、そこからオール沖縄が生まれた。
中国から戻って、いまだに住民票は沖縄県名護市にある。東京にいて沖縄のことを考える暇もない状況で、玉城デニーが沖縄県知事選にかった。あのバーベキューをしてチャラいという印象を持っていたが、この本を読んで、玉城デニーがなぜ再選されたのか理解できた。
玉城デニーはいう
「沖縄には、戦後74年を経ても、国土面積わずか0.6%にすぎない沖縄に在米軍基地の70.3%が集中している。もうこれ以上、米軍基地を新たに作ることはできない。」
「辺野古地域の埋め立て予定区域は、ざっくり言うと、辺野古崎を挟んで辺野古集落よりの浅瀬と大浦湾の深場の2手に分かれている。大浦湾側の深い海にはマヨネーズ状態と言われるような超軟弱地盤の存在が発覚しており、難易度の高い地盤改良を含む工事の先行きが全く不透明なまま工事の既成事実化ばかりが進んでいる」
政府の見積は変更して、工期は12年かかり、総予算も9300億円と言っている。
沖縄県の独自の見積では、工期は13年、総予算は2兆5500億円かかる。この違いは何か。全く明らかにされていない。不都合な事実は隠蔽するという安倍政権の特徴だ。
大浦湾の深場に広がるマヨネーズ状と言われる軟弱地盤が発覚したのは2018年3月。防衛省は2015年の時点で軟弱地盤を把握していたが、その情報を隠蔽していた。そして、軟弱地盤は、水深90メートル時点まで達しており、日本にはその深さの地盤改良に必要な作業船は存在しない。
大浦湾側の深い海に、軟弱地盤を改良するために、7万7000本もの砂ぐいを打たなくてはならない。
実際、工期も総予算も未確定の事業となっている。
2020年3月 「在沖米軍基地の整理縮小についての提言」
「辺野古新基地計画は、軟弱地盤の存在によって工期と費用が増大し、技術的にも財政的にも完成が困難である。新基地建設は即時中止し、本来の政策目的である普天間基地の危険性除去のため、同飛行場の運用停止を急ぐべきこと」(20年前の普天間合意がありながら、普天間飛行場は運用され続けてきた)「辺野古新基地計画は、技術的・財政的に見て唯一の解決策ではなく、最もあり得ない選択肢であり、直ちに注視すべきである」
2018年8月31日 仲井眞弘多元県知事による埋め立て承認を玉城デニー知事は撤回した。
公明党の石井啓一国土交通大臣は「行政不服審査法」によって、県知事の工事中止権限を無効化。2018年11月には工事を再開、2018年12月14日、土壌投入した。そして、現在の土砂投入は���1%前後のことだ。
確かに、基地は国の専権事項。実際被害を被るのは地元の県民。
「普天間の危険除去のためには、辺野古移設が唯一の解決策」と言っているが、なぜ唯一なのか、説明されていない。平成31年2月24日 県民投票で、辺野古基地建設反対は71.7%(43万4273票の反対)がある。
翁長雄志はいう
「日本国憲法の上に日米地位協定があり、国会の上に日米合同委員会がある」
日米合同委員会の協議の内容は、公開されない。そして、日本はアメリカに何も言えない。
幼稚園の上は、本来飛行禁止であるが、米軍は無視している。そして、幼稚園に部品が落下した。それを抗議し、幼稚園の上を飛ぶなとさえも言えない日本政府。
「一体沖縄が日本政府に甘えているんでしょうか、政府が沖縄に甘えているんでしょうか」
「米軍基地は、沖縄経済発展の最大の阻害要因」と。
その意思を受け継ぎ、玉城デニーが闘い続ける。
日本全土で、論議を尽くして沖縄にいらないものは、本土でもいらないという結果になれば、新たな米軍基地は要らないということになる。沖縄県の「異議申し立て」を無視し続けることが問題である。
著者はいう。沖縄の底力とは、「死者の魂とともに生きる力、あの世の人たちとともに生きる力、あの世の人たちと寄り添いながらともに戦い、喜びを分かち合える力、そういうものではないだろうか。沖縄は、だから、負けない。誰も、あきらめない」
投票をするという行為は、生きている人たちだけでの意思ではなく、「死者の民衆の意思」をも反映される。沖縄戦での多数の命が奪われた。その人たちの平和を願うことを受け継ぐことが沖縄の民意でもあるのだ。遺骨の眠る慰霊の地で土砂を掘りこして、辺野古基地の土砂として投入するということは、断じて許せない。
この本は、現在の沖縄をリアルに把握できる好著である。