読んでいて楽しいのに涙する
2022/10/29 08:03
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投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
男性のシンボルを切り落とし、何者でもないものになったカーニバル真子。
自分の存在を考えながら走り続ける真子。
とにかく読んでいて楽しく面白い。
自分をネタにして生き続けるが、ネタも尽きる。
このままでは芸能界に生き残れないと苦しむ真子。
友と信じていた静香の突然の死によって、女優の道を歩み始める後半。
網走の流氷でのシーンを撮り終え、映画の公開を待ちながら地道にキャバレーの仕事をこなす。
しかし、共演した女優の恨みをかって麻薬法違反で留置場に勾留される。
無実になるも立ち上がれない真子が痛々しい。
母、姉、ノブヨ、マヤらと一緒に鎌倉の海と青空が秀男を元気づける。
物語も面白いが桜木さんの文章が冴え渡っていました。
最高です!
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2022/05/18リクエスト 2
★10
モロッコでカーニバル真子(英男、カルーセル麻紀)は日本で初めて「女の体」を手に入れた。
前作の「緋の川」での、カーニバル麻紀の人生を描いた、と簡単に言うには重すぎる話。
あたしは偽物の女なんかじゃなく、あたしの本物になりたい。本物のあたしになれるよう鍛えてください。
モロッコのヤブ医者、ブルウにされた手術のおかげで、三途の川を渡りそうになったところを、一緒にパリに来ていた清羽が見つけてきた日本人研修医の風間のおかげで奇跡的に命拾いする。本当は研修医ですらなかったけど…
本物はどんな安物を穿いてもいい。
けれど、あたしは一流の皿に載せないと三流より不味い養殖魚になっちまう。
ところどころで出てくる実の姉、章子とのやり取りが痛々しい。英男はショコちゃんがいるから、マヤねえさん、ノブヨがいるから、居場所を探しているときにもやってこられたのだろう。
作家の北澤のことが好きで初めてした。
女の体が欲しかった。ちゃんと衣装を着こなして踊りたい。性別よりすわりのいい衣装を着た感じ。
あたしは母親以外の誰にも懺悔したくはない。
仕上げを間違った神様を許しながらやってきた。
だから誰にも許しを請わない、これからもない。
母親からの電話で、テレビ出演を喜んだり後悔したり。自分の胸に挟んでもらったチップを貯めて、母親に仕送りする。着物も山ほど贈る。
黙ってお金を使って欲しいが、実の兄に流れていそうで気になる、近所からなにか嫌なことを言われてはいないか、それも気になる。
母親には最後まで嘘を突き通して、それがひっくり返って真実になる。
そんな気持ちでいる、英男はなんて素敵な人なんだろう。男か女か、でなく、人として信頼できるのかどうか、その分かれ目だけなのだろう。
人として、一本の芯がある、そんな単純な言葉で伝えられない考え方の英男。そして英男(というかカルーセル麻紀)のお母さんやお姉さんのショコちゃん、この二人はどうしてこの時代に、こんなにもフラットな気持ちで英男に接することができたのだろう。
大きなテーマ、「男でも女でもなくあたしの本物」
この作品は、桜木紫乃にしか描くことのできない作品なのだろう。
どの作品も好きだけど、この作品は一番になりそうな気がする。
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「緋の河」続編。
いや〜、「緋の河」も良かったし、渾身作だと思ったけど、これはそれ以上の覚悟と迫力に満ちていて、グイグイ迫ってきて、圧倒されっぱなしで、読んでいるこっちも疲労困憊って感じになりながらも、一気に読まざるを得ないという、ね www
自由を手にするのって、いつでも闘いが必要なのね。
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日本で初めて「女の体」を手に入れたカルーセル真紀を題材にした小説で、『緋の河』の続編。藤圭子など実在の人物を思わせる脇役も登場しますが、当然フィクション。ちなみに読めない程では無いですが、前作を知らないと理解できない背景が随所に在ります。
戸惑い無く、いや藻掻き苦しみながらも突き進む主人公が「圧巻」で、前作を上回る面白さです。
「自分らしく生きる」為に闘う一方で、自己顕示欲を満たすためには周囲を犠牲にすることも厭わない主人公。どうも個人的には嫌いなタイプの人物です。しかし、それもここまで突き詰められると「恐れ入りました」となってしまいます。
ただ、最後の所でどこか指先から逃げ出してしまいます。掴み切れない感覚が残るのです。私と主人公(作者)の基本的スタンスの違いなのでしょう。
桜木さんの文体は重苦しい事が多いのですが、この作品では力感に溢れスピード感も有って、後半は一気読みでした。
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ゲイボーイの先駆者カルーセル麻紀の生き様を描いた「緋の河」の続編。
モロッコで手術を受け、女の体を手に入れたカーニバル真子。その凄まじい覚悟と信念に圧倒される。身体は女よりも女。中身は清々しいほどに男。自らを異形と認めながらもこれが私と言い切る強さ。
ゲイボーイが今よりもっと世の中から蔑まれ、化け物扱いすらされ、生きづらかった時代。常に話題になる自己演出をし、その身一つで勝負して一世を風靡した真子。その内面を余すところなく描いた物語は、全編が真子の胸の内を晒すことに費やされていると言ってもいい。
ただ、「私はわたし」「これがカーニバル真子」と真子が胸の内で啖呵を切る部分が形を変えながら繰り返し描かれすぎて、途中からお腹いっぱいになる。
爪楊枝を大木のように語り、内面の本当のところは決して晒さず、周りが見たいような自分を作り上げる。そんな生き方をして来たという彼女が作者の取材にどこまで本当のところを晒したのか?という疑問がラストのノブヨの手紙を読んで湧き上がる。
やっぱり、そこも含めてよくできたフィクションなんだろうなと思う。
個人的には、マネージャーの坊やが舵田へと成長していく姿が好きです。
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カルーセル麻紀の「緋の河」の続編「孤蝶の城」
モロッコで手術を受け日本で初めて「女の体」になった。自分で作り上げた女の体どんな苦しみがあろうとその美しさを守り通す大変な努力 またマネージャーが良いと相手も心も身も救われる。
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『緋の河』の続篇。心は女性なのに男性の体に生まれてきてしまった秀男のその後を描く。 前作では睾丸を除去する手術を受けたが、本作ではモロッコで陰茎除去&膣形成術を受けることになる。その結果手に入れた“女性”としての肉体で、カーニバル真子は望み通りの活躍をすることができるのか。
LGBTQが認知されてきた現代でさえ微妙な問題なのに、1973年にそれを公言し実行した精神力に驚いた。したたかでありながら繊細な面も併せ持つ秀男の移ろいゆく心は、正直ぼくには理解しがたいものだったが、小説としての完成度は高いと思った。
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シビれた。カルーセル麻紀さんがモデルの続編。前作の『緋の河』は思ったより大人しめだな、という感想だったが今作はパンチ効いてた。しょっぱなから壮絶な性転換手術。痛い・辛いで読み手のこちらも悶絶。常に威勢よく、ハッタリかましながら話芸とダンスとストリップで芸能界を生き抜くカーニバル真子。先のことは考えない、毎日がお祭り騒ぎ。そんな綱渡り的な人生だからこそ要所要所で暗い影がさす。それでも「あたしはあたし」。ブレない真子を慕う信頼できる人達との関係が光を与えてくれる。共感ではない、不思議な熱い気持ちが胸に灯った。
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性転換手術を受けた日本人の先駆者、カルーセル麻紀がモデルのフィクション。これが、未読の「緋の河」の続編だと知らずに読んだため、前作を読んでいたら、昔のエピソードとの関連がよく分かって、より楽しめたかもしれないが、それでも、カルーセル麻紀として世間に知られるようになるまで、の前作より、日本人によく知られた芸能人がモデルの本作の方が、華やかな物語になっているのでは? 本作は、モロッコ、カサプランカで、陰茎を切り、膣を形成する手術を受ける場面から始まる。心だけでなく体まで女性になって何が変わったか、が興味深い。
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『緋の河』に次ぐ秀男ことカーニバル真子の物語。「なりかけ」と揶揄されながらもしぶとく生きた幼い日、だんだんと自分らしく生きていく道を見つけていく前作に比べると、モロッコでの性転換手術から始まる今作の秀男は、それなりの立場もお金も得て落ち着いてしまっている感じ。暗中模索していた前作のほうがストーリーに迫力があった。
今作のテーマは、秀男が性転換して(なりかけでなく)なってしまった後のその先を探す苦しさだろう。常に話題を生産していかなければいけない、ゴシップを提供し続けないと世のなかから忘れられてしまう焦りが描かれているのだけど、正直なところ、そこにはあまり共感できる要素がない。マスコミ相手に煙に巻くような発言を繰り返し、その実自身の言葉が語られていないと指摘した記者の言葉は、かつては自分部の部長として二人といない自分を見出そうとしていた秀男にとって痛い言葉だったろう。
ああ、なるほどと思ったのは秀男のアイデンティティ。何度か書かれているが、性転換したところで、秀男は女になりたかったのではなく、女の体になりたかっただけだということが示唆される。前作を読んで、女のような秀男だけど、母や姉にある種の苦渋をさせたりあまえきったりするのは男性的だと思ったけど、まさにそうだったのかという感じ。秀男は女になったのではなく、女の体になったんだ。母の前では息子だし、姉の前では弟なんだ。それと同時に、「あたしは、あたしの本物になるんだ」という何度か繰り返されてきた言葉からも、性別に囚われることない存在になろうとする気概がみえる。
芸能活動をするなか、最初は頼りなかったマネージャーの坊やが、だんだんを気働きの利く人に成長していくさまがよかった。この坊やに限らず、半同居のようになる母や姉といい、その世界の仲間たちといい、孤独な存在のように描かれている秀男だけど、いい人たちに囲まれていてうらやましい。
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今で言うニューハーフの先駆けのような人を主人公とした物語。ショービジネスの世界の厳しさを改めて思い知らされた。
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導入部からわかりにくい小説だなぁと思って読んだ。最後のあとがき読んで、これ「緋の河」の後編だったと気づく。そのままでもわからなくもないけど、悔しいので次前篇を読む予定にした。モチーフは言わずと知れたカルーセル麻紀であり、そのスターとしての半世紀を書いており性別適合手術という芸能界きっての第一人者となり芸能の話題を一手に集めたその活動が半フィクションとして納められている。読み手によっては嫌悪するような内容であるが、性同一性障害という診断もなかった時代にこれほどの活躍をした女優はいまだかつてない。凄惨ともいえるような活動の中、小説では”カーニバル”と冠をつけた名前でそのまま祭りのような活動をつづけ、ラスト、祭りの輿を下ろしそうになるも、復活、そして新生と閉じられる結末に拍手を送りたい。
同郷の桜木さんがカルーセル麻紀にほれ込み、物語の中でフィクションの人物となりいずれ小説にするというシーンもついつい本当に当時からの友人だったのかと思わせてくれて楽しかった。
ボリュームがあり、なかなかすぐに完読できなかったがしっかりとした読み応えのある内容の詰まった物語でした。
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緋の河の続編。
女の体を手に入れたあとの物語。
お母さんさんが見に来てくれた場面や最後また強く生きる決心をした場面で涙がでた。
桜木紫乃作品は色がついている情景が白黒〜セピアな色で描画されているように見えてとても美しい。
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過去作品が好きだったので手に取ったが、今回はあまり好みではなかった。前段の話があったようなので、それを読んでいればもう少し感情移入できたかもしれない。
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どこまでも前向きで破天荒な秀男の生き方 は『緋の河』に続き健在だ。元気が出た。文次との再会シーンや母マツが秀男を想う描写があまりにも切なくて感涙。明と暗、笑と悲のバランスの良さが秀逸。