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【すばる 2021年11月号にて読了】
タイトルを見た時、「スミス」って、どんな友達なのよ? と思いましたが、なるほど、私もジムに通っていたときに見ていたアレのことでした。
私も筋トレに通った経験があるので、共感できるシーンもありましたが、だんだんとボディ・ビルの世界へ。
こんな世界だったのかと驚く事ばかりでした。
新しい世界を見た気がして、新鮮でした。
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2022年3月
パワフルで、はちゃめちゃに面白い。
文章のクセが強くて良い。好き。
堅めの語り口から「私」が日頃世間と仲良くやっているタイプではないなと思う。髪型変わったとか痩せたとか変化に雑な興味を持たれて彼氏できたでしょ?と見当違いな詮索をされても愛想のない沈黙ができる主人公が清々しい。
サイズ大きめのパーカーを着てしまえば途端に普通っぽく見えてしまう選手たち。でも実際は自分の筋肉にとことん向き合っている人たちだったりするのだ。
自分の世界があってそれに没頭出来る人は本当に素敵だ。
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「別の生き物になりたい」と通い始めたジム。筋トレだけに集中し、自分を取り巻くあれこれから解放される心地よさに身を委ねていたU野はある日、ジムでスカウトされボディビルの大会に出場することになる。元来の真面目さと集中力で日に日に身体が出来上がっていくが、女性ビルダーの大会で勝つにためは、筋肉を鍛えるだけではない「女らしさ」
が求められることにモヤモヤしたものを感じる。
ロングヘア、ピアス、脱毛、タンニング、12センチのハイヒール、美しい動きと満面の笑み……
標準仕様のように求められるあれこれに真面目に取り組んだU野が大会の本番でとった驚きの行動とは。
芥川賞候補作にしては珍しくとっつきやすい作品。筋トレをする人の心境や筋肉の奥深さ、そしてボディビル大会の知られざる姿など、まさに筋肉文学と呼ぶに相応しい。
日常からの逃避で始め筋トレにハマっていった主人公が、突き詰めていったところでたどり着いたのがやっぱり窮屈な決まりごとだったという事実。
それに気づいて彼女がとった行動が潔くてラストはスッキリした思いになる。
競争とか、優勝とかじゃなところで戦って勝利したU野は前よりずっと強くなったと信じたい。
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筋トレ、ボディビル。
自身には全く興味も無く、知らない世界の話だったが、それを知るり、擬似体験できるのも読書の良きところと感じた。新しい世界を見させてもらった。
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筋トレ小説
専門的な用語が多く、都度調べたりYouTubeで調べたりしました(オススメ動画が筋トレばかりになりました笑)
最初はただの筋トレ小説かと思いましたが、
20代女性で未婚なのに筋トレばっかりして変人扱いされる主人公の心情、ラストの行動は、男女平等を訴えていました
小説自体に会話も少なく無骨な感じも好印象でした
ただ個人的にA子やB子などのアルファベットを使った人名が取っ付きにくく感情移入しにくかったのが残念でした
わたしは1日10分くらいしかやらないのでとても比べられませんが、過酷な筋トレを続けられる人はすごい!
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別の生き物になりたい。フィットネスジムでストイックに筋トレで励む主人公は、真面目でどちらかというと地味な女性。スミスというのは筋トレ用のマシンの。ストイックに筋トレをしていた主人公が、誘われて別のジムに移籍し、ボディービル(BB)大会、しかも女性BB大会を目指してどんどん変わっていく過程が成長物語のようでもあるが、そんな百田尚樹のような単純なお話しでもない。主人公は、大会での成功を目指して他人の作った基準にしたがって変わっていくのだが、どこか違和感を感じていて、最後には筋トレを始めた原点に戻る。他人や社会が押しつける「成功」の基準に駆り立てられる現代人のカタルシスが語られている様に感じた。
などと小難しいことを言わなくても、普通には知られざるBBを楽しく垣間見ることができる稀有な小説でした。また筋トレ始めてみたくなる。
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図書館で借りたもの。
U野は筋トレに励む会社員。自己流のトレーニングをしていたところ、O島からボディ・ビル大会への出場を勧められる。大会で結果を残すには筋肉のみならず「女らしさ」も鍛えなければならず…。
今作でデビュー。
初読みの作家さんだったけど読みやすかったし、面白い表現が多かった。
スミスとはスミス・マシン(バーベルの左右にレールがついたトレーニングマシン)のことらしい。
U野のストイックさがすごい。
将棋盤のように見事に割れた腹筋…。
大会では女性らしさも求められる。
髪を伸ばしたり、ピアスを開けたり、脱毛や日焼けサロンに通ったり…。
筋肉を鍛えるだけじゃないんだな。
“女は、審査項目が多いということ。そういう意味で、この競技は「クラシック」なのだ。”
“この競技は世間と同等か、それ以上にジェンダーを意識させる場なのだ。「女らしさ」の追求を、ここまで要求される場を、私は他に知らない。”
決勝の場で女らしさを取っぱらったU野。
「やったるぞ!」という感じではなく、淡々としているところが良い。
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ジムの筋トレに勤しむ独身アラサー女性が、ひょんな事からボディービルの大会出場へ。
スポーツにも競技スポーツと生涯スポーツがあるように、どんな世界でも何かを極めようとすれば、当然何かを犠牲にするストイックさが求められるはず。自分はどう在りたいのか、どこで妥協するのか、人それぞれだろうし難しい問題だなと、改めて考えさせられた。
けれども、変わりたい、別物になりたいと何かに打ち込み、自分の成長を実感できたら誰でも嬉しいだろうし、「もっと」という内なる声を聞いた時の次なる行動次第で、人は変わっていくのかな。
スミスが、筋トレのマシンだとは〝目から鱗〟
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筋トレにハマって、仕事と筋トレを両立すべくどちらも集中、身体は絞れ、食事入浴の効果を再認識。筋トレは若さより経験や継続する気持ちの問題と悟り、メンタルまでたくましく、なにやらいいことばかり。しかし、後半、ボディ・ビルの大会を目指すことから、見られる女性の側面を強調するため、ジムの指示は、髪の手入れ、ピアスの穴開け、脱毛、日焼け、エクステンション、12cmハイヒールなどなど、広範囲に渡る。なんだか違うと思って行動に出て良かった。筋トレした身体は女性の場合、服を着たらしゅっとした人くらいの目立たなさ。人知れずそれをキープする苦労が楽しいジム通いを応援しようと思える話でした。
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筋トレ小説!!!
ちょいちょい挟んでくる慣用句に辟易しかけるし内容はただボディービルに挑む説明でしかないけど文章も違和感なく割と硬派でエンタメ小説として楽しめた
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ジムの細かい描写がリアルで、物語というよりエッセイを読んでる感覚。トレーニーなら確実に楽しめます。
ただボディメイクの過程が順調過ぎじゃないか?とは思った。
食事制限とか停滞期とかの苦しい側面が描かれてたらもっと感情移入できると思う。
でも、主人公がそういう努力を努力とも思わないストイックな性格なので、仕方ないのかもしれない。
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筋トレにハマった29歳の女性のお話です。
スミスとは、筋トレマシンの名前。
三日坊主の私は、この主人公のようにここまでストイックに打ち込める趣味を持ったことがないので、前半はとても羨ましいな、という思いで読んでいました。それも、プロの目に留まりボディビルの大会を目指すことになるなんて、なんと素晴らしいことか!と。
生来クソがつくほど真面目な性格の主人公は、より一層筋トレに励むようになって、こんなにピッタリだと思えるものに出合えるなんて幸せだなぁと、ただただ羨ましい。
でも、ボディビルの大会って筋肉だけを採点されているのではないんですね。主人公としては、元々中性的でありたいと思って始めた筋トレのはずなのに、ハイヒールを履いたり満面の笑顔を見せなければいけなかったり、女性らしさを求められるとは‥‥
人は他者から認められたいものだし、褒められて伸びるものだけれど、やっぱり自分の人生は自分で演出してこそ、ですよね。
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主人公の女性が、「ある競技」を通して成長
していく物語です。
と言ってしまうと、ありがちな内容に思えま
すが「ある競技」とは、ボディービルなので
す。
そしてスミスとは、筋トレマシンの名称なの
です。
ボディビルの大会に出ると決意した主人公が
ストイックに身体を鍛え、絞り、身体を作り
上げていく過程には、生き方の根幹を突きつ
けられます。
そして大会当日に主人公が選んだ生き方には
ある種の「悟り」に通じるものを感じます。
どんな競技、種目であってもそこに生き方に
対する悟りは必要であり、自然に生まれてく
るものでもあるのでしょう。
生き方とは何?を問い直す一冊です。
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腕立て伏せの間、私の胸には奇妙な感慨が芽生えた。多幸感とでも言おうか、私は、自分は幸せだと感じたのである。気の済むまで、誰にも邪魔されず、自分の身体を鍛えられること。それだけの時間と、金と、環境と、平和と、健康な身体が、私の手中にはあること。つまり、私は例えようもなく自由だということ。この瞬間がどこまでも続けば、私は何も言うことはない。そうした多幸感が筋トレ中に湧き上がるのは、これまでにも何度かあった。何やら突然の悟りというか、天からの啓示のように、私は今の状況を、掛け替えのないものだと感じるのだ。
舞台裏で一人、黙々と腕立て伏せに励むこと。
これ以上、一体私が何を望むだろう。
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筋肉とトレーニングのストイックな向き合いが淡々とつづられるだけでこんなに「自我の物語」になるんだと新鮮な気持ちになりました。実はよくわかっていなかったボディビルダーの心の内ものぞかせてもらったような気がします。(たぶん、主人公の母親みたいな目線で彼らを見ていたように思います。)その「自我の物語」が俄然ドラマチックになっていくのは大会出場することになるあたりから。自分の筋肉だけの満足の世界から、自分の筋肉が人からどう評価されるか、という基準が入ったことで、筋肉以外に、衣装、髪型、脱毛、ポージング、そしてメンタル…テーマがいきなり拡がります。SNSって領域も拾っているし。そのすべては社会の基準にどう合わせるか、というジェンダーのテーマと被ってきます。読み進むうちに筋肉小説というより女子小説に思えてきました。O島(最初、男性だと思ってました…認識のアンカーですよね。)、E島、T井、そしてS子も、みんな応援したくなりました。女子小説ってのも限定しすぎかな…2022年のビルディングスロマンは筋肉女子によって成し遂げられた、って感じ。それが単なる成長ではなく、個の確立って終わり方も、今っぽいかな。