紙の本
近松は日本のシェイクスピアではなくて日本のジェイムズ・ジョイス
2022/07/02 22:22
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
彼はアメリカの日本文学者としてあまりにも著名だ。ここまで日本文学だけでなく日本について造詣の深い人は二度と」登場しないだろう、2019年に逝去された。面白かったのは、彼が近松門左衛門のことを「日本のシェイクスピアと呼ばれることことがあるが、わたしに言わせれば日本のジェイムズ・ジョイスと呼んだ方が適切である」と言っているところ、彼の作品に登場する貝殻とか絹や紙の様々な型とか、寺の名前とか、関連する物が列挙されていて、それぞれが数十もの語呂合わせ、言葉遊びになっているからというのだ、まさに「日本のユリシーズ」だ。しかし、まってほしい、近松はジョイスより200年以上前に生まれている人なのだ。正確にはジェイムズ・ジョイスは「英国の近松」なのだ。ともかく、近松の作品を面白く英訳する人がいるということが信じられない話だ
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知らなかった「キーンさん」がここにいる! 同時代のカワバタ、ミシマの話から「超大国日本論」、そして美味しい料理屋の紹介まで。
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1955.5.8付「書評:蓼喰う虫」から、1987.10.4付「エッセイ:渋谷『玉久』の魚料理」まで書評やエッセイ、投稿など27点を収録。
書評「野火」1957.7.21付
「Fires on the Plain」アイヴァン・モリス訳
この小説を読み、1955年初めフィリピンで引き合わされた1人の日本人捕虜を思い出したとある。彼は捕まえられたフィリピンゲリラにひどく殴られ歯の詰め物がえぐり取られていたという。
「野火」は忘れがたい小説で、紛れもなく戦後日本に生まれた傑作の一つであるとある。言語に絶する悲惨から、大岡昇平は比類なく美しい作品を作りだした。とある。
エッセイ「大都会東京の”素顔”」1984.11.4
1945年12月に焼土の東京に初めてきて、1953年に留学のために二度目に来て京都に住む。そして今東京を愛してやまない心情を綴る。最初からキーン氏を東京に惹きつけたのは、そこに住む人々だったと語る。
2022.2.10初版 図書館
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若き日のドナルドキーンさんのエッセイ書評集。
1955年から1987年までの約30年間に、ニューヨークタイムズへ寄稿した27本のエッセイを収録している。 日本に関わる様々な本や文化に関する考察、苦労話、旅行記などを紹介しているが、面白かったのは日本文学の翻訳について。 日本語の微妙なニュアンスをどう英訳するか色々苦労があったらしい。
当時の欧米文化人達のアジア文学に対する偏見、戦後の日本人の変化、川端や三島など親しかった日本人作家の話、東京や瀬戸内の旅行記など、様々なジャンルについて自身の考えが述べられており大変面白かった。
またメトロポリタン美術館の日本展示室開設の経緯についてのエッセイも興味深かった。 自分も2度メトロポリタン美術館に行ったが、多くの展示室を限られた時間で巡ったため、日本展示室は素通りしてしまった。 開設の経緯を知っていたら、見に行ったかもしれない。
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NYTに掲載されたキーン氏の作品集。エッセイ『戦後、日本人は変わったか?』に学ぶことが多かった。三島由紀夫追悼の『ミシマ』は、新聞記事の書影が一部掲載されているので、キーン氏の英語に直に触れられる楽しみも。
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ドナルド・キーンさんが亡くなられて、もう3年経つのですね。日本人は「源氏物語」を読む人が少ない。原文でなくても、優れた現代語訳があるのだから、それを読めばいい。と背中を押してくれた師のような人です。「ニューヨーク・タイムズ」に寄稿したもので、少しシニカルなものもあります。でも、瀬戸内の紀行文や渋谷「玉久」の魚料理を述べたエッセイを読んでいると、キーンさんの笑顔が目に浮かぶようでした。日本の文学研究者は専門領域の幅が狭くて深く研究する人が多く、一般読者との間を取り持とうとしません。キーンさんは幅広い学識と深い洞察がありますが、一般読者を結ぶ架け橋になっていました。余人を持って代え難い人です。改めてご冥福をお祈りします。
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日本文学者のドナルド・キーンさんがニューヨーク・タイムズに寄稿した27本のエッセイの翻訳書。三島由紀夫や川端康成などの日本作家の話から、石油ショックで右往左往する日本人のこと、外国人に向けられる差別など皮肉も交えて痛快に書かれている。書かれている内容に偏りがなく、非常にフラットな立ち位置で冷静に見ているという印象が強かった。それには相当な研究や情報収集の裏付けがあるからだろうと想像する。瀬戸内紀行の章では、オリーブの加工品に触れた一文があり、私はどれもお勧めしないと書かれていて笑ってしまった。嫌みがないんだなあ。