投稿元:
レビューを見る
toron*は、大阪府豊中市出身で、Twitterで短歌と出会い、2018年からウェブの短歌投稿サイト「うたの日」や、月刊誌「小説 野性時代」の歌壇欄などに投稿するようになり、2021年の歌壇賞では「犬の目線」(本歌集に収録)が候補作品に選ばれている。塔短歌会、短歌ユニットたんたん拍子、Orion所属。
本書は、第一歌集である。
私は50代の会社員で、最近短歌に興味を持つようになり、俵万智、穂村弘、東直子、枡野浩一、木下龍也、岡野大嗣、九螺ささら等による入門書や歌集、多数の現代短歌歌人を集めたアンソロジー等を読み、半年ほど前から新聞歌壇への投稿も始め、最近ポツポツ採用されるようにもなった。
本書については、大型書店の短歌コーナーを見ていたときにたまたま目にし、購入したのだが、それは、自分が投稿している日本経済新聞の歌壇(穂村弘選)で、toron*という名前を何度も見ていたからである。日々の出来事を日記風に詠んだ歌が多くを占める新聞歌壇(私の歌もそうだが)の中で、toron*の歌はとても新鮮かつ異彩を放ち、その名前も含めて印象に残っていて、同じ時期に同じステージで歌を詠んでいるという(勝手な)親近感から、思わず買ってしまったのだ。
因みに、最近の日経歌壇では、以下のような歌が掲載されていた。
海獣は食事の時間もショウだから兄の作法を誰も咎めず
自らの羽根に埋もれて水鳥は空き家の井戸のごとく夢みる
コピー機が白紙のコピーを吐くことの誤差の範囲のふつうを生きる
若く、センスのある人の感性には、どうしてこんなことを思いつくのか、どうしてこんな言葉が浮かぶのかと、感心しきりなのだが、自分の平凡な歌にも少しでもこうしたフレーバーが取り入れられるように、試行錯誤をしていきたいと思う。
(2022年3月了)
投稿元:
レビューを見る
『剃刀を頬の産毛にあてているわたしにだって裏側がある』
『一対のナイフもフォークのようになり傷つけ合っても並んでねむる』
『ひとりでは乾かしづらい髪の部分こころがあるならそのあたり』
『ひび割れた液晶越しじゃない空を見ていた卒業証書まるめて』
現代短歌とは如何なるものか?
Twitterで短歌に出会った著者が綴る魔法の言葉。
投稿元:
レビューを見る
自分も最近短歌を始め、「うたの日」に投稿するようになり、toron*さんの存在を知った。
ぶっちゃけまだ短歌歴が浅く、短歌のことは詳しくないのが原因だと思うが、toron*さんの歌が全て良いとは思えない。
それでもやっぱりtoron*さんぽいなーという独自の世界観は感じられるし、憧れにしている存在でもある。
これからも「うたの日」でtoron*さんを見かけたら積極的に同じお題で挑んでいこうと思う。
投稿元:
レビューを見る
ああ、こういう瞬間をこんな感じで切り取れたら! そう感じる歌が多かった。31音の定型が多くて読みやすい。
投稿元:
レビューを見る
全ネット歌人の憧れは当然歌集も良い
巧みで綺麗だしユーモアだったり不思議だったり多彩
わたしは街の細胞だったって連作?が特に好き
犬という不思議な言葉
投稿元:
レビューを見る
全部素敵、全部好き。
好みど真ん中すぎて逆にせつない。
こんな短歌作ってみたいなあ。
[果てしない夜をきれいに閉じていく銀のファスナーとしての終電]
[花びらがひとつ車内に落ちていて誰を乗せたの始発のメトロ]
[檸檬堂ぶら下げてゆくあかるさのちょっと足りないきみの部屋まで]
[神さまが通り抜けるのにふさわしいきれいな五円玉えらぼうね]
[鯖味噌煮定食だったレシートが詩に変わりゆく古本の中]
解説の山田航さんは“日常を魔法の世界へと変えていく”短歌だと書かれている。
そうなんだ。わたしは魔法を求めてるのだ、と強く思った。
これも山田さんがおなじようなことを書いておられたが、どうってことない、自分の日常が、他でもない、言葉によって、一瞬にしてキラキラと光りだす。
これを魔法と言わずなんと言おう。
toron*さんの比喩や発想は絶妙で、読者を置いていくことなく、手を取っていつもと違う世界に連れてってくれる気がする。
投稿元:
レビューを見る
5552さんのレビューを拝読してから読みたくて読みたくて。
レビュー拝読の際も感じていたけれど、この歌集ヤバい!
ドラマチックで、眩しい程の透明感が美しくて、いい歳の私でさえキュンとした。
ページを捲ればどの歌も素敵で惚けてしまう 笑
不思議な感覚なのだけど、ポジティブな歌もネガティブな歌も、絵本のようにそのシーンが浮かぶ歌集だった。
ただ、寺山修司の『地獄編』が引用された「Ⅳ」は難しかったけど。
解説で山田航さんが詠み手のペンネームについて「苗字も名前もない。性別も国籍もいまひとつわからないこのペンネームこそが、「私はあなたである」という読者へのメッセージ」と仰られていたのが印象深い。
一番好きだったのは、
「果てしない夜をきれいに閉じてゆく銀のファスナーとして終電」
その他に幾つかご紹介。
「露店より買う万華鏡たわむれに街を破片にしてみる夕暮れ」
「花びらがひとつ車内に落ちていて誰を乗せたの始発のメトロ」
「ぎんやんまみたいに頬に触れるからしばらくわたしは静かな水面」
「青空の彩度が高い 更新を止めたInstagramのなかで」
「三面鏡じっと見つめてそのなかでいちばん強いわたしを選ぶ」
「大丈夫、全然大丈夫だからさ。主役みたいに照らすなよ月」
「いずれ夜に還る予約のようである生まれついての痣すみれ色」