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汎計画学 ソヴィエト・ロシア篇 みんなのレビュー

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紙の本

21世紀の「20世紀の計画」論

2023/07/23 08:49

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る

「汎計画学」と題された本書のサブ・タイトルは「計画の世紀」第1部:ソ連ロシア、と、続編を予定しているようである。著者の説明では、第2部は「戦間期あるいは戦後のアメリカ」、その後はフランスの戦間期・戦後、そして日本の戦後、のそれぞれ「計画」についての壮大な構想であり、日本語の「汎」という接頭辞にも頷ける(もっとも、例えばナチス・ドイツの「四か年計画」とか戦後英国の福祉国家は扱われないようだが)。著者は建築家・建築評論家で、『未完の帝国―ナチス・ドイツの建築と都市』(福武書店1991共著小山明)とか『ロシア・アヴァンギャルド建築』(1993年INAX出版)を読んでいた。久々の出会いであるが、建築の専門家がソ連の計画経済論をどのように扱うのか、と訝しがった。しかし本書は、「計画の世紀」といわれる20世紀を通じて様々な形で営まれた「計画」、そしてそれに対する「反計画」も含めて、その諸相をソヴィエト・ロシアという舞台を題材として論じている。「建築」は、基礎から棟上げ、内装など複数の工程が複雑に絡み合い、また、コスト・性能面での建設手法のチェック、そして全体を統括する監理、というプロセスで構成されるが、まさに「計画」そのもの、建築家が論じることも頷ける。
計画に基づき配置された人々、インフラ、それを可能にするテクノロジーを結集し資本主義諸国をも魅了したソヴィエト・ロシアの「五カ年計画」を、政治・文化の諸局面における「内的力学」から見ていく。その期間は政治的には、粛清、そしてスターリン独裁体制への移行期であり、経済的には第一次五か年計画による重工業への急激な展開と農村における穀物の強制調達、階級としての富農絶滅政策と農場の集団化強行であり、文化的には階級制を強調した「社会主義リアリズム」の確立期と重なる。
著者は、「建築」という視点から、自分の専門分野である建築にとどまらず、政治、文学・演劇でのアヴァンギャルド芸術の思想(例えばメイエルホルドの「ビオメハニカ」)、映画、哲学の分野、また、イデオロギーの闘争から実際の建設現場まで、様々な材料・工程を統合しつつ逍遥する(『越境の学』)。およそ「計画」とは関係があるとは思えないことが、どのようにスターリンの「計画」に結集していくのか、精緻に描いていく。コルビジェのような建築分野の著名人は当然として、ワルラス・パレートの経済理論、テイラーの経営学、メイエルホリド、エイゼンシュタイン、そしてドイツのベンヤミンまでのディスクールまで駆使する著者の博識とレトリックには感心する。
本書は、ロシア化革命勃発から内戦時の戦時共産主義、そしてネップを経て第一五か年計画までの期間をカバーしているが、政治的にはスターリン独裁体制の確立時期と重なる。「計画」へのスターリンの関りがそれほど多くは扱われてはいないが、スターリン独裁体制成立過程を別の側面から俯瞰した政治過程論としても読むこともできる。「計画経済」は、計画の失敗の責任転嫁をするというスターリニズムのレトリックの誕生の契機となり、また、「スタハノフ運動」や「突撃労働」といった、支配のための大衆心理的な基盤を提供したものとも考えられるのである。
本文670頁、このような専門書で使われるA5判よりやや大きな菊判と、重量を含めその存在のある大著。重すぎて持ち運びして読む本ではない。しかし、様々な分野を廻り回っていく「越境」が楽しめた。

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