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2022/09/08 09:34
投稿元:
『おばちゃんたちは太い二の腕をぶるぷるさせながら、鶏の喉を切って血を土に吸わせる。慣れた手つきで羽をむしり、みるみるうちに普段見慣れたチキン肌の丸裸になってゆく。お湯にくぐらせ、炎で炙り、鮮やかな手順で「生き物」が「食べ物」になってゆく』―『1章 馬力/祝福』
テレビがアナログ放送だった頃に買った録画機には、山口智子が分厚い資料を抱えて旅をしながら熱く語りまくる番組が幾つも保存されている。DVD化された番組もあるけれど、彼女が制作に携わった番組の多くは記録として残されていない。「LISTEN」もまたそんな番組の一つ。もちろん、何でもデジタル映像にして残せばいいというものでもないし、一期一会の価値観も理解はしているつもりではあるけれど。そんなもやもやとした思いを抱く人々への慰めということでもないだろうけれど、本書は、紙の媒体を通してこの稀代の好奇心旺盛な女性が吸収してきたものを、凝縮して開示したという一冊。まさか、こういう形で記録に残すとは、という率直な驚きを覚える。
山口智子のファンだというと誤解する向きもあるだろうけれど、いわゆる「月9」ドラマで演じる山口智子を観たことはないし、女優デビューとなった「朝ドラ」も観ていない。けれど、ダブルキッチンでの野際陽子との嫁姑の確執をコミカルに演じた山口智子は好き。では何故、この多方面への破格の情熱を示す人物のファンになったかというと、切っ掛けは「手紙の行方:チリ」を読んだこと。それは実に意外な一冊で、女優の手慰みなどでは決してない「本気」の一冊だ。その後「反省文:ハワイ」を読んで再度感心し「旅シリーズ」第一弾の「ゴッホへの旅」で語りまくる山口智子の知的好奇心の発露の情熱的なことを知り決定的にファンになった。
彼女の情熱には際限のない好奇心が突き動かす探求が決まってついてくる。そうして集まった情報は独特の分類法で整理(調理?)され、血となり肉となる。一端そうして身体の一部になったものから湧き上がる感情には、理屈はない。そしてこの発信者はそのことを恐れない。学術的に正しいことや、研究者の言うことをそのまま語るのではなく、感じたことをそのまま伝えることに躊躇が無い。だから言葉が迸り出る。それはドキュメンタリーでも、文章でも同じ。
だがその情熱には危うさもある。古今東西の諸々の営みが混然となり、思っても見なかった関連性を引き出し、無意識に繋がりを求める。それは人の知的営みの根本でもあるけれど、無意識の情感がそうさせるが故に、冷静な批評を受け入れぬような激しい断定を示すようにも見えてしまうからだ。それをこの稀有な女性は持ち前のしなやかさで制御しているようにも見える。
「LISTEN」以前に山口智子が手掛けたドキュメンタリーでは、ゴッホや芭蕉やエカテリーナなど情熱を傾ける対象が定まっていて、彼女の掘り下げた探求の結果がまっすぐに言葉となる出力される様を見て共感するという、ある意味受け身で視聴するものだった。一方、LISTENの山口智子は制作者に徹しドキュメンタリー映像に登場することはなく(本書には、とてもいい表情で写る貴重な写真が二葉あり。馬と向き合う一葉、そして中央アジア風の衣装の男性の横に座って���きつつ微笑む一葉)、その思いを熱い口調で語ることもない。あるのは音と映像による問いかけにも似たもの。それは能動的な共感へと誘う仕組みでもある。映像を観た時にはそれが意外でもあったけれど、その様式は、山口智子が感じたことを、音楽に、そして音楽を奏でる人々に、直接語らせたいという思いからの構成だったのかと、本書と出逢ってようやく解る。この幾つかの媒体に書かれた文章を集めた一冊を読んでいると、北斎やゴッホを語る山口智子の口調が蘇り、その探求心にぶれがなかったことがよく解る。
ところで可笑しなことを言うようだが、自ら語った筈のインタビューの言葉よりも、文字として表現することを前提として自ら執筆した文章の方がドキュメンタリーで語る山口智子の口調を彷彿とさせるのは何故だろう。恐らく、山口智子は本来、文字の人なのだ。それはもうとっくの昔に解っていたことではあるのだけれど。
2023/06/10 07:20
投稿元:
ダイワハウスの冊子の文がまとめられ、続けて読むとまた、読み応えが違った。こんな贅沢な音楽の旅。目の前で繰り広げられたら、ゾクゾクしっぱなしだろうな。この本との出会いに感謝。
2024/05/02 01:02
投稿元:
[1]著者は、いろいろ物申したいことはあるとても、グチグチ文句たれるくらいなら自分で行動してクリアすればいいという発想のようでその成果のひとつがこのプロジェクト。日々消費されていく映像をアーカイブし利用できる形にすることを目的としているようです。それだけの価値があるものとしての民族音楽。
[2]書中に点在するQRコードでさらに情報を得ることができる。そのためのプラットホームとしての一冊でもあるでしょう。
[3]民族音楽にはもともと興味はあって「ノンサッチエクスプローラーズ」を全部は揃えられませんでしたがそこそこ揃えた程度には好きなので楽しめました。そもそもの始まりは中学生の頃サイモンとガーファンクルの「コンドルは飛んで行く」を聴いて魅了されアンデスの民族音楽のレコードシリーズ四枚を買ったところからでした。
■心覚えのための単語集(あくまでもあとからCDやDVDや本を買ったりするためのメモなので不正確かも。校正なんてしてないので引用ミスとかあると思うのでスンマセンとあらかじめ謝っときます)
【アーシュク・ヴェイセル】伝説的なトルコの吟遊詩人。
【アイスランド】ノルウェー、スコットランド、アイルランドからの移民が作り上げた火山島の島国。先住民はいない無人島だった。最初の移住者はアイルランドの修道士だったとか。人の名前が長く一千年前までの先祖が誰かがわかるらしい。暖流が近くを流れているので意外に寒くない。むしろイヌイットたちが住んでいたグリーンランドの方が氷の島だったそうだ。世界最古の民主的な議会「アルシング」が930年に誕生した。ヴァイキング精神が根づいている。ヴァイキングの実態は海賊ではなく貿易者だったようで、だからなのか今でもアイスランド人は語学が得意なんだとか。「エッダ」「サガ」という古代伝承文芸をとても重んじる。『アイスランド・サガ』という分厚い本と『エッダとサガ』という本を持ってます。
【アウレリオ・マルティネス】ガリフナ音楽のミュージシャン。
【アスコマンドゥーラ】山羊革で作られたバグパイプ。クレタ島の伝統楽器。
【アズレージョ】ポルトガルの《瑠璃の輝きを持つ装飾タイル。》p.243
【アマウティク】イヌイットの衣装。子どもを服の中でおんぶできるようになっている。体温が直に伝わり母子ともに暖かいし互いに安心感を抱ける。
【アラ・ギュレル】イスタンブールの写真家。本人は自分は「写真記者」であり《写真で時代を記録する歴史家、ビジュアル・ヒストリアンとも言えます。》p.154。千年後の未来に届けるタイムカプセルには「美しい花」を。
【アンディ・パラシオ】ガリフナ音楽を広めるムーブメントの中心になった歌い手。
【イヴァン・ドゥラン】ガリフナの音楽を世界に広めたプロデューサーでありミュージシャン。ストーン・ツリー・レコードというレーベルを立ち上げた。
【イ・サロニスティ】ハンガリーの音楽グループ。映画「タイタニック」で沈没するまで演奏を続けた楽団を演じた。
【イヌイット】北極圏の先住民。「喉歌」「喉遊び」と呼ばれる文化を持つ。人体から出ているとは思えないような音を出す。《イヌイットは、自然に属して生きていることを、決して忘れない。自然から恩恵を得たら、自分がそこに何を還せるかを考える。そして彼らは、たった一人では生きてゆけないことをよく知っている。》p.480。トランポリンやけん玉や綾取りはイヌイット発祥かもしれないんだとか。
【イヌイット・アート】《北方文化ではすべてが機能を持ち、生きるために役に立つということが面白いですよね。効果的でなければ、過酷な地では残っていかない。美しいものが持つ力に守られ、確実に効果を発揮していたということだと思います。》p.484。『愛蔵版 イヌイットの壁かけ 氷原のくらしと布絵』岩崎昌子著…誠文堂新光社。
【インド】この本の当時を飾るのは南インド、それからネパール。民族音楽の大物。インドはロマの源郷。音楽は必ず神への祈りであり《音楽家であることは、聖人であること。》p.587
【イヨルゴス】ラウート奏者。
【インドレ】リトアニアの伝統弦楽器カンクレスの奏者。
【ヴィクトル・コパチンスカヤ】ツィンバロム奏者。ヴァイオリニストのパトリシアの父。
【ヴィック・ヴィナヤカラム】南インドの素焼きの壺太鼓「ガダム」の奏者。
【ヴィンメ・サーリ】ヨイクの担い手。
【ヴェロニカ・ポヴィリオニエネ】リトアニアを象徴する歌い手。女たちのワーキングソングには歌によってシチュエーションに厳格な決まりがあるらしい。千年後の未来に届けるタイムカプセルには「古の『希望の詩』」を選んだ。
【ヴォセス・トゥーレス】ヴァイキングの精神や神秘的な中世の詩を歌うグルーブ。そのメンバーの一人は「言葉は、夢の中から来る」と語った。
【歌う革命】バルト三国が無血革命でソ連からの独立を勝ち取った運動。民衆が皆で国歌や民謡を歌い独立への気運を高め「バルトの道」と呼ばれる手を繋いで660キロの人間の鎖をつくり国際世論を味方につけた。
【ヴラディチン・ハン】ブラスバンドの聖地。マルコヴィッチ・オーケスターのふるさと。伝説のトランペッター、バキヤ・バキヤの生地。CDショップがない。音楽はCDで聴くものではなく楽団を呼んで演奏を楽しむものらしい。
【カーニバル】語源は《「carnem levare」、「肉を取り除く、肉食を断つ」というラテン語。》p.283。断食的な祭儀だったらしい。山口智子さんは南スペイン、カディスのカーニバルをおすすめ。合唱部門はユーモアのセンスを競う「チリゴダ」、五十人近い大編成の「コロ」、十数名で芸術度を競う「コンパサル」などに分かれている。仮装により価値観の逆転などそれまでをクリアし社会全体を見直すというような意味もあるらしい。
【カイ・ヤグ】初のプロ・ロマ音楽グループ。
【ガイネ】ネパールの吟遊詩人。インドとは別のカーストがあり、その一つごガイネ。
【ガウチョ】アルゼンチンの牧童。「放浪者」という意味らしい。スペインからの移民と先住民との間に生まれた子孫が起源のようだ。個人的には民族音楽と言えばアルゼンチンという感じはあります。「パジャドール」と呼ばれる吟遊詩人でもある。未来に届けるタイムカプセルに入れたいものは「ガウチョの生き方をまるごと入れるよ」、「馬と馬具とナイフ、そしてガウチョの知恵」、「パンパのすべてが大切だ。でもまず馬。馬がいなけりゃガウチョじゃない。馬に乗り、牛や羊���大地と繋がるんだ」、「俺は…、〝種と水〟を入れるよ」。
【カザニ】クレタ島の強い蒸留酒ラキを作る秋の風物詩。
【カタカリ】南インド・ケララ州の古典舞踏。歌舞伎の源流の可能性も?
【カタジャック】イヌイットの喉歌。
【カッコいい】山口智子さんはカッコいいものが好き。
【カディス】カーニバルが開かれる。大航海時代には最先端の港町だった。スペイン初の民主的憲法が発布された地でもある。
【カライクディ・マニ】ムリダンガムという木をくり抜いた南インドの打楽器奏者。音楽家なので聖人でもあり彼に弟子入りすることは生活をともにしながら修行することでもある。
【ガリフナ】アフリカからの奴隷船が難破しセントビンセント島に逃れた奴隷たちが先住民に受け入れられ融合し「ガリフナ」という民族が誕生しホンジュラスやベリーズに定住するようになり、アフリカのリズムを継いだ音楽が生まれ今や世界無形文化遺産になっている。
【カルナーカタ音楽】南インドの音楽。《神への祈りが高度に音楽的に磨かれた》p.579
【カント・ア・テノーレ】イタリア・サルデーニャ島の音楽。四人の男性によるアカペラのポリフォニー。主旋律で歌詞担当の「ボーゲ」、あとは楽器のような音を出す。重厚な唸り声の「バッス」、金属的な高音の「コントラ」、調和を醸し出す「メス・ボーゲ」。
【教会】ヘルシンキ駅前にある教会でヨイクの撮影をしたとか。《教会といっても宗教的な装飾がなくて、湾曲する木だけで作られた、まるで木の子宮の中にいるような清浄な空間。木の呼吸を感じながら、ずっと何時間でも座っていられる。》p.488
【クマリ】チベットで、選ばれた幼い少女を守護神の生まれ変わりとして崇める信仰。
【クラウディア・ラ・デブラ】著者が出会った当時まだ十一歳だったフラメンコの踊り手。山口智子さんはアメノウズメをイメージした。
【グルジア】→ジョージア
【クルルタイ】国境を超えた、マジャルの伝統文化の祭典。
【ケープ・ドーセット】イヌイット・アートのムーブメントの中心となっている町。
【夏至祭】リトアニアで夏至祭の取材をしておられた。聖ヨハネにちなんで「ヨニネス」と呼ばれる。
【ケノジュアク・アシェヴァク】イヌイット・アートの第一人者。
【言葉】《アイスランド語は「言葉の化石」と言われます。9世紀に使われていた古ノルド語が、一千年を経た現在でも、昔のまま使われている。》《アイスランドでは外来語の導入を抑え、古来の純粋な言葉を保つ努力を今も続けています。》p.531。言霊やからなあ。言葉は国の魂みたいなもんやから。でもノルウェー人は国際人でもあるので外国語は堪能。また別のもの。なるほどなあ。
【コナッコル】インドで打楽器習得時にリズムを口で再現する練習法。
【コモンドール】牧羊犬。もさもさの毛がフェルトのようにかたまり、防寒でもあり、鎧ともなる。
【コラム】南インドの女性たちが毎日玄関の前に米粉で描く図形。ポンガル時期には特に凝った図形を。まず点を打ってからそれを線で結び図形にしていく。さすが数学の国。
【サーミ】北方民族。《ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアにまたがる「ラップランド」に暮らす人々���。》p.456。即興歌「ヨイク」を持つ。トナカイを放牧するのでトナカイに関する言葉を数多くある。
【サーランギ】ネパールの吟遊詩人「ガイネ」が使う木彫の弦楽器。百の音色を持つと言われる。
【サウリュス・ペトレイキス】リトアニアのミュージシャン。山羊の角や石や植物などの自然素材で作った笛やオカリナを奏で、歌う。
【サルサ】スペイン語の「ソース」が名前の元でキューバの「ソン」、マンボ、チャチャなどが入り混じりニューヨークに移民した人々のストリートダンスから始まったとか。
【サルデーニャ島】イタリアの島。日本の四国よりやや大きくイタリアで二番目に大きい島。イタリア本土人とは異なり実直で頑なでシャイ。異民族の侵攻にさらされてきたからかもしれない。内陸山岳地帯は異民族の侵攻に屈することなく「バルバリア(野蛮の地)」と呼ばれ恐れられた。今はバルバジア地方と呼ばれる。音楽としては「カント・ア・テノーレ」がある。楽器としては葦笛の一種の「ラウネッダス」がある。仮面祭祀でもあるバルバジア地方の火祭りは圧巻。あるサルデーニャ人が未来に伝えたいものは「シンプルライフ」だと言った。それは《美味しい食事やワインを囲み、自然の中で癒やされる暮らし。》p.329。
【サンガム】インドの古典文学。歌集。五、七、五、七、七と日本の短歌と同じ形式なんだとか。
【サンバ】ブラジルのものではなく、ガウチョのサンバはハンカチを手にして男女で踊る。
【ジェームズ・ヒューストン】イヌイット・アートの紹介者。カナダ人。
【ジプシー】差別問題もあり呼称についてはいろいろ論議はなされているが、この本では民族への尊敬の念をこめ、ジプシーとロマを併用しているそうです。国により呼称はさまざまで、「タタール」「サラセン」「ボヘミアン」「ハイデン」「トラヴェラー」「ヒターノ」などはすべてジプシーのことなんだとか。知ってるのもあり、知らなかったのもありです。ジプシーは《北インドを起源に持つ移動民族。/遙か千年昔に故郷を旅立った流浪の民は、中近東、エジプト、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、クロアチア、マケドニア、セルビア、ギリシアへと進み、様々な文化と出逢いながら、魂の源郷を音楽に託し伝えてきた。》p.18。《悲しいことも嬉しいことも、みんな思い出して「思い出」に泣くの。それがジプシーなのよ。》p.23。
【ジョージア】旧グルジア。ポリフォニーという多声音楽を持ち、ワイン発祥の地と言われる。ジョージア人のモットーは「友には杯を、敵には剣を」。侵略者に対しては苛烈に戦うが、客人には心からのもてなしを。
【装束】《装束という言葉の本来の意味は、旅支度をすることだという。》P.44
【所有】《イヌイット社会では、狩猟をして獲物を得たら、決して独り占めせず分配するのだそうです。弱者を見捨てない。過酷な自然の中では、いつ何時立場が逆転するかもしれないから。まず、もらう人の「欲しい」という気持ちが先にあって、そのために、得た者は与えなくてはいけない。要求のままに与えることが、徳であるとされている。》p.475。《イヌイットは誰もが歌を作り、人に聞かせて歌が受け入れられると、作者の名と共に歌い継がれていく。基本的に歌は、生み出した人自身の「所有物��。歌は作った人物に属するもので、70歳を越す古老は皆、「自分の歌」を歌えるといいます。イヌイットの結婚式などでは、親戚の契りを交わす贈り物として歌を交換する。》p.475
【知る】《「知る」ことで、今まで自分には無関係に思えていたことが、一気に身近に観じられますよね。》《この世界を良くするために、自分に一体何ができるのか漠然としすぎてよくわからないけど、でもせめて「知る」ことから始めて、世界にまだまだはびこる理不尽や不幸な罪、その生身の痛みを自分の心で感じていきたいです。》p.428
【ステインドール・アンデルセン】《今も古代の言葉でアイスランドの神話や史実を歌い伝える語り手。韻を踏む詠唱「リームル」の伝承者。》p.533。未来に届けるタイムカプセルに入れたいものは《山。一番美しいものだから》p.533
【スプラ】ジョージア伝統の宴。進行役の「タマダ」は尊敬される人格者であり、心に残るスピーチを語らなければならない。
【ゼイベキコ】《別れや死の悲しみを踊るギリシアの伝統のダンスだ。自己の魂の浄化のために、崇高な精神で踊られる男の舞だ。》p.218。映画「日曜はダメよ」や「その男ゾルバ」でも踊られた。元はオスマン帝国の民兵「ゼイベク」が死と対峙し踊ったものだとか。誰かが舞い始めたら他の者は邪魔してはいけないし拍手を送ってもいけないし、ただ見守る聖なる踊り。
【セベステン・マルタ】ハンガリーの国民的歌手。トランシルヴァニア地方の民謡を継承する。ダンスハウス運動が生んだ音楽グループ「ムジカーシュ」出身。千年後の未来に届けるタイムカプセルには《互いを愛する「慈愛」という言葉を入れたい。》p.84
【セン・スヴァジャ】リトアニアの伝統合唱「スタルティネス(調和)」を歌う女性三人組。
【千年後の未来に届けるタイムカプセル】インタビューしたすべての人に聞く質問だそうです。個人的には、どんな行動を取るにせよ「百年後」どうなってるかをまず考えよう! と思っているのですが、わりと近い発想かもしれません。ちなみにこの考え方で今の政治家を見たとき投票したくなる人物は一人も見つけられていません…
【その男ゾルバ】超有名映画。ギリシアの男ゾルバは事あるごとに踊る。たぶん「ゼイベキコ」を。
【ターニャ・タガック】イヌイットの《伝統的喉歌に、若々しいアレンジで命を吹き込む》p.442
【タイトゥスィ】犬橇を復活させた男性。千年後の未来に届けるタイムカプセルには《この景色を撮った一枚の写真を入れたい》《写真一枚に、たくさんの情報が詰まっている。美しい空や雪、犬たちと自分が走っている情景。ここの素晴らしさが写っている写真は、自分が生きた証だ》p.473。いつ命を落とすかもしれない過酷さの中で確かな物体としての写真を選んだのかもしれない? アラ・ギュレル氏の「写真記者」という考え方とも低通するかもしれない。
【大和ハウス工業】この「LISTEN.」というプロジェクトのスポンサーだったそうです。そう言えば著者の相方さんがそこのCMに出てたような?
【谷本一之】ライフワークとして北方民族の歌を採集録音しておられた。『北方民族歌の旅』という著書がある。
【タミル語】南インドの言葉。日本語の起源とも言われ共通性がある。偶然かもしれないけど。
【ダンスハウス運動】ハンガリーで1970年代から巻き起こったムーブメントで若者たちが伝統音楽を自らのルーツとして再発見しようとした。
【チェンナイ】南インド、タミルナードゥ州の都市。
【チャケーノ・パラベシーノ】ガウチョ精神を引き継ぐアルゼンチンの国民的歌手。
【チャマメ】ガウチョ由来のダンス。男女の密着度がすごいらしい。
【ツィンカ・パンナ】ハンガリーのジプシー(ツィンカニ)から出現した女流ヴァイオリニスト。ヴァイオリン二本、ツィンバロム、コントラバスというジプシー・アンサンブルの最小ユニットの形を始めた。
【ツィンバロム】金属製の弦を二本のハンマーで叩くモルドヴァの楽器。
【鶴岡真弓】美術史家。山口智子さんの心の師だとか。ポルトガルへの旅をともにした。《西洋の視点は天空に、東洋の目線は大地の緻密な草木にあります。》p.247
【T・M・クリシュナ】南インドの歌い手。千年後の未来に届けるタイムカプセルに入れたいものはという問いに《何も入れない。箱に閉じ込めた途端に、命は死んでしまうから》p.593
【定住化政策】イヌイットを同化・定住化させるためにその文化を∀禁止した政策。カタジャックも禁止されたし犬橇の犬も殺された。
【ティト&タマラ】サルサのダンサー夫婦。
【哲学者】羊飼いのヤニスから、読みたいので日本の哲学者を教えてくれと聞かれた著者は考えた末に松尾芭蕉を上げた。あー、いいチョイスやと思いました。
【デミトリス】クレタ島の伝統楽器リラの名手。千年後の未来に届けるタイムカプセルに入れたいものは《仲間。こうして集まる「友」だよ》p.201
【動物と人間】《イヌイットの神話には、動物と人間型結婚する話がよく出てきますが、彼らにとって人間と神動物の境は明確ではなく、魂は互いに素行ったり来たりできるという考え方なのです。》p.579
【トゥラン】カザフスタンの音楽家グループ。著者は彼らに魅せられ「LISTEN.」のプロジェクトを立ち上げることになったそうです。千年後の未来に届けるタイムカプセルに入れるのは「音楽、文化、伝統」。
【ナイト】ネパールの伝統音楽グループ。
【日本の伝統】岡本太郎著。個人的には意識したときすでに岡本太郎さんの発見以降だったのか縄文の文様や子どもの絵などのプリミティブなものも一種のアートとして捉える感覚は抱いていたのでこの本や『今日の芸術』を読んでもさほどココロは動きませんでしたが日本アート界にとっておそらく革新的だったんやろうなとは思います。
【ニルス=アスラク・ヴァルケアパー】リレハンメル冬季オリンピック開会式でヨイクを歌った。
【ヌラーゲ】イタリア・サルデーニャ島にある先史時代の巨石建造物。写真で見ると巨大なカヌレみたい。島全体で七千から八千現存している。
【ネパール】インドと中国にはさまれ、エベレストを擁する。仏陀の生国。首都はカトマンズ。人の数より上の数の方が多いと言われ、三百三十万の神々がいるとか。シャイで優しい穏やかな国民性だが皆しじゅう踊ってる。《ネパールの一日は祈りで始まると言っていいほど、信仰心が篤い。》p.594。そう言えば米澤穂信さんの『王とサーカス』の一行目も《誰かの祈りで目が覚める。》でした。
【ネ��ールの交通】《世紀末的混沌の雑踏や渋滞も、よく観察してみると、暗黙の規律のようなものが見えてくる。信号がなくてもなぜかpanicが勃発しないのは、もしかしたら、互いを思いやる譲り合いの精神が根底にあるからではないだろうか。人間に本来備わる野性の勘で状況を察知しつつ、みんなが互いを慮って、無事に全てのバランスをとっているように見えてきた。》p.560。今の日本人に欠けている感覚ですね。周りとの関係をほとんど考慮せず自分だけの都合で動いているので道を移動しにくくてしかたがない。ヨーロッパ人も意外にこの周囲との関係性を常に意識して動いているように見えます。
【喉歌】イヌイットの歌唱法。カタジャック。《喉を締めて呼気吸気を巧みに操って、まるで動物の唸り声のような、風の音や大地のきしみのような、人間の出す声の枠をゆうに超えた不思議な音を発する歌唱法だ。》p.441
【パジャン】南インドの祈りの歌。
【裸足】《大地は裸足で踏みしめ味わうものなのだ。》p.123
【パトリシア・コパチンスカヤ】モルドヴァ出身のヴァイオリニスト。オーケストラと演奏するときはいつも裸足。ツィンバロム奏者のヴィクトルの娘。
【パリンカ】強い蒸留酒。一気にグイッとあおらなければならないらしい。
【バルタ・ガンダルバ】初の女性ガイネ。ネパール。
【バルトーク・ベーラ】ハンガリーの民謡を一万曲採取した。仲間のコダーイ・ゾルターンも数千曲を採取した。
【パルノ・グラスト】「白い馬」の意。ハンガリーのジプシー・バンド。そのリーダーは千年後の未来に届けるタイムカプセルには「俺たちバンドのメンバーをみんな詰め込むよ。」
【ハンガリー】民謡の宝庫。名前は日本と同じ姓→名の順だとか。
【ビリアーナ】セルビア人の通訳。すぐ裸足になりたがる。
【ファジル・サイ】トルコを代表するピアニスト。音楽を始めた頃とても幼く色で音符を覚えたので《今でも楽譜に向かう時は、100色もの色鉛筆を使って、どのパッセージが何色か、真剣に考えます。》p.156。《この宇宙で、人類のたった一つの共通語は音楽です。》p.157。千年後の未来に届けるタイムカプセルに入れたいものは《音楽。私が唯一、ちゃんとできることですから。人はみな、自分が一番得意とすることで、未来に何かを伝えていけるのでは?》p.157
【ファド】ポルトガルの心の歌。ファドを歌う「ファディスタ」という呼び名にはヤクザ、ならず者、売春婦という含みがあったとか。伝説的な歌い手マリア・セヴェーラは元娼婦だったと言われている。アマリア・ロドリゲスが出演した映画「過去をもつ愛情」で世界的にファドが注目された。《遠くへ行ってしまった愛しい人を待つ悲しみ、遥かな故郷への郷愁は、「サウダーデ」という言葉で表されます。》p.238
【プエルトリコ】サルサの国。「ボンバ」という即興ダンスもある。個人的には雑誌連載中から読んでいた吉田秋生さんの『カリフォルニア物語』の主要登場人物の一人がプエルトリコ系移民の子だったのが印象に残っていてこの国名を聞くとちょっと切なくなります。
【フォルトゥナート・ラモス】アンデスの、アコーディオンの名手。長い物干し竿みたいな伝統楽器エレケも吹く。
【フラメンコ】著者がどっぷりハマっ���いるそうです。イメージはすごく合う感じです。これももともとジプシーとアンダルシアの文化が融合して生まれ、フラメンコの踊り手やギタリストは誇りをもって自らを「ヒターノ」と呼んでいるのだとか。《本場の教えは、やっぱり違うなあと感じたのは、「聴く」ことを重視する事だ。》p.166。《フラメンコは、人間修行の道でもあるのだ。》p.166。《フラメンコの魅力は、陽気に歌い踊るだけではない。魂の奥底から湧き出(いで)る妖魔のごとき陰影でもある。「死」をも覚悟する気迫をもって、闇に正々堂々と対峙する強い決意。そこから生命(いのち)の炎が立ちのぼる。》p.168
【ブンタ・ロック】ベリーズのガリフナ音楽。
【ベリーズ】ユカタン半島の国。日本の四国くらいの面積。マヤ遺跡がある。人口の訳7%がガリフナ。
【ポール・ナポール】ベリーズのガリフナ音楽のギタリスト。スペインの流れを汲む。未来に届けるタイムカプセルに入れるものは《このギターと歌。神様がくれたものだから》p.425
【北海道立北方民族博物館】網走にある。世界の北方民族の展示がある。
【ポバン&マルコ・マルコヴィッチ】親子のトランペット奏者。ポバン・マルコヴィッチ・オーケスターは映画「アンダーグラウンド」でも起用された。セルビアのヴラディチン・ハン出身。旧ユーゴスラビア…なんとなく米澤穂信さんの『さよなら妖精』を思い出して悲しくなりました。
【ポリフォニー】グルジア(現ジョージア)の合唱(多声音楽)。惑星探査機ボイジャーに搭載されたレコードにも収められている。
【ポルトガル】著者の「初恋の異国」だそうです。ぼくにとっては大航海時代、リスボン。いっときは世界の中心だったイメージ。
【ボレアドーラ】武器を振り回しながら踊るガウチョ由来のダンス。
【ポンガル】インド(南インド?)の収穫祭。四日間続く。
【ポンバ】プエルトリコの音楽。《ポンバのルーツは、かつて植民地時代にアフリカから連れてこられた奴隷に遡ります。奴隷たちは、砂糖プランテーションでの過酷な労働の束の間の休日に、故郷西アフリカのドラムを叩き、夜通し歌い踊り明かしたと言います。》p.426。《ドラムの即興のリズムに応え、パワフルなダンスが繰り広げられす。すべてをリードするのがドラムであり》p.427。
【マールガリ月】南インドの十二月から一月。街は神に捧げる音楽で溢れ、結婚式などの祭儀は行われることはない。
【マジャル】ハンガリー大平原の遊牧騎馬民族たち。ハンガリーの人々は自らを「マジャル」と呼ぶことを好む。現在、国としてはルーマニア、セルビア、クロアチアなどに分割されている。
【マランボ】ガウチョ発祥のダンス。
【マリ・ボイネ】ヨイクを受け継ぐミュージシャン。
【マリオ・パチェコ】ファドのギタリスト。
【マルティン・フィエロ】アルゼンチンの国民的文学のようだ。ホセ・エルナンデス著。訳で読んだことはありますが、七五調で渡世人というか股旅物の詩という雰囲気やった記憶が…。
【ムリダンガム】南インドの、木をくり抜いた打楽器。奏者のカライクディ・マニは《ムリダンガムは、宇宙の音。ベイシックで一番大切なリズム。人生を川の流れにたとえるなら、メロディが舟。ドラムは漕ぐ櫂。メロ���ィがあっても、櫂がないと進まない》p.587
【ヤニス】ギリシアの八十歳の羊飼い。リラの奏者。妻はソフィア。千年後の未来に届けるタイムカプセルには《「羊飼いの暮らし」を入れるよ。》《羊とリラのある暮らし。この素晴らしい毎日を、みんなに見せてやりたい。》p.186
【ヤニス】クレタ島の舞踏団のリーダー。「鷹」と呼ばれる踊り手で、羊飼いのヤニスと区別するために著者たちは「タカ・ヤニス」と呼ぶことにしたらしい。《舞踏は自分の魂の奥を探るものだ。》p.190。《プラトンの言葉を借りて言うなら、「踊らない人間はバカ」だ。役に立たない人間ということ。》p.191。千年後の未来に届けるタイムカプセルに入れるものを聞かれ《僕たちは毎日、千年前からのタイムカプセルを開けているようなものだよ。》p.191。
【ユカタン半島】マヤ文明の遺跡がある。ベリーズという国で著者は縄文文化の精神に近いものを感じた。
【ヨイク】サーミの即興歌。言葉ではなく音でつながる。ヴィンメ・サーリによると《ヨイクは自然そのものだ。流れ行く空の雲を見てもヨイクが生まれる。私たち自身が自然の一部であり、風や雲や湖や山と切り離すことができない。春になると森に木の実を採りに行く。白樺の木々に風が吹き、葉の表裏がキラキラ翻る。そんな自然の移ろいをヨイクにする。人の瞳を覗き込んでそこに何かを感じたら、それもヨイクになる。見るもの感じるもの、自然すべてがヨイクの源だ。自然と結びつくためにヨイクがある。》p.462
【ライコ・フェリックス】ミュージシャン。超絶技巧のフィドル。千年後の未来に届けるタイムカプセルには《入れるに値するものは、自分ではまだ創造できていないと思う。僕たちが毎日、こうして生きていること自体が、「タイムカプセル」でもある。》p.87
【ラカトシュ・ミクローシュ】ブダペストのジプシー楽団を率いる。千年後の未来に届けるタイムカプセルには「ハンガリーのジプシー音楽」を入れたい。《楽譜に表せない魂の声を》p.101
【ラッチョ・ドローム】映画。千年前のジプシーたちが砂漠のオアシスで舞い踊るシーンが印象的らしい。
【ラップランド】伝統的にサーミ人が住んでいる地域。フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、ロシアにまたがる。
【ラウート】《ギリシアのブズーキをぼってりと豊満に太らせたような、クレタ民謡に欠かせない楽器だ。》p.192
【リエルワールデ帯】リトアニアの民族衣装の折帯。夏至祭の門と同じ幾何学文様が織り込まれる。様々な自然神のシンボルが織り込まれる。
【リズィティカ】クレタ島の歌。《大勢の男たちがひとつのテーブルを介し、即興の歌を交わし合う伝統だ。》p.192。「男だけが歌うの?」という問いに《歌や楽器は男の領分。大きな声で喉を使うし大変な仕事だから。女性は踊るの。文字を読むことと同じように、私たちは誰でも踊るの》p.196
【LISTEN.】このプロジェクトは映像を利用できる形に残したいというところから始まったもよう。それ以前の経験から音楽の持つチカラに圧倒されており民族音楽が題材になることは必然だったとか。《日常で流れる報道は、戦争とか殺人とかネガティブな情報が多いから、そんなニュースばかりでは、その国が悪者に思えてしまう。でも、その地の音楽が素敵だと知���ことで、その国が好きになり始める。》p.620。スタッフは少なく、この本の著者の山口さん、監督兼プロデューサーのギャリーさん、撮影のアティラさん、音声のマックさん、もう一人の音声のアンドレアさん、スチールカメラのピーターさんの五人が基本でその都度もう数人で計十人前後だったようです。
【リトアニア】ラトビア、エストニアとともにバルト三国と呼ばれる。首都はヴィリニュス。著者の旦那さんが映画で演じた杉原千畝が赴任した地。音楽的には女声のポリフォニーがある。国土の三分の一が森林で自然をリスペクトしたくらしが根づいている。日本の森林率は国土の三分の二だったと思うけど(ただしほとんど人工林)日本では自然は暮らしときっちり区切られていることが多く共に暮らしているというか融合している感じはないかも。
【リラ】ギリシアの、洋梨のような形をした、弓で弾く弦楽器。
【レクッカラ】イヌイットのカタジャックにも似た、アイヌの喉遊び。
【レナ・ウィルマク】スウェーデンの歌い手。
【レヒネル・エデン】ハンガリーの建築家。ハンガリーの大地から生まれたセラミックを使って伝統的なデザインを建築に取り入れた。都市づくりのスローガンは「東へ! ハンガリー人よ!」だったとか。
【レベティコ】ゼイベキコを踊るときに歌われる哀歌、エレジー。
【ロマ音楽】ジプシー楽団とはまた異なるロマ音楽の特徴は《楽器演奏よりも「声」が主体であること。スプーンやミルク壺などの暮らしの道具を使って伴奏しながら、声で楽器の音を模倣しユニークなリズムで演奏を盛り上げます。》p.106
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